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過去とそれから

読みづらいですが、読んでくれたら嬉しいです。


悠は小さな頃から頭が良かった

1を知れば10を理解してしまうくらいに

頭の回転が速すぎて他人と溝を作ってしまうくらいに




僕の両親は普通の典型的な日本人だった。

中流階級とまでは言えないけど、質素ながらもゆとりのある生活を送っていたと思う。

とても温厚で情に厚く、人を思いやることができる尊敬できる親だった。


僕は生まれたときに産声をあげたときに泣いたきり、

それからずっと泣かなかったんだけど、

両親は心配はするものの、全く怪訝な顔もせずいつも笑顔で僕に向かって色々なことを話してくれた。

僕は今でもそのことをはっきり覚えてる。


1歳になる前には言葉を喋れるようになった。

初めて喋った言葉は「マーマ、パーパ」だ

これを聞いた両親は叫ぶように喜んだ。

というか叫んでいた。あの顔は今思い出すだけでも笑えるなぁ


1か月後には簡単な会話ができるようになって更に両親を驚かせた。

身体にも恵まれていて病気らしい病気も1つも罹らなかったし、

この頃にはトコトコと歩くことができた。

勝手にこっそり家から抜けだして、近所の飼い犬や野良猫と遊んだりもしたなぁ。

ちょっぴりヤンチャだったかもしれない。心配かけただろうなぁ。


3歳になる頃には文字も書けて簡単な四則演算もできるようになった。

両親は驚いて蝶よ花よと色々な習い事をさせてくれたけど、

どれも凄まじい速さでスポンジのように知識や技術を吸収していった。


しばらくして母親が二人目の子どもを妊娠した。

僕ら一家は大喜びでさ、

毎日毎日カレンダーを眺めて新しい家族を待ったんだよなぁ。


弟は無事に生まれた。それも4歳の誕生日と同じ日に!

お猿さんみたいな顔だったけど、もの凄く可愛くて愛おしかった。

もう自分の誕生日なんてどうでもよくて、ずっと守っていこうって思ったんだ。


弟の名前は空"ソラ”と名付けられた。

空は身体も弱く気も小さかったけど僕と一緒にすくすくと育っていった。

いつも僕の後ろにくっついてきて、困ったことがあったらすぐ

「お兄ちゃ〜ん!!」って泣いてたっけ。

うん。女の子みたいなさらさらの髪で全部可愛かった。天使だった。



小学生になって勉強は簡単で退屈だったけど、毎日が楽しかった。

最初は自分の考えてることとクラスのみんなが考えてることが全然違くて戸惑ったけど

周りに話を合わせたり、自分が知ってることを教えてあげたりして友達を増やしていって、

勉強もスポーツもできた僕は次第に学校の中でスーパーヒーローになっていった。


僕は幸せの絶頂の中にいたけど、

この頃かな

少しづつ、刺激の少ない日々の生活が退屈に感じるようになったのは。



ただ僕が少し気が強すぎたのか、頭が良すぎたのか、

はたまたこの世界が便利すぎたのか。


分からないことはインターネットで調べたりして

中学生になる頃には大人も解けないだろう問題も難なく解けるようになり

習い事も全て先生より上達してしまった。


友達にそそのかされて喧嘩や万引きとか、ちょっとした悪事にも手を出してみたこともあるけど、

大してスリルもなく無意味だとわかったからすぐ飽きた。


この頃には何をしても注目を浴びたり、嫌味を言われたりした。

中学校という場所は小学生の時と違い、出る杭は打たれる、ってことを学んだんだ。

何かに熱中することも本気で何かを取り組むこともなくなっていった。

ついでに将来の夢もなかった僕はだんだん無気力になっていった。


だけど両親はこんな変わった僕を弟と変わりなく愛してくれてるし、僕も大好きだった。

もちろん気の小さい僕の可愛い弟も大好きで。

自分の周りのみんなもこの生活も全て好きだった。

退屈ながらも幸せな日々が、

ずっとこんな日々が続くと思っていた。



あの日は、いつも通り退屈な学校を終えた後

僕は大きなヘッドホンをつけて日が沈むまで一人で河原に寝そべっていた。

流れる雲を眺めながら’今日もこうやって何もなく1日は過ぎるんだなぁ’なんて呟いたりしながらね。


家に帰ったらエプロンつけたお母さんと弟が料理を作って待ってくれていて、

家族みんなでご飯を食べて談笑して寝るだけだと思い込んでいたんだ。




でも、そんな日は2度とやってくることはなかった。




夕方まで河原でのんびりした後、僕は帰宅するため歩き出した

そういえば携帯電話みてなかったなぁーと思いみてみると、

弟から1時間前に着信が2件あったのに気づいた。

ずっとヘッドホンをしてたから着信気が付かなかったんだよね。

買い物の頼みかな? かけ直してみるもの繋がらなくて、まぁ大した用事もないのかなーと

そう思って家路まで急ぐと家の周りに人だかりができていた。


そこで僕は何か悪いことが起きたんじゃないかって気づいたんだ。

家に近づくと、人集りの中にいた近所に住む人達は僕を見るなり涙を流したり、同情する様な目で僕をみた。

悪い予感は当たるようで、人をかき分けて急いで家の中に駆け込むと




真っ赤になった3つの人間が転がっていた。


毎日見ている、よく知った顔が3つ寄せあって。


3人で弟の携帯電話を大事そうに握って転がっていたんだ。




それに話しかけても返事がなくて、いくら揺すってみても返事はなくて。


しばらく動かないそれを見つめて、手遅れだと悟った瞬間、


今までで感じたことのない様な絶望感と後悔が襲ってきたんだ。


そして僕は人生で2度目の涙を流した。






それからサイレンを鳴らした救急車と警察がすぐに来て、

何も考えられない頭でうっすらと受け答えしたのは覚えてる。

そして次の日の朝に警察の人が来て、犯人が捕まったことと

その犯人の名前を教えてくれたことはしっかり覚えてる。

結論から言うと全く知らない中年の女の人だった。会ったこともない遠いところに住んでいる他人だった。


動機は、5年前のテレビショーのせいらしい。


法廷でそのビデオを確認したんだけど、そこには”スーパーキッド悠くん!”と右上にタイトルが書かれており

僕と両親、弟の空が仲良く談笑したり僕が色々な特技を見せているちょっとした特集の番組だった。


僕の家族を殺したあの女は家庭持ちであの日の前日に離婚したらしい。

そして何故かこの番組のこの特集のことを思い出し、僕の家族を妬ましく思い、

どこにでもあるような出刃包丁を持ってきてわざわざウチまで来たという。

僕は有名だった故、2chで聞いたらすぐ住所がわかった、とあの女が教えてくれた。


しばらくして裁判があった。

彼女にくだされた判決は3年半の懲役

精神鑑定により彼女は正常じゃなかった為にこんなに刑期が短かったのだと。

もちろんこの事件はニュースにもなった。

大きく報道されたのは事件そのものより刑期の短さだったけどもね。

とにかくこの判決は僕を更に怒らせたけど、

逆にこの短さは僕にとって嬉しくもあった。

公訴もしなかった。


僕はすぐに復讐の為に計画を立てた。

そしてそれからは空っぽの毎日を送っていた。


僕があの日電話に出ていれば助かったかもしれない。

僕が学校が終わって直ぐに家に帰ってれば。

僕がテレビ番組なんかに出なかったら。

僕が自分の才能を隠していれば、有名なんかにならなければ・・・


学校も行かずに後悔と自問自答の日々を繰り返しながら

僕は計画の日まで待ち続けた。


そして16歳の冬にあの女は刑期通り3年半で刑務所からでてきた。



賢い頭脳を持った僕が復讐の為にずっと考えていた計画は淀みなく成功した。


出所した次の日の夕時、家族が殺された同じ凶器を使い、あの女をめった刺しにした。


人を殺したという罪悪感はあったけど、もうどうでも良かった。


そして予めブッキングしていたニュージーランド行きの飛行機に乗り、

保険金で得たお金で小さな帆船を買い、この無人島まで来た。


何故ニュージーランドに来たかというと弟の空が渡り鳥のことが好きだったからだ。

ここには数多くの渡り鳥がいる。

だから僕はお父さんのカメラを持ってこの島で死のうと決めた。

そしてその写真をいつか家族に渡せたらな。と思う。


これが僕の人生だ。


僕は幸せだったと思う。最終的にはなにも残らなかったけどね。

ただ僕が悪かったんだ。僕のせいで家族が死んだ。


もし、もう一度人生を歩むことができるなら、失敗しないように慎重に生きよう。



午後9時過ぎだろうか、太陽は沈んで空は真っ赤になった。

僕はその夕焼けを写真におさめて、旅を終えることにする。






「ありがとう、お母さん、お父さん、空」


そう呟き


僕は崖から1歩踏み出した



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