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今やハルオは顔を真っ赤にしている。ヨシヨシ、怒んなさい。自信がどうのなんて言ってられないくらいに。
「そんなに心配なら、自分で香を見守る事ね。私、しばらく香に近づけないんだから」
とどめの一言。ハルオはついに二人の後をつけて行った。そりゃ、そうだろう。ハルオが一番得意なのは本来、尾行術なのだから。
「ね、土間。あんたもハルオの事は気になるんじゃない? ついて行ったら?」
礼似は一部始終をあきれ顔で見ていた土間に向かって、けしかけた。
「急にハルオと香をくっつけたいなんて言いだすから、何を始めるのかと思えば。言っとくけど、ハルオはあんたのおもちゃじゃないんだからね」
土間は礼似にしっかりとくぎを刺そうとしたが、
「先に香の事に口をはさんだのは土間の方でしょ? 人の事は言えないって。無理にハルオと距離をおこうとしてる土間より、私はちゃんと香を世話してるし、親のあんたに同意まで得ようとしているのよ。えらいでしょ?」と、礼似は土間の意見を封じ込めてしまう。
「何が世話よ。まったく、何考えてるんだか」土間はため息をついた。
「だって、面白くって」
礼似はそう言ってニマニマして見せたのだが、土間は真顔で聞き返してきた。
「礼似。あんた、何をそんなに焦ってるの?」
「焦る? 私が? 別にそんな」
礼似はさらりと受け流そうとしたが、土間の真顔は変わらない。ふうん。意外と勘がいいじゃない。土間。
確かに、最初に一樹に電話をした時点では、面白半分の暇つぶしだった。本気であの二人をくっつけようとまでは思っていなかったし、ちょっと一樹を香に近づけたら、ハルオはどんな反応をするか見てみたかっただけ。
ハルオが過剰に反応したら、すぐにバラして私の悪ふざけで終わらせるつもりだった。それでも二人には何らかの刺激になるだろうし。
だが、今は少し事情が違う。一度私が組長候補として名前が挙がってしまった以上、私の身の周りは常にうるさい事になるだろう。こんな話が出てしまったら、私が受けようが受けまいが、私を厄介者に思う奴は必ず出て来る。
もし、組長になってしまえば、香一人を偏って面倒見る訳にはいかない。家族同然でも、そこの話は別だ。
たとえ断ったって、どこかで誰かに目を付けられる。私は組織の派閥に無縁でいるから、それはもう、確実だ。
香も身を守る技術は学んでいる。組の中を渡り歩くコツもだんだんつかんで来るだろう。
でも、心までは。
ようやく人との信頼を実感し始めた香を、見守りにくくなるのは正直、痛い。いっそハルオとくっついて、土間や御子達が見守ってくれれば、一番自然でいいと思ったんだけど。焦ってるように見えたのか。
土間もハルオが絡むと鋭いな。いや、違う。
千里眼の御子がいないから、私がつい、油断したんだわ。
「香まで、私みたいな一人で生きる人間になっちゃ、ダメなのよ。もっと、人を受け入れる事を覚えないと」
事情は言えない。でも、少しだけ本音を交える。
こんな事にまで詐欺の時のテクニックが、顔をのぞかせてしまうなんて。礼似は苦笑する。
「受け入れられるように、ハルオにやきもち妬かせて安心させたい、か。分からなくは無いけれど」
「そういいながら、私にくっついてきてるじゃない」
礼似は意地わるくいった。礼似はすでにハルオの後を付けていたのだ。




