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やどかり

作者: 黄輪
掲載日:2017/05/05

 友人のIは、変わり者だ。

「座敷童っているだろう?」

 ほら来た。なんで男二人で家飲みしてる時に、そんな話題が出るんだ。

「いるかどうか知らんが、まあ、聞く話だな」

 一応、乗ってやる。

「典型的と言うか、古典的なスタイルとしては、『子供の姿をしている』『いつの間にか家に憑いている』『いつの間にか家人と交じって遊んでいる』となっている。

 だけどもセキュリティの発達した現代で、いつの間にか家の中に……、と言うのは難しいんじゃないかと思うんだ」

「まあ、そうだな」

 変な話題を一々採りあげる奴ではあるが、その話についていけないと言うことは無い。とりあえず俺は、話に耳を傾ける。

「で、彼ら、……か、彼女らかは分からないけれども、ともかく彼らはもっと、紛れやすい手を使ってるんじゃないかと思うんだよ」

「紛れやすい手?」

「例えばだ。誰かの家に遊びに行って、そこに小さい子がいたら、君はどう思う?」

「まあ、そいつの子供か弟、妹だと思うだろうな」

「だろう? ……で、この前なんだけど、僕はRの家に遊びに行ったんだ」

「Rの?」

 Rと言うのは、俺とIの共通の友人である。

「ちょうど今、君とやってるみたいに、二人で飲んでたんだ」

「ふーん」

「で、確認だけど」

 Iは手にしていたコップをぐい、とあおり、話を続ける。

「Rは一人暮らし、だったよね」

「ああ」

「ところが、……妙なことに、僕の記憶では、小さな女の子が」

 と、そこでIの妹さんが、空になったコップにビールを注いでくれた。

「ありがとう。……そう、今やってくれたみたいに、酒を持ってきてくれたり、つまみを作ってきてくれたりしたんだ」

「へ?」

「その時は何にも不思議に思わなかったんだ。

 でも、今になって考えたら、……君の言う通り、確かにRは一人暮らしだったはずなんだ。後で聞いてみても、『知らん』って言われるし」

「酔ってたんじゃないのか、お前」

「まあ、……うーん、かも知れない。でも、……そこでさっきの話だよ。

 その女の子は、座敷童だったんじゃないかなって」

 俺も妹さんにビールを注いでもらいながら、その話に乗る。

「まさか。いくらなんでも気付くだろ?

 Rとは高校からの付き合いだし、あいつが一人っ子だってのは、みんな知ってるじゃないか」

「だろう? しかしそこが、座敷童の座敷童たる由縁じゃないかなって」

「はあ」

 あーあ。今日のIは、かなり酔っぱらっているらしい。話が超展開になってきたぞ。

「家人の振りをして、平然とそこにいたりするんじゃないだろうか。それなら『誰?』って気にされたりもしない」

「いやいや、いくらなんでもそれは無茶だろ」

 今日のところは、ここら辺でブレーキをかけておいてやろう。

「例えばさ、毎日家計簿付けてる家とかだったら、一ヶ月くらいで気付くだろ?

 妖怪がメシを食うか知らんが、どうあれ食費がいきなり一人分増えたら、帳尻が合わなくなるわけだし。まあ、ズボラな奴の家だったら気付かんかも知れんが、Rや俺たちみたいに、一人暮らしだったらすぐ分かる。

 お前酔ってたんだってば、な?」

 が、Iはピン、と指を立てて反論する。

「そこだよ。長居していれは、気付かれう危険もある。

 そこれかれられ、ら……」

「おい、もう呂律回ってないじゃないか。なあ、悪いけど、水持ってきてくれよ」

 俺は妹さんにそう頼みつつ、勝手ながらIの布団を用意してやる。

「おい、ちょっとまれろ」

「何だよ」

「みずっれ、だれり……」

「いいから、ほら。こっちで休め。ほれ、って」

 俺はIに手を貸し、妹が持ってきてくれた水を飲ませてやった。

「ほら、これ飲んで寝ろ」

「ああ、うん、……」

 まだ何かむにゃむにゃ言っていたが、俺は「じゃ、帰るからな」と言い残して、Iの部屋から出ようとした。

 と――俺は部屋の真ん中で突っ立っていた妹に声をかける。

「おい、何してる? 置いてくぞ」

「はーい」

 俺は妹の手を引き、ドアを開けた。

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― 新着の感想 ―
[一言] これ面白いです! 妹が可愛怖いのが最高です! あと、『平成狸合戦ぽんぽこ』の屋台のシーンを思い出して、なんだか和みました^^
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