赤髪の少年と緑の穂
「なんだよ今日もまたゲロってんのか?」
息を整えていた僕に赤髪の少年が近寄る。
その手にはゴブリンの血で緑に染まった小剣が握られていた。
「うっtぷ」
えずきつつ俺は少年にいつもと変わらない返事を返す。
「...うん、やっぱり僕にはモンスター討伐は向いてないんだよ…」
モンスター。
この世界には人間のほかにモンスターと呼ばれる異形の生物がいる。
そこに倒れているゴブリンはその代表格だ。
モンスターは人を襲い、人を喰らう。
モンスターと人族は相容れない存在であり、人は生きるために奴らを殺す。
それは当然の事で、殺さなければいずれこちらが殺されるのだから。
でもさぁ、俺は生きてきて死んできて生物を殺したことなんてほとんど無かった訳で…
ここの世界の奴らはトンボの羽根をむしる位の感覚でゴブリンとかぶち殺すんだよ。
あ、トンボのモンスターは別にいるらしい…3メートル位のが。
ゴブリンって見た目緑色のチビで禿げの角の生えた猿顔のしわくちゃなおっさんなんだよ?
そんなもん殺して平気な訳無いじゃんか。
生理的に無理だって!
肉に槍が刺さっていく感覚は、不快なんて言葉じゃ言い表せないぐらいに気持ちが悪い。
そりゃあ吐きもするってもんだ。
「いい加減馴れろって、俺たちももうすぐ成人の儀式受けるんだからさ?
大人になってもゲーゲーやってちゃみんなに笑われるぜ」
「でもダメなんだよ、どうしても…」
「…はぁ、お前訓練の時は平気なのに何でモンスター相手だとゲロっちまうんだよ?」
「いや、僕だって努力してラビットなら倒しても戻さなくはなったんだよ?まあ、解体の時はやっぱりえずくけど…」
「自慢することかよ!」
この世界…名前があるのかは分からないけど、俺の住んでいるラフタ村では14歳で成人と見られるようになる。
成人になれば男は自動的に村の自警団に入ってモンスターと戦う事になる。
あ、俺は地区の消防団には入ってました。
自動的にというか圧力外交を受けて入らざるを得なかっただけなんだが…
でだ、村の男の子は12歳から自警団のおっさん達に戦いの訓練をうけるんだ。
主に剣と槍、あと弓の使い方だな。
まあ俺も同世代の子供と一緒に訓練を受けて頑張っていたらしい…というか優等生で期待の新星的ポジションだったようだ。
ちなみに今日は週に一度のゴブリン討伐訓練だ。
自警団のおっさんの監督の元、時間内でどれだけゴブリンを討伐できるかといった内容だ。
俺は何とか1匹討伐した後は、ずっと地面に虹をかけていた訳だが...
今あきれつつも背中をさすってくれてる赤髪の少年は、俺と同い年で幼なじみのリットだ。
ごめんありがたいんだけど、できればその剣しまうか拭うかしてください…
「ほら、お前の槍。ったくモンスター倒すたび武器手放してどうすんだよ?いつか死ぬぞ」
「ありがと…もう大丈夫っpうt!」
…穂先にホルモン付いてたよ緑の。