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輪の大陸にある《4の国》

《4の国》の社長令嬢ことお嬢と副船長のお話

※作品内創作としてのBL表現がありますが、ストーリー自体はノーマルCPです。なので、「BL」ではなく「BL表現」と言う文言を入れさせてもらいました。お気を付けください。作者はBL作品を読んだことが無いので、ああいう文章表現でいいのかと思いましたが、さらっと流していただけたらありがたいです。

近くて遠い4つの世界のお話


世界の始まりはスープ皿に満たされた粘度のある命の水

天から落ちた滴りが水面を押し出し、それは王冠へ、王冠から神へと変化し

波紋は大地となった


波紋から成った大地は、大きな大きな輪の形をしていて

それを四柱の王冠の女神達が、それぞれ守護している


これはそんな世界の《4の国》の話





欲と機械の国、科学が発達した国

仕組みを理解できずとも使える”力”に溺れるかもしれない、危うい国


内海に接する国に住む女性がいる。


彼女はそこそこのお嬢様で、大学生で創作サークルと言う名のエロ同人誌の編集をしていた。本人が創作することはないが、友人達の(ある意味異常な)熱気にあてられて手伝いをしていた。


彼女自身、編集と言う作業に興味を持っていたが、男同士の恋愛には興味がなかった。まぁ、愛情に貴賤はないなぁ……くらいにしか思っていなかった。しかし、一般常識的にソレが一般人の目に触れれば、良くは思われないことも承知していたのだったが。



「お嬢~~~~~!!お嬢の力で、船を港に帰してッ!!」

「父の船と言っても無理です、アホですかセンセー!!」


豪華客船は港を離れていく。船から見下ろす港には小さな段ボールが1個、ぽつんと置かれていた。そう、『センセー』と呼ばれた女子大生の今回の『御本』が詰まった禁断の段ボール。


「どうして手搬入にしたんですか、送っておけばよかったのに!!」

「だって萌えがきて、突発で作ったんだもん!!」

「それならしっかりと持っていてくださいよ、なぜ、港に置いてきちゃうかなぁ!!」

「だって年2回の祭りだよ?テンションがハイになっていたところに、作業でさらにハイになり、凄い豪華客船にまたもや創作意欲が刺激されてハイに……」


そしてセンセーは灰になった。前日搬入するはずが、家の都合で遅れてしまったお嬢とセンセーは、電車予約席をキャンセルし、お嬢のコネを使っての船での出航であった。安い船室が空いていなかったせいで無駄に豪華なお高い1級船室でお泊り船旅。


後で立て替えてもらった両親・兄弟から、こき使われること間違いない料金だった。恐らく掃除を手伝わされ、おせちを作らされて、最悪見合いさせられるかもしれない……まだ大学生なのにとお嬢は戦々恐々としていたため、注意力が散漫になっていたようだ。


まさかのセンセーの失態、『御本』を忘れるという大失態を防ぐことが出来なかった……。いまごろ港では不審物としてエックス線でもあてられて、開封されているだろう、ある意味不審ブツだからあっているといえばあっている。


爆発はしないが、ある意味爆発ブツと言ったら言い過ぎであろうか、いや無い。


そんな感じで女子大生2人がデッキでキャッキャウフフ(?)していると、船員さんからやんわりとお叱りを受けた。その船員さんはなんと副船長さん、お嬢のお知り合いだったのをいい事に、センセーはすがりつく。泣き真似までしてみせるセンセー。それはもう必死だ!!


「副船長さん~!!船を港へ返してください~、命より大事な我が子を置いてきてしまったのですッ!!」

「……真相は?」

「……秘密の御本を、港に置いてきてしまったのです」


副船長は鋭い視線でお嬢を見ると、ついお嬢は本当の事を言ってしまった。センセーは「裏切り者~!!」と叫ぶが自業自得である。それでもめげずにセンセーは


「船を港に帰してくれたら、『1回だけお嬢を好きにしていい権利』を差し上げましょうぜ」


懐からぴらりと紙切れを出すと、お嬢は慌てて声を荒げる。


「あぁっ!!それは壮行会の時のお手伝い券じゃあないですか……そういう使い方しないで下さいよセンセー」


副船長さんはお手伝い券を入手し、港に我が子(ごほん)を保護してもらえるように連絡してくれた、できれば中身は見ないで欲しいとのお客様(センセー)のご要望をお伝えしたが、すでに不審物として開けられていた……。ある意味その場は爆発していた、だってセンセーは絵も描ける文章書きだったのだから。


何度も言うがセンセーの自業自得である。






「で、『センセー』はどうしているんだ?」

「ショックでふて寝をしていますよ。副船長、いろいろありがとう……です」

「いや、イイモノが手に入ったし、お客様に快適に過ごしてもらうのは職務ですから」

「快適に過ごしてもらうために、それ、返却しません?」


ぴらぴらと券を見せびらかしていたので、お嬢が券を奪い取ろうとしたのだが、副船長は素早い動作でお嬢の手の届かない上空へ券を移動させる。ぴょこぴょことお嬢はジャンプをするが、そもそも身長の差が大きい上に長い腕で高く持ち上げられ、届く訳が無かった。


「2時間後休憩に入る。メールするから、その時部屋に来てくれ。……可愛い下着をつけておけよ?」

「な、何故に……?」

「好きにして、いいんだろう?」


ではごゆっくり船の旅をお楽しみください、営業スマイルで去っていく副船長。






「っていう事になったんですけど、どうしたらいいんですか!?」

「そりゃ、可愛い下着つけて胸に飛び込めばいいんじゃないか?好きなんでしょ、副船長さんの事」

「そりゃ、すきですけど……」

「副船長さんもすごいな、社長さんの娘を喰う気満々ダヨ!!……本にしてもいい?」

「ダメです」


まさかの貞操の危機。しかもセンセーの所為で。


確かに副船長さんとは幼馴染で、淡い想いを抱いていた相手である。


出会いは親が友人同士だった。彼は学校を卒業後、海難救助隊に所属していたのだが、数年たって除隊しお嬢の父親が経営する船会社へと再就職。現在は若くして副船長となった有望株。ちなみにどうして救助隊をやめたのか聞いたところ、ヘリではなく船に乗りたいという謎の理由だった。


船だって乗るでしょう?とお嬢が聞くと、ヘリとか飛行機が嫌なんだよと副船長は苦笑い。


その淡く想っていた彼とお付き合いから……というならともかく、いきなり契りを結ぶというのはハードルが高い。嫌ではないけれども。百歩譲って契りを結ぶとしても残念ながら可愛い下着を用意していなかった、凄くシンプルなものしかない。そう考えると、エステ的な所にも行っておきたい……どうせなら可愛い下着より、少しでも可愛い……というかましな自分を見て欲しい!!そう、お嬢は考えた結果……


「ららららら来月にしてくださいッ!!」

「……」


どもりつつもはっきりと言った。そう、嫌じゃないがいろいろ準備が!!と副船長に訴えるお嬢。


「可愛い下着買ってきますし、エステ行ってきます!!」

「いや、今したいし。俺、ソノ気だから我慢したくないんだけど」

「ヤらないとは言っていないじゃないですか、譲歩しましょうよ!!」

「しない」


副船長はお嬢を美味しく頂きました。可愛い下着ではなくてもお嬢は充分可愛いし、エステに行かなくてもお嬢は充分綺麗だったのだ。


職員用の仮眠室だから、共同部屋かと思っていたのだが、さすが副船長と言うべきか個室だった。しかし狭い簡易ベッドに2人で乗ると、正直怖い、絶対落ちる。そうお嬢は思ったが、着やせしていた彼の厚い筋肉に覆われた男らしい体に包みこまれ、大事に激しく食べられてしまったのだった。






「副船長の厚い筋肉に覆われた男らしい体が可憐な社長令息を包みこみ、淫らに動く腰使いに令息は息も絶え絶え、可愛い啼き声を……」

「なにしているんですか、センセー……」

「突発コピー誌~、データ送ってコピーして製本するから。はい、これ」


豪華な1級船室のベッドの上でセンセーは、ごろごろとしながらモバイルPCのキーボードを一心不乱に叩きながら、1枚の紙をお嬢に差し出す。『1回だけお嬢を好きにしていい権利』券だった、実は2枚綴りだった模様。


それを見たお嬢は痛む腰を抑えつつ、ふらふらな足に力を入れてベッドへ近づき、全力のフライングボディーアタックをセンセーに食らわせた。


「わ・た・し・を、ネタにしないでください!!だれが社長令息ですか!!」

「社長令嬢なんだから、似た様なモンでしょ。萌え~、豪華客船でのエロ!!船が揺れて、腰も揺れる~なんてね……言われた?」

「この船はそんなに揺れません!!」

「あ、その台詞いいね!!どこかにぶち込もう。『わが社の客船は、あなたの力では揺るぎもしません』『でも、俺のコレで坊ちゃんの腰は揺れているぞ、淫乱な船だ』とか、ベタすぎるかなぁ、だがそれも良し!!」


なんですかそれ、ギャグですか……と、呆れたお嬢はガックリと顔を伏せて寝てしまった。どうやら副船長さんの操舵(比喩)は激しかったらしい、センセーはそう思いながらお嬢に毛布を掛けてあげたのだった。


お嬢の手には回収してきた『1回だけお嬢を好きにしていい権利』券が、握られていた。






疲れて爆睡中のお嬢とは対照的に、テカテカしながら残りの休憩時間を過ごす副船長。


副船長は制服の胸ポケットに大切にしまっている『1回だけお嬢を好きにしていい権利』券を、どういうふうに活用しようかと考えながら、水を飲む。お嬢を大人になったらいただいてしまおうと思っていたが、成人には少々早いタイミングで、自ら(?)副船長の腕の中に飛び込んできた彼女。確実に手に入れるためには……


「さて、まずは仕事だ」


どうやらあの券は3枚綴りだった模様。





「帰りは電車なんだ?」

「帰りは予定通りですからね、それに副船長はとっくに復路の船に乗って行っちゃいましたよ」

「でも、一応可愛い下着は買ったんだ」

「うッ……、こ、これは大都会に来るなんてそうそうないから、ただのショッピングですよ!!」

「そのブランドなら、地元にも出店してる」


と、帰りの電車の中で散々センセーにからかわれるお嬢。先に乗り込んでいたサークル仲間にまで、事の顛末を知られ、皆に「萌え~!!」と叫ばれた。真っ赤になりながら、次に会ったらどんな顔すればいいのだろうかと、悩むお嬢だった。


とりあえずエステ的なものには行っておこうっと。

無理矢理っぽいけど、結局同意で、両想いだったわけです。


読んでくださって、ありがとうございました。

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