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姫様は僕に教えない。  作者: まおう えむ
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明日からは過去を探ります。

「で、明日からの仕事についてなのですが──」


夜になると、約束通りビビアナが訪ねて来たので、そのまま僕の部屋で話をする事になった。


「エレナ様は何か仰っていましたか?」


二人で並んでベッドに腰掛ける。


「はい。なんか明日もっかい話をしたいみたいなことを言ってました」


「そうですか。……では明日のアル君の仕事内容はエレナ様とのトークですね」


「え……?それだけですか?」


下手したらそれ、仕事って言わないんじゃないのだろうか。

一応僕の仕事は姫様のお世話係ではあるものの、それはお世話?なのかな。よく分からない。


「ええそれだけです。お世話といっても、それは言葉上のものだけですから。エレナ様はしっかりとなさった方なので、お話しする相手がいればじゅうぶん満足なさるでしょう」


「たしかにしっかりした人だったけど……」


あの時のもてなしはまるで僕がお世話される立場なんじゃないかって感じだったしな。

ぶつかった時だって怒り一つ示さなかった。

それよりも気になるのが、


「ビビアナはどうするの?僕がずっと姫様と話してたらビビアナの仕事が……」


言いかけたところで、ビビアナが不気味に笑い出す。

全身からドス黒いオーラを放ちながら。


「ふふふふふふ……私は……私の仕事は……そんな甘いものじゃないんです」


ちょっと怖いんだけど。

ポーカーフェイスに無理やり笑顔を作った感じが。


「と言うと?」


「私の本命はバカ王のフォロー。暇な時にエレナ様の世話をといった感じです。……毎度毎度あのバカ王は迷惑ばかりかけて……私が調教してやらないと全く働かないんです」


「ちょ……調教って。うん、でも、今のでビビアナの気持ちがよーく分かったよ」


この国の裏の顔が見れてしまった瞬間だった。

裏の王ビビアナといったところかな。


「分かっていただけて何よりです。私のストレスが限界に達した瞬間あの人を殺しかねません」


「それはやめよう⁉︎」


真顔で言うから怖いって!

冗談はさておき、と言ってビビアナは僕の顔をジーと見つめてくる。


「そろそろアル君の緊張も解けた頃でしょう?基本仕事内容は自由で、休憩も自由です。後のことは自分の都合とエレナ様に合わせて動いてなんとなく仕事をこなすといった感じなので、明日から頑張ってくださいね?」


「は、はい!これからよろしくお願いします!」


「では、おやすみなさい」


ビビアナは部屋を一礼して出て行く。

あの人、なんだかんだ言って僕の事けっこう気にかけてくれていたんだな。

気をほぐすための冗談だったんだろう……逆にびっくりするんだけど。

この日は特にすることもなかったので、そのまま眠りにつく事にした。



翌日の昼過ぎ、僕は姫様の部屋へと向かっていた。

ノックをすると、扉が開かれる。


「ようこそ!本当に来てくれたんですね」


「それが僕の仕事ですから」


そう言って、部屋の中へと招き入れられる。

なんだか僕が話したら少し不機嫌になった気がするけど、気のせいかな。


「じゃあ、お話をしましょ!」


って言っても……何を話せばいいんだろう。


「僕あんまり話の話題とか無いんですけど……姫様はどういったお話が好きなんですか?」


姫様は人差し指を顎に添えて、何かを考えるように天井へと視線を向ける。


「そうですねぇ〜。わたしはあなたの話ならなんでも聞きます」


一番困る答えだった……。

まあでも、ここまで期待されてるとちょっと嬉しいかも。

そういえば……と思って気になっていたことを聞いてみる事にした。


「姫様ってなんでこの仕事に僕を選んだんですか?」


「あなたに会いたかったからです」


胸を張って堂々と答える姫様。

ドキドキと心臓が高鳴る……

急に頭痛に襲われる──

何かが、脳に引っかかって……脳内で不鮮明な映像が再生される。


「うぅ……いてて」


「だ、大丈夫ですかっ⁉︎」


はっきりと映らない、幼い少女の顔。

だれ………………?


『──して……僕は王様になるんだ』


は?何を言って……


────────。


不意に、頭痛は最初からなかったのではないかという感じに治まっていた。

額には、グッショリと冷や汗が。


「どうされたのですか……?」


心配そうに体を折り曲げて僕の顔を覗き込んでくる姫様。

姫様の温い掌が僕の頬に触れられる。


「ひどい顔色です。熱はないのに……本当にどうしたのですか?」


近いって……でも、やっぱり近くで見るとすごい可愛い。

照れ臭くなって目をそらす。


「……幻覚を、見ました」


「幻覚ですか?」


「はい。目の前に顔のよく見えない髪の短い女の子がいて、小さい頃の僕が、王様になるって言ってました」


頭の中に流れた映像のままを伝える。

すると、姫様は僕の肩を掴んでぐーっと攻めよってきた。


「そ、そ、それはっ!思い出せない昔の記憶じゃないでしょうか?」


たしかに……ありえる。

でもなんで急に?


「そうかもしれません。急に思い出すなんておかしいですよね」


僕は笑って見せる。

でも、姫様はさらにグイグイと詰め寄ってきて、


「思い出す直前に、何かありませんでしたか?」


思い出す直前か……何かあったかな。

たしか……あっ。

姫様の言葉に、ドキドキして──って、そんなこと言えるわけないよ!


「と、特に何もなかったですけど」


すると姫様は肩を落とす。


「そうですか……でも、わたし決めました!」


「何をですか?」


なぜか急に目を輝かせ始めた姫様に、恐る恐る問うと。


「明日からあなたの仕事はわたしといっしょに過去の記憶を思い出す事です!」


びしぃーっと指をさして言ってくる。

えっと……理解が追いつかないんだけど。


「初対面の僕になんでそこまで……」


「ふふーん。それはいずれ分かる事ですっ」


急に上機嫌になった姫様に流されるまま、僕は承諾してしまったのだった。

明日からどうなることやら……。

それと、姫様は何か隠している気がする。

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