灯りが消える前に
2月24日
朝の太陽が湖の水面からゆっくり昇って、光が窓から部屋の中へ差し込んでくる。やわらかくて、あたたかい。
兄さまは昨夜、遅くまでゲームをしていたみたいで、部屋のドアが少しだけ開いたままになっていた。
ミミが私の部屋から出てきて、するりと兄さまの部屋へ入っていく。私はベッドのそばまで歩いて、そっと顔をのぞき込んだ。
……ちょっとパンダみたい。
静かにベッドに上がって、ゆっくり布団をめくって、私も中へもぐり込む。隣に寝転びながらスマホをいじって、兄さまが起きるのを待っていた。
でもベッドがあまりにもやわらかくて、まるで魔法みたいに、気づけば私まで眠ってしまっていた。
もう一度目を覚ますと、窓の光が少しだけまぶしい。兄さまは隣で静かに動画を見ている。私は目を細めながら、ぼんやりスマホを探した。
「……兄さま、いま……何時?」
「もうすぐ11時。そろそろお昼だね。」
寝ぼけたまま寝返りを打って、布団をぎゅっと抱きしめる。
「……うん……わかった……」
お母さんが廊下を通りかかって、そのまま部屋に入ってきた。
「そろそろ起きなさい。あら、またお兄ちゃんの部屋で寝てるの?」少し困ったみたいに笑っている。
「朝に来たの。待ってたら寝ちゃった。」
「じゃあ早く起きなさい。もうすぐごはんよ。」
お昼ごはんは、いつも通り素朴でおいしい。
食卓では両親が私たちの将来の話をしているけれど、その言葉はどこか遠いところの話みたいに聞こえた。
午後の陽射しはクリームみたいにやわらかくて、夏ほど強くない。兄さまに手を引かれて、下の公園へ走りに行く。
走っていると、汗が朝露みたいに肌に浮かんでくる。兄さまは小さなモーターみたいに速いけれど、いつもちゃんと視界の中にその背中がある。私が遅れると、戻ってきて、ゆっくり待ってくれる。
風が吹いて、汗が少しずつ消えていく。隣を歩く兄さまを見て、私もまた走り出した。
夜、帰ると、食卓にはもうあたたかいごはんが並んでいた。スマホを見ると、数分前の着信履歴。家の中が、なんだかとても明るく感じる。
「ただいま。」
「ちょうど迎えに行こうとしてたのよ。ちゃんと着信音つけておきなさいね。」お母さんは少し真面目な声。
私たちは気まずそうに笑って、急いで手を洗いに行った。太陽は沈んで、きっともうすぐ月が昇る。台所ではお母さんが食器を拭いている。
水の音と、陶器が触れ合う小さな音だけが、静かに響いていた。
お風呂から上がると、ミミがずっとドアの前で待っている。髪を乾かしてから、ミミを抱えて兄さまの部屋で少しだけゲームをした。
自分の部屋へ戻るとき、廊下には小さな灯りがひとつだけ。ミミを抱いて、そっと歩く。
私が部屋の明かりをつけるのを見届けてから、兄さまは静かにドアを閉めた。
廊下は、ふっと暗くなる。
今夜は眠る前に、ミミの匂いをたくさん吸い込もう。
……ふふ。




