表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

都会に魔女

 ある所に対価次第で何でも願いを叶えてくれる魔女がいました。夢を叶えたり、恋を成就させたり。悪魔召喚から呪いまで何でも。対価次第で叶えてくれる魔女がいたのです。

 ある晴れた日の事でした。彼女の所に、一人の青年が訪ねてきました。

「何でも願いを叶えてくれると聞いてます」

 礼儀のある、しっかりした青年です。強い決意を瞳に宿した、とても爽やかな人物でした。

 沈んでいた彼女の目の色が変りました。こんな青年が訪れると彼女の願い事への姿勢は大きく変化するのです。親身になって話を聞き、相槌を打ち、優しい言葉をかけながら丁寧に対応してくれるのです。それこそ本当に人が変ったかのように、彼女は相談にのってあげるのです。

 今回もそうなるはずでした。

 しかしながら、彼女はその青年をいつもの様に扱いません。あろうことか変装をしていたのです。分厚い眼鏡をかけて、マスクをし、トンガリ帽子を被って相手をしています。それは異様な容姿でした。

「ええ、私が何でも叶えて差し上げましょうぞ。して、どんな願いかね」

 その上、声色まで変えていました。いつもの透き通った軽快な声ではなく、萎れた老婆のような声です。その声に机の下にいた使い魔の猿魔は吹き出しそうになりました。彼女の異様な姿だけでも面白かったのです。こんな声を聞いては、笑うなという指示は困難でした。

 青年と彼女の会話は進んでいきます。青年の口から願い事の詳細が語られていきます。彼女は相も変らず萎れた声で対応していました。

 その間、猿魔は口に手を当てて必死で笑い声を押し殺していました。が、少し気を抜いてしまい、ひひっとも、ぎゃはっとも取れる声を、つい漏らしてしまいました。彼女は容赦なく猿魔は蹴り飛ばしました。

 ぎゃ、と悲鳴を上げて、猿魔は吹っ飛び、正面から壁にぶち当たりました。そしてそのまま動かなくなってしまいました。気を失ったのです。

 オッホン。ひとつ咳払いをして、彼女は再び青年に願いを話すよう促しました。青年の願いが恋の願いである事までは聞きだしていましたが、吹っ飛んだ猿魔を見て青年は言葉を無くしていたのです。

「ああ、そうでしたね。はい。……つまりはですね、僕は同じ会社の、静香さんという方とお付き合いしたいのです」

 落ち着きを取り戻した青年は、はきはきとそんな願いを口にしました。今まで静かに聞いていた彼女は、しかし突然勢いよく立ち上がりました。机を叩いて、椅子を倒して、本当に勢いよく立ち上がったのです。その衝撃で入り口近くに立掛けてあった空飛ぶ箒が倒れてしまいました。

「ならん。その願いだけは叶えとうない!」

 唾を撒き散らしながら、荒々しく彼女は言いきりました。座る青年はただただ圧倒されて、しばしの間呆気にとられてしまいました。

「……えっ。ちょっと……。何故ですか!」

 言葉が飲み込めてきた青年は、突然の激昂と拒絶に怒りを覚えて立ち上がりました。机を叩き、椅子を倒して、本当に勢いよく立ち上がったのです。その衝撃で壁に掛けてあった魔法の杖が倒れてしまいました。

「ならんならん。どうしても駄目じゃ!」

 彼女はずいっと身を乗り出して言い放ちます。青年も負けじと身を乗り出して、荒々しく言い返します。

「何故です! なぜ僕の願い事は駄目なのですか。理由はなんなん――」

「ええい、もう! 駄目って言ったら駄目なの!」

 そう青年の言葉を遮って、彼女は、静香さんは変装をとくと、真っ赤な顔で叫んだのです。


一応出来上がっていた物語を拡張、長くすることの難しさをひしひしと感じている今日この頃、皆さんはどうお過ごしでしょうか。暑さに負けそうなマグロ頭であります。さて今回は私も参加します企画、『夏ホラー2007』のお知らせをしておきたいと思います。ご存じの通りの巨大企画になったわけで、様々なホラー作品が楽しめると思いわれます夏ホラー。ぜひ8月15日の『夏ホラー2007』をご期待くださいませ。夏の一日、涼しさを感じてみてください。それではこの辺で。ではでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ