第1章 第5話 敵軍かぁ…って弱くね?
「へぇ、それはいいタイミングだな……」
そう言ってコーマは不敵な笑みを浮かべた…
「な…なに言ってるのよ‼︎最悪のタイミングじゃない‼︎」
「大丈夫だよ…俺少し行ってくるよ…」
そう言ってコーマは走り出して行く…
「なにをバカなことを…待ちなさい‼︎」
そんな事を聞くつもりはない。なぜならコーマはこんなシチュエーションを待っていたのだから………
その頃………シュナイゼル騎士団本部では…
「なに‼︎勇者様が単身でウロヴォロス軍へ⁉︎」
真紅の髪、透き通る橙色の瞳を持つシュナイゼル騎士団長である、ギレイユ・カーネアルは思った。
…………自分の強大な力に自惚れたか?それとも何か考えが?いや、それはない。きっと自分の力なら勝てると過信したのだろう。くそっ‼︎………
「すぐに編成を組め‼︎勇者様だけは命に変えてもお守りするのだ‼︎」
「はっ‼︎」
部隊を編成した騎士団は、直ぐに国の国境地帯へと急いだ。これからこの国を救うかもしれない、唯一の可能性をここで潰してはならない。そうギレイユは思った。だが…そこで待っていたのは……
「なんだ………これは……」
そこには巨大なクレーターが刻まれていた。
そしてその中心に、勇者……コーマがいた…
「……あ、もしかして騎士団の人達?」
「もう、終わらせたので、大丈夫ですよ」
コーマは傷一つとなく、疲労しているわけでもない。ギレイユは信じられなかった。いや信じれるわけがなかった。自分達が国境地帯まで来るのに約10分ほど、その10分でいったい何があったというのだ。
「あ、もしかして信じてません?そう思って証拠と情報を引き出すために1人生かしておきました。」
そう言ってコーマは1人の紅いローブを着ている男を差し出してきた。
「た……助けてくれっっ‼︎あ…あ…あいつはバケモンだ‼︎何でも話すからっ‼︎」
その男の怯えようは半端な物じゃなかった。………この男の言っていることが本当だとすると…
ギレイユは何が何だかわからなかった。
「と…とりあえず、王城へ一旦戻りましょう。話はそれから聞きます……」
今はこう言うしか、ギレイユには選択肢はなかった…




