出会い
「………」
「………」
小さな蒼い瞳と数秒見つめ合う。無言で。
「………」
「………!?」
パタパタ!!
「あ、どっかいっちゃった…」
僕とにらめっこしていた小さな女の子は部屋から逃げるようにかけて行った
それはともかく状況確認だ。
僕は今、どこかの民家のベッドの上にいる。
腕に布が巻かれていることから僕は誰かに助けられたみたいだ
とりあえず身体を起こそうと腹筋に力を込める。
「ふっ! っと、んん! いたた…」
起き上がろうとするが、もう少しってとこで起き上がれない。
四苦八苦しながら頑張って起きようとしていたところに
エプロンをつけた、あのウェアウルフが部屋に入ってきた。
右手におたまを持っている。
シュールだ…。そしてもふもふだ。
ウェアウルフは僕をみるなり、
「??????〜〜????????????!」
よく判らない言葉を喋りながらトコトコと駆け寄ってきた。
ソプラノでよく透き通った声だ。
想像してた声と全然違って驚く。というか喋ったよ…。
僕を支えようとしているところから、
”あらあら〜そんな身体で無理しちゃダメよ”
みたいな感じのことを言ったのだろうか
エプロンつけたウェアウルフに助けを借りて体を起こして貰った。
近くで見るとかなり迫力がある。
「??????goblin?????????、???????.??goblin?????????〜」
ウェアウルフは笑顔で僕に話しかけたけど何を言ってるかわからない。
しかしゴブリンという単語が耳に入ったので、もしかしたら、とすかさず聞いてみる。
「I’m sorry, I don't understand what you're talking about. Can you speak English?」
(ごめんなさい、何を話してるかわからないので、英語で喋ってもらえますか?)
僕は流暢な英語で聞いてみたけど
ウェアウルフは’きょとん’と目をパチパチさせるだけだった。
あれ?
僕も目をパチパチさせてみる。
「……」
「……」
両者共に苦笑いでしばらく見つめ合っていると。
”ぐるぐ、くぅ〜〜〜ぅ”
僕のお腹が盛大に鳴ってしまった。
「……」
「……」
見つめ合っていた僕達だったが、どっちが先だっただろうか
「「うふ」」
「ふへへは、アハハハハハハハ!!」「アハハハハハハハ!!」
二人してわけも分からず大笑いするのであった。
しかしウェアウルフさん、笑いながらおたまで肩叩くのやめて
そこ怪我してて痛いから!!
気がつくとさっきの子どもが部屋の入口で僕らを不思議な目で見ている
そうだよね、僕らちょっと気持ちが悪いよね、ごめんね!
心の中でそんなことを思っていると、
目の前にいたウェアウルフさんが思い出したようにびっくりして
「?????????????! ????????????〜、????????〜!」
僕と女の子に何か言い放って慌ただしく部屋から出て行ってしまった。
そして再び訪れる静寂
先程から女の子が僕をじっと見てたので、
僕は’おいでおいで’のジェスチャーをする、
女の子はおっかなびっくりベッドに近づいて来てくれた。
さっきはよく見えなかったけど、頭の上にピンと尖った耳と立派な尻尾がそこにはあった。
そして僕は自分を指さし、
「ユウ」
とだけ言った。
そして次に少女を指さし少し微笑む、すると
「クリュム」
と答えが返ってきた。
僕はすかさず「クリュム」と復唱する。
クリュムは「ユウ」とニコニコしながら僕を指さす。
「クリュム」「ユウ」「クリュム」「ユウ」「クリュム!」「ユウ!」
もう!かわいいなぁ!!
痛む肩のことも忘れてついなでなでしちゃった。
あ、でも気持ちよさそう、尻尾がパタパタしてる。可愛い。
「??, ?????????〜クリュム????????〜.???????~」
そうして僕らが少し仲良くなったところにウェアウルフさんが帰ってきた。
クリュムは恥ずかしそうにウェアウルフさんの後ろに隠れた。
「??????????、???????、????」
ウェアウルフさんは僕に近づき、背中を支え立たせてくれた。
二人が部屋から出る
右足がまだ痛く、ぎこちなく歩いて付いて行くとリビングらしき場所につく、
小さいながらも明るい色の木で統一されて落ち着いたいいリビングだ。
真ん中には綺麗に年輪が見える一枚板のテーブルがあり、
その周りには意匠が施された椅子が3つあった。
テーブルの上には木のお椀に入ったスープ3つあり湯気を立てていて良い匂いを放っている。
「????????、?????????、クリュム??????〜」
ウェアウルフさんが僕とクリュムちゃんに椅子に座るように指示し
ウェアウルフさんもエプロンを脱ぎ3人そろって椅子に座った。
「?????????????」
ウェアウルフさんが僕を見ながら何か喋る。
僕は何を言っているのかわからないので首を傾げた。
するとクリュムちゃんが僕を指さし、
「ユウ、ユウ???????????」
と、ウェアウルフさんに自慢するように教えてくれた
名前を聞かれたのか、クリュムちゃん助けてくれてありがと!
と、笑顔を向けると顔を赤くしてそっぽ向かれちゃった。
「エフェーネ」
ウェアウルフさんは短く、ゆっくりとそう告げた。
僕はそれぞれ目をみて、「エフェーネ、クリュム」と心に刻むように呟いた。
二人とも心なしか嬉しそうだ。
「?????、ユウ、クリュム、???????〜、???クリュム??????〜」
さて!と言うように
エフェーネさんが何かを言い、二人は右手を胸の前に添え目を閉じる、
僕もそれに習い真似をする。
「????????エフェーネ、クリュム、?????ユウ????????. ?????」
クリュムちゃんが祈るように呟き、僕たちは食事を開始した。
久しぶりに食べた暖かい食事は今までにない程、おいしかった。
お世辞にも味は海水を薄めた様な味で美味とはいえなかったけど、
なにより椅子に座り誰かと一緒に食事を取ることが久しぶりすぎて、
言葉はわからないけど目の前で誰かと話し笑いながらとる食事は、
とにもかくにも、美味しかったんだ。
僕は時々目を擦り、涙が見つからないように、木の匙でスープを口の中にかきこんだ。
2人はそれを見て笑っていた。
食事が終わった後、エフェーネさんが立ち上がり、何かを持って戻ってくる。
あ、僕のカメラケースだ!!
エフェーネさんは微笑んで僕に渡してくれた。
すぐにケースを開けて中を確認する。
ほっ。どうやらカメラも無事なようだ。
そうだ!
僕はサイドポケットを開け、残っていたチョコバーを取り出した。
それを3つに折り、2人に渡す。
二人は不思議な目をしてそれを見つめていたので
僕は少しだけかじり、安全なことを二人に見せる。
クリュムが先にそれを少し嗅いで、そして舐めた
すると
ピーン!!と耳と尻尾が逆立ち、
(ヤバい!!やっぱり犬(?)にチョコは毒だったか!!)
とクリュムを止めようと手を伸ばした瞬間、
クリュムは凄い勢いでチョコを舐め始めた。なんか目の中に☆☆が見える…
苦笑いをしながら隣に座っているエフェーネさんを見ると
こっちはもっとやばかった。
エフェーネさん…
なんでそんなトロンとした目でチョコバー舐めてるんですか…
というかナンデ頬を赤く染めてるんデスカ…
なんというか物凄く目に毒だった。
数分間、僕は2人を眺めていた。
二人とも幸せそうだ。
ちなみに僕の分のチョコバーは見事に食べられました。
上目遣いで”もふもふ”達にねだられたらあげるしか選択はなかったよ。うん。
二人に僕のチョコをあげたとき、僕に抱きついて来るくらい喜んでだしね。
まぁ、喜んでくれて僕も嬉しかったです。
というかエフェーネさんはやっぱり女の方だったんですね…。
まぁそんな感じでデザートも食べ終わり、
3人でのほーんとしていると、
エフェーネさんが両手をぽんっと合わせ立ち上がり、言う
「ユウ! ?????????、クリュム??????????〜」
そして、エフェーネさんは男物の上着をどこからか持ってきた。
サイズがもの凄くあってないけど、ありがたくそれを着る。
どうやら家の外に行くようだ。
エフェーネさんとクリュムに付いていき、扉をくぐる。
太陽が眩しい。
僕は、この日、この村の住人になった。
エフェーネさんの手はそのまんま犬の手ですが肉球が発達しているのでものなどは器用に操れますよ。