表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

邂逅

僕の名前は、夏野忍なつの しのぶ

高校2年生だ。最近の興味のあることは、クラスメイトたちが噂をしている占いの館だ。

ただの知的探究心的なもので、占いなどが好きなわけではない。

ちなみに帰宅部である。



「なぁなぁ、忍。」


「ん?なに、雄星。」


声をかけてきたのは、同じクラスで親友の田山雄星たやま ゆうせい

陸上部に所属し、なかなかの実力者でなかなかにいいやつ。

ただ、糞のつくほどにオタクである。


「面白い話があるんだけど、聞くか?」


「…もちろん、何?」


雄星は返答を聞くやいなや、僕を連れて教室を出た。


目的地に着くまでに、どういった内容なのか確認しようと雄星に聞くが、着いてからのお楽しみということらしい。まぁ、話の流れ的に噂の占いの館に関してのことなのだろうけれど。


目的地にはすぐ到着した。美術室だ。

美術室に入ると、一人の男子生徒が座って待っているようだった。雄星を見ると立ち上がり、会釈をした。


「待たせて悪い。」


男子生徒は、小さく大丈夫です、と答えた。どうやらこの男子生徒が今回話を聞かせてくれる人物らしい。



「俺の中学の時の後輩なんだ。実は――」







「――ということなんです。」


「一ヶ月の今日、登校途中に事故に出会して死ぬ、か…」


男子生徒から聞いた話はこうだ。


先週の同曜日、帰宅途中の空き地だったはずの敷地に、【占いの館】という看板の建物に出くわしたそうだ。

男子生徒は、これが噂の占いの館なのかと少し怯えながらも建物に入室した。


室内には、一人のおそらく女性と思われる人物が机を構えて座っており、自分のことを認識すると対面側に置かれた椅子を指差し、男子生徒を座るように促した。


男子生徒は料金表を確認しようとしたが見当たらず、診断料金を確認しようとしたとき、告げられた。


「あなた…一ヶ月の今日、登校中に死にます。」


男子生徒は、少し頭にきたらしく反論するが、占い師は一切返答せず、最後にこう告げた。


『わたしはあなたを助けない…運命に抗いたかったら、自分の力で成し遂げて。』


結局、料金は無料だったそうだが。




「それで、来週の今日がちょうど1ヶ月後ということか。」


「どう思う?」


内容を一通り聞いたあと、雄星が声をかけてくる。


「まぁ、占い通りになるっていうんなら来週の今日は学校を休めばいいだけの話なんだろうけど…」


男子生徒もそれを考えていたようで相槌を打つ。だが、占いで死ぬと言われたから学校を休むなんて馬鹿げた話ではある。


「それでさ、今日行ってみないか?」


「どこに?」


「だから、その占いの館の場所に。」


止めるどころか行ってみたい。放課後、僕と雄星でその場所に行ってみることにした。男子生徒には雄星からなにか占い師から情報を引き出せたら連絡するということとなった。



放課後、終礼のチャイムが鳴る。クラスメイトたちはそれぞれ帰宅なり部活に向かうため教室を出て行く。その中で、僕も帰り支度をしていると雄星から声をかけられる。


「それじゃあ行くか。」


「だな。場所ってどこだっけ?」


二人で場所を確認している最中、聞き覚えのある呼び声が後ろから聞こえてきた。

声の主は…


「ちょっと忍?今日は私の用事に付き合うって約束だったでしょ?」


同級生の白河夕陽しらかわ ゆうひだった。ゆうひとは小学校からの付き合いで、俗に言う幼馴染…なのだが。

この声のトーンはすごく怒ってる。約束なんかした覚えなどないのだが…


「や、約束??」


「そうよ。忘れたの?」


腕を組み、じりじりと威圧をかけてくるゆうひ。普段はクールビューティーといった感じなのだが、今はなんだろうか。クールというより極寒といった感じである。


「や、やっぱり今度にするか?」


「…すまん。雄星。」


今日行くことは一旦中止し、身に覚えのない約束を守るためゆうひの用事に付き合うことになった。








「…で、結局何処に?」


「ぶつわよ?」


問答無用と言わんばかりの睨みをきかせるゆうひ。というより、なんでそんなに怒っているのだろう。

ゆうひとの約束を全力で思い出そうとするが、一向に出てこない。


「…きょ、今日、一緒に行くって約束したわよ。」


「だ、だから何処に??」


キッとゆうひが睨む。普段の美人顔が台無しである。でも、学校男子からはこの睨みがご褒美らしい。訳がわからない。


「ね…」


「ね?」


「猫カフェ…」


「…ああ!!猫カフェ!!」


本当にすっかり忘れていた。というか、


「先週の雑誌の話のことだったのか。」


先週、ゆうひの家にお邪魔したときに見ていた雑誌があり、そこに猫カフェ特集があったのだ。


それを見つけたゆうひがぼそっと行きたいと呟き、聞こえた僕は行ってみたらどうか、と促してみた。だが、ゆうひは一人だとなんだか恥ずかしいということになり、僕も一緒なら行く、という話になったのだ。


なったのだが、今日だったか?


「そ、そうよ。…だ、ダメなの?」


「い、行きますとも。」


急に照れないで欲しい。なんだかこっちも恥ずかしくなる。


ということで、ふたりで隣町の猫カフェに行くことになった。

猫カフェに行くのは僕自身初めてだったこともあり、すこし楽しみではあった。それに、普段からは想像できないくらいゆうひの喜んでいる表情も見れたし、まぁ良しとしよう。





「…楽しかったぁ…」


「喜んでもらえてなにより。」


夕暮れ時、二人並んで歩く。猫カフェでは空いた口が塞がらなくなるくらいのゆうひの変わりようが見れた。


カフェでじっとゆうひを見つめている時なんて、いつもその笑顔でいたらいいのに、というくらいゆうひのことが可愛く見えた。

特にゆうひを眺めているときに、こちらに気付いたゆうひが恥ずかしそうに、猫で顔を隠したのは激しく可愛いと思えた。


…ゆうひには内緒の話であるが、こっそり写メを取らせていただきました。



「それじゃ、また明日ね。」


「うん、また明日。」


ゆうひを家まで送り、自分も帰宅する。のだが、


「そういえば、占いの館の場所ってここからの帰り道にあるな」


スマホを取り出し、地図を確認する。うん、やっぱり少しだけ遠回りになるがよって帰れる距離だ。


「…行ってみるか」


一人にはなってしまったが、噂の占いの館に行ってみることにした。

さぁ、どんなものがあるのだろうか。楽しみである。








「…ここ…かな?」


教えてもらった住所を確認する。外見は紛う事なき占いの館…というわけでもなく普通の喫茶店のような外見だが、しっかりと看板が立っていた。


扉を開き、建物の中に入る。


コーヒーのいい香りがするのだが、部屋の奥に話で聞いたとおり机があり、その奥には…


「…いらっしゃいませ。」


一人の人物が座ってこちらを見ていた。顔を隠しているため、表情は見えなかったが声と体型から女性のように思える。


「あの、すこしお伺いしたいことがあるんですが…」


立ったまま質問すると、女性は椅子を指差し座るように促す。


僕は促されるまま椅子に腰をかけ、質問の続きを話す。


「以前、ここに一人の男子生徒が来たと思います。そこで、あなたは【一ヶ月後に事故で死ぬ】と占ったと聞きました。」


「………」


女性は答えない。どういうつもりなのかは分からないがさらに続ける。


「それで解決策になるかはわかりませんが、当日はその男子生徒には学校を休む、という案を伝えてそうしてもらおうと思っています。」


「………」


女性はまだ何も答えない。


「そうした場合、彼は助かるんでしょうか。…教えて頂けませんか?」


「…正解です。今回は簡単でしたね。」


だが女性は答えたあと少し間を置き、続ける。


「わたしは誰も助けない。助かるためには、その人が、その人の周囲の人の力でないと助けることができないの。」


「…それはどういった意味…なんですか?」


「…そのままの意味です。少なくとも、あの男子生徒は助かります。」


よかった、と安心してもいいのだろうか。


「よかったら、あなたも占ってみますか?」


「え、僕?」


なんというかこれまで聞いた話だと、なんというか占いというかもうほとんど予言のようにも感じてしまう。

将来のことなんて興味はないが、少し先の1つの出来事くらいなら知ってみたい…と少し興味が沸いてしまった。


―これが、どういった未来を引き起こすかも知らずに。




「それじゃあ、手を出してください。」


「…はい。」


言われたた通り、手を差し出す。女性は僕の手を握り、じっとしている。

少し緊張したまま、占いの結果を待つ。

なんだろうか、女性の手が細かく震えだした。


「…み……た…」


「え?」


「…見つけた…」


声までも震え始めた。女性は顔を隠していた布を外し、僕を…抱きしめた。

机の上に置かれた物が落ちるのもお構いなしに、その女性…というか女の子は僕を引き寄せ抱きしめた。


「ちょ…君って一体…」


女の子の特有なのかこの子のものなのかは分からないが甘い香りが鼻をくすぐり、心拍数が急上昇するのを感じる。


「私は、あなたの片割れ…あなたの…兄弟です。」


「な、なにを…うっ!」


たくさんの困惑する状況から、さらに訳がわからなくなる。


だが、この女の子の目を見た瞬間、頭の中に沢山の知識や光景、情報の塊が流れ込んで来るような感覚に僕は耐え切れず、脳がシャットダウンを掛けたように、気絶してしまった。









夢をみた。


僕と優乃の二人がいる。だけど、二人はどこか寂しそうで、切なげで。

まるで二人しかいない世界に、取り残されてしまったかのように。

でも、優乃が笑っていうんだ。


「…大丈夫だよ。私たち、二人だから…」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ