もう少しだけ、ここに
2月22日
春節も、もうすぐ終わり。 明日には、またこの古い家を離れる。 窓の外の虫の声を聞いていると、帰ってきたのが昨日のことみたいに思えてしまう。
この家の夜は真っ暗だけど、窓の向こうを見れば、あの小さな川がちゃんとそこで静かに流れている気がする。
お昼の陽射しは、ぽかぽかしていて気持ちいい。 石畳の道をゆっくり歩きながら、懐かしい通りを眺める。 道ばたの子どもたちが、少し不思議そうに私を見る。きっともう、私のことなんて覚えていないよね。 でも私の目には、みんなあの頃みたいに元気で、かわいく見える。
……なんだか、それだけでちょっと嬉しい。
風はやわらかくて、青草の匂いをふわっと運んでくる。 その空気を、少し欲張るみたいに深く吸い込む。
もう少しだけ、ここにいたいな。 村で知っている顔は、少しずつ減っていく。 親しかったおじいちゃんやおばあちゃんたちも、遠い遠いところへ行ってしまった。 どうか向こうでは、もう畑に出なくていいくらい、ゆっくりできますように。
川辺まで歩いて、そっと足を水に入れる。 つま先をなぞる水は、ひんやりしていて気持ちいい。 いろいろ思いながら、目を閉じる。 時間の匂いって、少し冷たくて、でもちゃんとここにあるのに、すぐ手からこぼれてしまいそうで……不思議。
夕ごはんは、卵の入った麺。 兄さまが焼いてくれた卵は、まるくてきれい。 お箸でそっとつつくと、黄身がとろりと流れ出す。
夜の古い家は少し冷えるけれど、 丼の中の麺は、あたたかくて、やさしい。




