会話
更新日が……
…………
硬いものが顔に当たっている。
土のにおい……
あぁ、僕は歩いている途中で倒れたのか。
俯せに倒れているのに背中に何かが乗っている気がする……
肉食獣の足か……
そうか、新しい人生も結局空腹で終わるのか……
そう思って、恐る恐る後ろにいるであろう獣を見ようとするが、何も見えない。
この世界には透明な猛獣が居るのか……
だがしかし、自分を殺害しようとしている犯人の顔位は見たい。
ずっと透明な生き物だったらしょうがないと思うが、怒ったりしたら一瞬くらい見えるだろうと足をおもいっきりばたつかせた。
が、何にも当たらない、実態もないのか、と思い勇気を出して仰向けになろうと身を捩ると背中から狐が転がり落ちた。
そう、背中を圧迫していたのは狐だったのだ。
にしても、疲れているからなのか、今まで以上に感覚が敏感になっている。
軽いはずの狐を猛獣の足だと勘違いしてしまうほどに。
怖かっただけなのかもしれないが。
普通、怖いだろう。
道の森で、目を覚ましたら背中に重い石が乗ってるような感覚があったら……
とまあ、特に現状危険はないようだから早めに集落でも見つけないと。
これ以上は危険だと本能でわかる。
「この狐そろそろ起きないか……」
『おなかすいた』
突然、頭に響く高い声。
この狐と出会った時に聞いたのと同じだ。
つまり、僕はやはり動物の声を聴けるようになったという事か……
でもこの能力、デメリットが大きすぎる気がする……
って、そんな事より。
「名前があるのかは知らないけど、狐。このキノコの中に食べられるキノコがあるか分からないか?」
『キノコ…?あぁコケか。この森に毒は存在しないはずだからそのコケも毒はないとおもう』
そう返ってきた。
会話をするような感じに……
『人間にいっても聞こえないか』
と、思っているようだが普通に聞こえているのだよ狐君。
「ありがと」
『え?お礼?』
僕がお礼を言ったことで、さすがに疑問に思ったのか驚いている。
しかしまだ、聞こえているのかどうか判断がつきかねているようで、こちらをちらちら見てくる。
微妙な空気が流れる中、つい呟いてしまった。
「この近くに住めそうなところがないか分かればいいんだけどなぁ」
『住めるところかぁ』
相槌を打つように言葉が返ってくる。
暇なときは会話をしてる方が気が紛れていいかもしれないな。
そう思って、これからは偶に呟いてみようと決め、疲れた僕はゆっくりとまだ見ぬ方へと歩進める。
次回は土曜日か日曜日に。
文字数は突然増える可能性があるのであしからず。
これからも生暖かくお見守りください。