表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/18

もう少しだけ、ここに

2月22日

春節も、もうすぐ終わり。 明日には、またこの古い家を離れる。 窓の外の虫の声を聞いていると、帰ってきたのが昨日のことみたいに思えてしまう。


この家の夜は真っ暗だけど、窓の向こうを見れば、あの小さな川がちゃんとそこで静かに流れている気がする。


お昼の陽射しは、ぽかぽかしていて気持ちいい。 石畳の道をゆっくり歩きながら、懐かしい通りを眺める。 道ばたの子どもたちが、少し不思議そうに私を見る。きっともう、私のことなんて覚えていないよね。 でも私の目には、みんなあの頃みたいに元気で、かわいく見える。


……なんだか、それだけでちょっと嬉しい。


風はやわらかくて、青草の匂いをふわっと運んでくる。 その空気を、少し欲張るみたいに深く吸い込む。


もう少しだけ、ここにいたいな。 村で知っている顔は、少しずつ減っていく。 親しかったおじいちゃんやおばあちゃんたちも、遠い遠いところへ行ってしまった。 どうか向こうでは、もう畑に出なくていいくらい、ゆっくりできますように。


川辺まで歩いて、そっと足を水に入れる。 つま先をなぞる水は、ひんやりしていて気持ちいい。 いろいろ思いながら、目を閉じる。 時間の匂いって、少し冷たくて、でもちゃんとここにあるのに、すぐ手からこぼれてしまいそうで……不思議。


夕ごはんは、卵の入った麺。 兄さまが焼いてくれた卵は、まるくてきれい。 お箸でそっとつつくと、黄身がとろりと流れ出す。


夜の古い家は少し冷えるけれど、 丼の中の麺は、あたたかくて、やさしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ