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混乱

「眩しい……寒い……」


悠は小さな湖畔の木々の下で倒れていた。

微かに肌寒い風と木もれ陽が目を覚ます。



「ここは…どこだろう……うっ!」





全身が痛い

頭のてっぺんからつま先までムチ打ちになったような鈍痛が走る。

特に右肩と右の足首が酷いようだ。

痛みを我慢して濡れている服を数枚脱いだ

Tシャツの首元をはだけさして肩を見る。


(腫れてる、、、けど骨折じゃない、と思う。多分亜脱臼だ。)


痛むがそれ程酷くはないことが判ったので、次に右足をみる。


そして気づいた。




「靴。。。履いてるじゃん。。。」




飛び降りて自殺をしようとしたのに、僕は靴を脱ぐのを忘れていた。

そのことが段々と奇妙に感じてくる。


「フフッ・・・あは・・・あははははははっ!!」


何故かツボに入ってしまった。止まらない。


「ふへへへへっ あははははははは!!」



なんか時々空におっちょこちょいだって言われていたことを思い出した。


「んふっ、ふふっ…ん。そうだ。ここ、どこ?」



そうだ


一体ここはどこなんだ。


僕はニュージーランドの無人島、

オークランド島に居たはずだ。

あそこは南極に近く”狂う50度”とも言われている場所で

普段暴風が吹き荒れる場所なんだ。

だけどもここは風もないし凍えるような寒さもない



「死ぬの…失敗、、、したのか…」


別の島に流れ着いたのか、というそんな考えが思い浮かぶが、

そうだ。

あんな高いところから飛び降りて平気なわけがない



じゃあ、ここがあの世なのか?


そう思った瞬間






血だらけの


僕の、3人の家族が


思い浮かんだ。












思い切り頭を振って、すぐに湖の水で顔を洗う。


ついでに飲んでやった。





そして横に寝転がって目を閉じてゆっくりと少し前のことを思い出す。



あれは3人が見せた本物の姿だったのか、それともただの夢だったのか。


分からない。


分からないけど、3人が最後に叫んだ言葉が胸に酷く突き刺さる。




「死ぬのは、許さない、か…」




じっくり考えてみるが分からない



あの言葉は誰の物かもわからない



もしかすると僕の勝手な想像かもしれない




本当に何もわからない、だけど、




だけど



何故だか涙が溢れてくる。






悲しくて、悔しくて、悔しくて仕方なくて、涙が止まらない…



「僕は…生きたかったのかな…」




目を擦って溢れ続ける涙を無理やり止めて、目を開けた。



青い空に、小さな鳥が飛んでいる。



何も考えずに空をみる



「……」



風で木々が揺れ、音が鳴る。



「寒い…」



寒かった。




あの島より随分暖かいとはいえ、

僕の今の状態は全身びしょ濡れでTシャツ姿だ。

服が身体にへばりついて気持ちが悪い。



ここにいても何も変わらないので

とりあえず服を乾かそう、と立ち上がろうとするが


「痛っ…」


すっかり右足首のことを忘れていた、

軽く揉んでみるが歩けないほどの痛みではないようだ。

恐らく筋を痛めただけだと思う。

息を止め、痛みを我慢して立ち上がった。


周りを見渡すが、どうやら森の中らしく、

数分もあれば歩いて1週できそうな湖があるだけで、あとは樹ばかりだ。

遠くのほうに何かあるかと森の中を目を凝らしてみる。

やはり樹木しか生えてなかった。



考える。服を乾かす方法を。

どうすれば火を起こせるか。


何かあるかなとポケットに手を突っ込んだが、

オークランド諸島の地図が半分濡れてぐしゃぐしゃになって入っていただけだった。

えんがちょ。地面に投げ捨ててやった。


結局、僕の手持ちはゼロだ。何もない。

昔、小学校の時の研修で摩擦で火を起こす体験をしたのを思い出した。

可能性として思いついたが、肩を怪我しているので出来そうにない。


色々考えてみたが、やはり火をおこせそうにない。

体力勝負になるけど自然乾燥に任せよう。

そう思った瞬間、湖にゴミ袋の様な何か黒いものが浮かんでるのに気づいた。

じっと目を凝らしてみる。


「あっ!! いてっ…」


それが何なのか判り思わず走ってしまった。

激痛が足を襲う。

歩いてゆっくり湖に入りそれを拾う。


「お父さんのだ」


それは父親のカメラケースだった。


すぐに湖から上がり、中を開けてみる。


「あぁ…よかった。」


僕は飛び降りる直前に写真を撮ったが、その後に

カメラの本体、それと空が小学校にあがったときに撮った家族写真を

濡れないように防水パックに詰めケースに入れておいたのだ。


もともと僕はカメラを抱え込んで死ぬつもりだった

けどどうしても壊れたり濡れたりするのが嫌だったからこうしたのだ。


カメラの他に望遠レンズがあったがこれは濡れていてもう使えそうになかった。

あとはサイドポケットに拭くタイプのレンズクリーナー、予備のフィルム2個

ニュージーランドで買ったチョコバー2本、小さなナイフ。

あと何故か日本にコンビニで貰えるお箸がついていた。


しばらく写真を見つめていたが、確信する。

どこかは分からないが、ここは現実だということに。



なにはともあれ、僕は道具を手に入れた。

これで火を起こすことができる!



カメラケースに一旦ものを全部入れて上着と一緒に木のそばに置いた。

次に森の中から比較的濡れてない枝や葉っぱを持ってくる。


再びケースから望遠レンズと換えのフィルム、ナイフ、そして割り箸を出す。

痛みを我慢しながらナイフで割り箸を削って。

1箇所に集めた木くずに横に広げたフィルムを出し、望遠レンズで光を集めた。

しばらくして煙が出始めた。すぐに息を吹き掛けたが木くずに燃え移る前に消えてしまった。


なにか他に燃えやすいものが必要だな…

拾った葉っぱは湿気てるしなぁ…


と思ったとこで先ほど捨てたポケットでぐしゃぐしゃになった地図が目についた。

地図を広げ濡れてない部分をちぎり木くずの下に敷き再挑戦。


今度は上手くいった。


ポイ捨てはするもんじゃないな。と思った。


順調に枝に燃え移り安堵した。

数時間ほど火にあたり体を温めたり、服やケースを乾かしたりした。


お腹が空いたのでチョコバーを1つカメラケースからだして食べる。

空腹だったのもあって凄く美味しい。


さて、これからどうしようかな…


「パキッ」


空の色が変わり始めて

この先の計画を考えようとした瞬間だった

後ろで音がしたので振り返ってみると。そこには



酷くやせ細った人間の様なバケモノが、いた。


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