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第1話 ダイヤ

 はじけるような音がして、銀テープが宙を舞う。16歳の私は必死に手を伸ばすも、たしか届かなくて、あのとき見た景色は白というよりかはすこし暗くって、まぶしいもので、その瞬間の2秒間ほどの景色だけは、はっきりと鮮明に覚えている。


 あとの記憶は? おもいだせないんだ──。



 

 「もしもーし。すずー? どーしたー?」

 

 高校は別になった幼馴染の鈴奈とは、今も時々連絡を取り合っていて、音楽のことやクラブ活動のことや、少しの恋愛のことなど、何でも話せる仲だった。進学校に通う私にとっては、鈴奈と話す時間はちょっとだけ生意気にませこんでいた小学生と中学生のころを思い出せて、気分転換になるものだった。


 この夜に電話をかけてきた鈴奈は慌てたように嬉しそうに、私のことばに重ねるように話し始めた。


 「うん、すず。でも今日はレナ! ねぇねぇ、オクトシアブルが今度ソシアレホールに来るんだって!!」


 鈴奈は音楽活動のときはレナと名乗っていた。ちなみに私はアリサと名乗っていて、よくふたりでコンサートやライブに行ったり、たまにカラオケに行ったり、ときどきどちらかの家で楽器を弾いたりしていた。それが、私たちの「音楽活動」だった。レナはギターとボーカルをしていて、私はベース。ふたりしかいないけれど、バンドを組むことを夢見ていた。


 「えっ? ソシアレ?」


 「そう! だから一緒に行こうよー!」

 

 「うんうん! いこー!」


 オクトシアブルとは、今すこし売れ始めていたバンドだった。ミヤという友達が小学校を卒業するくらいの時に教えてくれてから、活動を追っていたバンドだった。そのころはまだデビュー前で、私はその幻想的な世界と長い髪にときめいた。


 実はもともと私はボーカルさんの歌が好きだったんだけど、鈴がそのボーカルさんのファンになったから、私はドラムさんのファンということになった。ドラムさんにしたのは、ドラムの演奏も好きだったし、可愛かったから。


 歌と曲と、その世界観が好きだったから、別に誰のファンと名乗るかはそれほど重要ではなかった。それに、私はどうも男っぽい人が得意ではなかった。


 その頃のオクトシアブルは、ずっとライブハウスばかりでライブを行っていたから、ライブに行くハードルはかなり高かった。それに当時はまだ中学生だったから、ライブに行くなんて、そもそも全く考えていなくて、そのまま高校受験の準備に入ったから、正直なところ存在をすっかり忘れていた。


 「たのしみだねー、アリサ」

 

 「ねー、たのしみ!」


 電話を切った私は、少しわくわくしていた。


 今どんな曲をやっているんだろう。好きだった曲もまだやっているのかな?


 なんて思いながら、昔好きだった曲を口ずさんで、クローゼットを開けて服を選んでいた。


 「オクトシアブルなら、こんなかんじかなー」


 無難な黒い服とスカートで、それらしく見えるように組み合わせてみた。


 「うん!いいかも!」


 納得のいくものをみつけられたから服は買わないでいいかな、と鏡の前で幻想的なメロディーラインと歌詞を口ずさみながら、くるくる回って見ていると、部屋の扉の外から「ごはんだよ」とお母さんが呼んできた。


 「はーい!すぐ行くねー!」


 服を脱ぎ捨てて、部屋着のワンピースを着て暖かいパーカーを羽織ったら、そのまま浮かれてそのお気に入りの「ダイヤ」を口ずさみながら部屋を出た。


 「ダイヤ」とは彼らのデビュー曲であった。ふわふわと浮遊感のある、幻想的な名曲だ。


 それからライブの当日までは、またテストとかクラブ活動で忙しい日々を過ごしていた。数学も難しくなってきたから、勉強しないとついていくのが大変で、新しい曲をよく聞き込む暇がないままに、ライブ当日を迎えてた。


 ちょっと肌寒い日だったけれど、私はこの日に着ようと決めていた服をそのまま着た。ノースリーブの黒いトップスと、黒の少し裾が広がったロングスカート。そして、それらしく見える大き目のリストバンドをはめて、黒い靴を履くと、鈴と待ち合わせている近くのコンビニへ向かった。















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