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こてつ物語8  作者: 貫雪
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「あー、面白かった」礼似は機嫌よく真柴組を後にする。


「人の亭主をあんまりからかってると、バチが当たるんじゃないですか?」

 そういいながらも、香もまだ、笑いが止まらずにいる。


「真柴の連中って、糞真面目が多いから、面白くって。すぐムキになるんだもの。それに、人の亭主だから、からかいがいがあるんじゃない。自分の男からかったって、面白くなんかないもんよ。こっちに気があるのが分かってるから、ムキになるのは当たり前。ハルオだってそうでしょ?」


「なんでそこにハルオが出て来るんです? ハルオは私の男って訳じゃありません」

 それこそ香はムキになった。


「モノのたとえよ。ハルオがあんたに気があるのは明白なんだから。香だってわざわざハルオをからかってやろうなんて思わないでしょ? それとも、もっとムキになってもらいたい?」


「別に」


 そう言ったきり、香は黙り込んで口を開かない。あらら。これは結構、図星をついちゃったかな?



 そもそもハルオは惚れっぽい。しかも、特に美人に弱い。単純に顔立ちの良さに弱いだけではなく、表情の美人、仕草美人、性格の良さが顔に現れるタイプの美人。どんな美人でもオールマイティーに弱い。

 惚れる相手の守備範囲は相当広い物がある。気弱で馬鹿真面目な性格がなかったら、とんでもない事になっていそうだ。


 香は香でこっちの世界の男には、関わりたくないと常々言っている。ハルオにここまで深くかかわってしまった以上今更とは思うが、本人は意地になってハルオを拒否し続けている。はたから見れば相性は悪くなさそうなのに。


 しかも香は「刃物使い」が嫌いと来ている。それはそうだ。香は刃物使いに散々な目に逢っているし。


 そんな香が倉田に砥ぎの技術を教わっているのは、ハルオにかなり譲歩してきた証拠だろう。


 だが、厄介な事に香はハルオがらみで顔に傷を負っている。目立つ場所だけに二人とも意識していないはずはない。ハルオは香に罪の意識を感じずにはいられないだろうし、そこも香の気に入らない所でもあるだろう。


 ハルオみたいな男じゃ、 ひょんな気の迷いから他の美人に本気にならないとも限らない。そのくせ香への罪悪感は残り続けそうだ。


 香は自分が殺されそうな時でさえ、「心の愛きょうで勝負する」と、言ってのけるような娘だ。ハルオの熱が香の傷への同情から続いているとすれば、これは屈辱物だろう。


 香もハルオと気が合うのは分かっていても、折れる事が出来ないのはきっとその事があるからだ。

 ハルオの好意は同情や罪悪感で続いているのではないという自信が欲しい。心のどこかでそう思っているからこそ、「ムキになってもらいたい?」と、礼似に問いかけられて自分の本音が見えてしまったのかもしれない。


 香、なかなか可愛い所があるじゃない。


 ようし。こうなったら、是非、ハルオにはムキになってもらいたいわね。なんだかんだいっても、香が折れればこの二人はくっつきそうな気もするし。ま、ハルオの熱が醒めないとも限らないけど、男心なんてそんなもの。旨く行くかどうかなんて、くっついて見なきゃ分からないんだから。それに、なんたって、面白そうだわ。


 この手の事で第三者が首を突っ込むとロクな事は無いのだが、礼似はつい、イタズラ心が顔を出し、思いっきり首を突っ込んでしまう。



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