異世界へ
この話も暗いですが
ここでプロローグは終わりです。
(音が聴こえる…)
(テレビの砂嵐の様な音と)
(コポコポという水の音)
(沈んでるような、浮かんでるような、なんだか暖かくて心地いいや)
(あぁ、そうだ、僕は、崖から飛び降りたんだ)
(飛んだ後、風に煽られて…)
(10秒くらいしたら水面が近づいてきて…)
(うぅ、頭が、いたい…)
(ぼくは、ちゃんとしねたのかな・・・)
冴木悠は微睡みの中に漂っていた。
悠は300mを超える断崖絶壁から飛び降りた。
自由落下しながら、崖下から吹き付ける風を受け
クルクルと回転しながら確かに水面に激突したのだ。
(あたまが…いたい)
(いつまでこうしてればいいんだろう)
(ずっとこのままなのかな)
(みんなに…あいたいなぁ)
・・・
・・・
(ん… なにか、きこえる…)
(だれ?)
(このこえは…おかあさん?)
(このこえは…おとうさんだ)
(おとうとの、そらのこえもする…)
(なんていってるの?よくきこえない)
「こ・ち・はや・・てよ…」
(こっちに・・・きてよ?…いますぐ、いく…)
「はや・く・えってき・お・・さんし・じゃった…!!」
(おとうさん?しんだ?なんで?)
「ナンデでてきてく・ないの!!はやくたスけ・キテ!」
(あ…)
「オマエノセイデミンナシンダ!!」「オニイチャンガコロシタ!!」「ワタシタチヲカエセ!!」
急に声が大きくなったと同時に
悠の視界が真っ赤に染まった。
目を見開くとそこには血だらけになった家族の姿があった。
自分を批難する6つの目は悠に近づきながら怒り狂った言葉を吐き続ける。
「ユウ、ナゼデンワニデナカッタ!?」「トテモイタカッタノニ!!」「ナンデオニイチャンダケ!!」
(あ…ああ……)
悠は押しつぶされるような恐怖を感じ
真っ赤に染まった家族が発する言葉に耳を塞いだ。
そして悠はただただ懺悔の言葉を繰り返すことしか出来なかった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいおとうさんごめんなさいおかあさんごめんなさいそらごめんなさいごめんなさい!!」
「オマエナンテワタシノムスコジャナイ!!」「オニイチャンナンテキライダ!!」「アンタナンテウマナケレバ…!!」
謝っても謝っても3人の声はどんどん大きくなり、近づいてくる。
その怒号はもはや悠の直ぐそばから聴こえてきた
あまりの怖さにぎゅっと目を瞑り、その恐怖は極限に達しようとしていた。
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!)
「イタイ!!」「…イ・・・ギギ…!!」「イタイイダイイダイ!!」
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!)
「ユルサナイ…」「ユルサナイ…」「ユルサナイ…」
「「「シヌノハ…ユルサナイ!!」」」
怒号が頭の周りを回っていき、巨大な何かに押しつぶされそうになる感覚が襲ってくる。
そして真っ赤な視界と頭痛と恐怖が悠を支配するその瞬間
「ごめんなさいっ!!」
僕は目を覚ました。
僕は、青空の下、綺麗な湖のそばで横になって倒れていた。