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こてつ物語8  作者: 貫雪
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 礼似は焦っていた。相手に集中しなければいけないことは分かっているが、どうしても香の姿が目の端に入る。


 バイクから飛び降りる瞬間、それなりにスピードを落としていたようだし、しっかりと受け身も取れていたから、それほど深刻なダメージは受けていないだろう。あの判断は悪くなかったと思う。

 しかし、急には動けないはず。衝撃もあっただろうし、身体がショックから立ち直るのにも時間がかかるはずだ。


 あのままじゃ危ない。何とか助けにいかないと。そう思うほどに気がそれて、相手に付け込まれるのか、かえって手間取ってしまう。手にした鉄パイプをつかまれて動かせなくなってしまう。もう! しっかりしろ、私。


 すると、そこにハルオの姿がよぎって行った。真っ直ぐ香の元へ向かっている。グッドタイミングよ、ハルオ!

 こういう時のハルオは強い。何せ、香の命がかかってる。向かうところ敵なしだろう。よーし。私も。


「いつまでも調子に乗ってんじゃないわよ! 雑魚が!」


 礼似は思い切り相手をけり上げる。鉄パイプをむしり取るように奪うと、倒れた背中にたたきつける。

 土間や一樹もそれぞれに相手を倒したようだ。礼似もさらに向かって来た相手に殴りかかり、最後の一人をようやく片付けた。


「あんた達にはもう、行き場は無いわよ。観念しなさい。アテにしていた連中は、大谷に寝返ったわ」

 礼似は今殴り倒した相手の男を見降ろし、睨みつける。


「ま、まさか」そう言いながらも男の顔色が変わる。


「あんた、一度私を襲ってるわよね? あんたを利用した中堅幹部の連中は、一度失敗した相手をアテにするほど甘くは無かったようよ」


 いわれた男は視線を落とし、歯ぎしりをする。自分の見通しの甘さに気付いたらしい。


「大谷に直接乗り込まれて、あんたらの事なんか知らないって、シラを切りとおすつもりみたいよ。これでこてつ組は一本化するわ。私達にたてつく奴等は、間違いなくこうなるの。あんたらみたいな連中が入り込む隙なんて無いのよ。華風、真柴を引きいる会長に、私と大谷を向こうに回して、たてつけると思う? 命が惜しけりゃあきらめるのね」

 そう言って礼似は土間の方に向き直ってウインクした。


「そんな訳で、私、こてつ組の組長になるから、よろしくね」


「はあ?」

 土間はあっけに取られて礼似を見つめた。


「一樹、悪いけど先に行って奥様の様子を見てくれない? 御子達がいるから大丈夫だとは思うけど、私、土間に事情説明しなきゃならないから」


「また俺が後始末か?」一樹は不満そうだが、


「私達もすぐに行くって。仕方ないじゃない。奥様の前で出来る話じゃないんだから」


 やれやれ。何処まで人使いが荒くなったんだ。そう、思いながらもしぶしぶ一樹は礼似に従うしかなかった。

 こりゃあ、これからは大変だぞ……。



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