旅の始まりの前夜まで
よいしょ。よいしょ。
船に乗り始めてからから6日目
僕はオールを漕いでようやく目的地についた。
そんなに多くない荷物を運び出し、地面に座り、呟く。
「晴れた日は少ないって聞いてたけど晴れててよかったなぁ。風凄いけど。」
誰も居ないのをいいことに独り言を喋り始める。
「はー。ここがオークランド島かー。ほんとに異世界みたい」
ニュージーランド本土から更に南に500km
オークランド諸島に冴木悠はいた。
この不安定な気候の中小さな帆付きボートでたどり着いたのは奇跡といえるだろう。
地図とコンパス、10日分の食料と完全防水の寝具、最低限のキャンプ道具、そして古びたカメラだけを持って
僕は一人世界の果てに来ていた。
船の上で既に半分もの食料を消費していているけど
僕には食料の心配などどうでもよかった。
僕は振り返って今まで漕いできた海を見つめてまた正面を見る。
「凄い!凄いや!!あはは!!」
ゆっくりと、そして突然に感動と興奮が湧き上がり、思わず笑ってしまう。
「さて、最後の冒険だ!!」
大声をあげて立ち上がり荷物を背負い、いままでお世話になった船を引きずって海に流してしばらく見つめたあと、
ペンギンの鳴き声がする中、僕は歩き始めた。
岩陰で休んだり、景色や渡り鳥、ペンギン、アザラシなどの写真を撮ったりしながら
生い茂った草の上を3日程歩き続けた。
すると前方に小高い丘が見えてきた。
その丘は木は生えてなく雑草が風に煽られ波のようになびいている。
頂上に行けば島全体を見渡せて物凄く綺麗に違いないと思い
僕は走った。誰もいないこの島の上をがむしゃらに走った。
頂上につく。じんわりと出る汗が気持ちいい。
そこは丘ではなく崖だったけど想像してた通り,島全体が見渡せて
正面にはちょうど太陽が海の向こうに沈もうとしていた。
聴こえるのは風の音だけだ。
「ひゃー! 綺麗だなー!綺麗だなー!!あはは」
僕はあまりの綺麗さに何故か笑いが止まらなかった。
しばらく笑った後、目に溜まった涙を拭いて僕は決めたんだ。
「ここを、僕の死に場所にしよう・・・」
そう、僕は死ぬためにこの島まで来たんだ。
文章なんて書くのは初めてですが、
のんびり書いていきます。
しばらくプロローグになると思います。