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イダ。2。

外から悍ましい殺気を感じた。


こんな殺気の中に居たらすぐに気が狂ってしまいそうだ。


起きると既にオーディンが戦闘の支度をしていた。



『トール、お前は休んでていいぞ。外のは私がやろう。』



『いえ、私も行きます。ですがこんな莫大な殺気をもった人間など会ったことがありません。私でお役に立つか……。』


『ついて来るのは構わんが無理はするなよ。なぁに敵は私一人で十分だ。』


そう言うとオーディンは壁に架かっていた槍を手に取った。


『行くぞ、トール。』



ガチャン




ドアを開けるとそこには月に照らされた男性が立っていた。

美しくも、また精悍でもある顔立ち。



『小僧、ミョルニルを出せ。素直に渡してくれれば命までは取らん。』



『おやおや、誰かと思えば裏切り者のロキではないか。どの面下げて私の前に現れたんだ?』



『オ、オーディン。なぜ貴様がここにいるのだ。まぁいい、この場で昨日(さくじつ)の恨み、晴らしてくれようぞ。』


『我が名は戦神オーディン、いざ参らん。』



オーディンの槍捌きはもはや人間の為せる業ではなかった。

無駄のないステップから繰り出される正確無比の連続突き。

間髪入れずの薙ぎ払い。



私がもし武に関わっていないものであったなら、槍そのものはおろか、軌跡ですら見えないであろう。


だが、ロキはその攻撃全てを寸前でかわす。


まるで先が見えているかのように。



『オーディンよ、貴様の力はそんなものではなかろう?早く化け物の姿になってみせろ。』



化け物?



オーディンは、何者なんだ?



『お前ごときにそこまでしてやることもなかろう。お前のお喋りの間に準備は整った。ゲリ、フレキ、頼む。』




オーディンの足元にはいつの間にか真っ黒な狼が2匹。




『グォォオオ。』


狼が吠えた瞬間にロキの後ろから大きな木が生え、そして無数に伸びた枝がロキを捕らえた。


『ふふふ、世界樹ユグドラシルか。この大きさでは巨人は捕まえられんなぁ。ガグンラーズと呼ばれた貴様も落ちたものだな。また何処かで強かった貴様と戦いたいものだ。』



『なにを呑気なことを。お前はここで消えるのだ。全てを貫く銀の槍、大樹の贄を喰らうは正義、ゆけロンギヌス。』


オーディンがロンギヌスを投げると凄まじい速さで一直線にロキに向かって飛んで行く。


するとロキは煙のように消えてしまい、ロンギヌスはユグドラシルと呼ばれた木に深く刺さった。



『ちッ、逃がしたか。トール、無事か?』

オーディンがロキを逃したことを確認した途端にユグドラシルは土へと戻り、2匹の狼は主の足へと溶け込んでいった。


『あ、はい。ですがロキとやらは一体何者なんです?』


私は完全に蚊帳の外だった。


しかし、私が戦って勝てる相手ではないことははっきりと判った。



どうやらロキはミョルニルは忘れていたようだ。



『ロキは昔一緒に戦った仲間だ。そして、魔族でもある。』


私は魔族というものを絵本でしか見たことがない。



と言うよりも、魔族などと平然と言う人を初めて見た。



『あの、魔族ですか?』



『ああ、魔界に住まうものだ。しかしロキは魔族の仲間を裏切り、霜の巨人側に付いた。』



『魔界?霜の巨人?あの、よく訳が分からないのですが。』



『そうだな、急にたくさんで悪かったな。とりあえず、トールに知っておいてほしいのは、巨人が世界を壊すために動き出そうとしているということだ。』



『それで、私達に旅をしながら巨人を退治せよ、と?』




『まぁ、そういうことだ。それより、もう夜が明けてるじゃないか。フレイヤはまだ寝てるのか?』



オーディンが城に勤めていた頃の姫様はもう起きていらっしゃる時間なんだろうな。



『あと3時間は起きないかと。』



その台詞を待っていたかのように家からフレイヤが出てきた。



『トール、ボクもう起きてるんだけど〜。ぁと3時間ってすっご〜〜く失礼だよ?ボクがいつも起きてないみたいじゃん。』



『フレイヤがこんなに早く起きるなんて珍しいな、風邪でも引いたのかい?』


『そんな事言う人にはおやつぁげない。心配して探しに来てやったんだぞ。』


フレイヤは、拗ねた様子だった。


『そっか、心配してくれてありがとう。オーディンに稽古をつけて貰っていたのだよ。』



『ぃや…ボクはぁの…トールじゃなくてオーディンの心配をだな…その…。』



『トール、フレイヤ、朝ご飯にしようか。』



『は〜ぃ、ボクぉ腹ペコペコだょ。オーディンはやく〜〜。』


これが私が異世界を初めて垣間見た時であった。

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