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召喚3日目9:魔族の町へ2

 その後も俺たちはいろんな魔族と交流した。というより、魔族の珍味食べ歩きの旅と化していたところはあるが。エスカルゴや、イナゴ程度なら何も思わず食べていたが、毒蜘蛛タランチュラ焼きは流石に、食うのを躊躇したぞ。


 続いて紹介されたのは細身のエルフの男。金髪で優しい印象を受ける線の細い中年男性に見える。清潔感があって、好印象だ。


「エルフ族のバラードさんだよ。魔王軍の防具の仕入れをやってくれているんだ。」


「よろしく。」


「ええ、よろしくお願いいたします。魔王様の愛する方をお目にかかれたこと、誠に光栄です。」


「そんな大げさな。」


 握手を交わし、少し話した感じ、第1印象に違わぬ、エルフに感じた。だが、どうにも俺には引っかかるところがあった。この丁寧さ、どこかで見たことがある。


「ところで、直太様はクロトー・ダン教についてご存じかな。」


「え?」


「魔王様はいつもおっしゃっておられるのです。唯一神、クロトー・ダンこそ、この歪みある世界を変革に導くと。」


「うわあ、マジか。」


 なるほど、俺が引っかかっていた違和感の正体はこれか。千穂がドハマりしていた宗教、クロトー・ダン教。この名をこの世界でも聞くことになるとは。


 俺は元凶と思しき人物に聞いてみた。


「おい千穂、これはどういうことだ。」


「頑張って私がクロトー・ダン教を広めたの。凄いでしょ。」


「ほう……」


「前の世界じゃ、勧誘なかなかうまくいかなかったんだけど、ここのみんなは素直でいい子たちだよ。きっと救われるはず♪」


 俺は千穂の肩を強くつかんだ。彼女はやったことの重大性を理解していないらしい。


「直君、どうしたの?怖いよ。」


「やってくれたなあ、千穂。」


 実は、千穂が異世界に来たことで、怪しい政党や宗教との関わりが断たれたことを俺は喜んでいた。だが、それがぬか喜びだったとは。関わりを立つどころか、悪化しているじゃないか。


「ねえ、メイちゃん、直君が変なんだけど……メイちゃん?」


「千穂乃様、盛大にやってくれましたね。これはこの世界の宗教体系を破壊する行為です。しかも、新興宗教という問題をはらんだ教えを広めるとは……」


「ふぇ?どうして二人とも私を睨むの。ねえ、怖い、怖いんだけど。」


 この後、たっぷり説教タイムとなった。






「あ~疲れた。」


「疲れたね。」


 メイのことも考慮し、ユニコーンの馬車で城に戻った俺たち。3人で片づけの終わった千穂の部屋で入り浸っていた。


 壁にはデカデカとシャイニング党のポスターが掲げられている。党首、サウザンド天津が、『日本に1000%の力を』とスローガンを掲げ、決め顔で立っているポスターだ。


 本棚にはクロトー・ダン教、教祖、ビリオン・檀の伝記「神の才能・クロニクル」がたっぷり10巻並んでいる。


 千穂曰く、シャイニング党やクロトー・ダン教関連のものは、現実世界の物品の中でも魔力量が高く、異世界に召喚できるらしい。真偽は不確かだが。


 ベッドにはお手製のたれ目パンダぬいぐるみが、大中小で重ねられている。可愛さと怪しさが共存する千穂らしい部屋だ。


「しかし、魔族のみんなって暖かいな。」


「義理人情といえば聞こえがいいですが、田舎臭くて鬱陶しいという話も。」


「おまえなあ……」


「しかし、私は嫌いではありませんよ。」


 メイの素直じゃない物言いに、俺は苦笑いを浮かべた。確かに、知らない相手に話しかけられるのが得意な人ばかりじゃない。まして相手が、魔族なら尚更。それでも、俺には王国より居心地よく感じた。


「そうそう、私も助けてもらった際に悪魔になったの。人間のままだと命を保てなかったらしくて。」


「なるほど、つまり千穂もその魔族の一員ってわけか。」


 確かに今の千穂は、しっぽや翼がついている。本人の性格に変化がないのであまり気にしていなかったが、結構重大な変身を遂げていたんだな。


「王国の魔族差別。これは決して他人ごとではなく、千穂様の当事者なのですね。」


「そうだよ。」


「人助けだけじゃなく、千穂のためにもなるなら迷いはないな。改めて言わせてくれ。俺は君に協力したい。メイは?」


「私の主人は直太様と千穂乃様です。お二人の意見が一致するなら私の意思が介在する余地はありません。付き従うのみです。」


 俺たちの言葉に千穂は、顔を輝かせた。


「ありがと!二人ならわかってくれると思ってた。」


 彼女の満面の笑みを見ると、自然とこちらも笑顔になる。


「そうだ、千穂、まだ言ってなかったな。」


「え?何を。」


 きょとんとする千穂。そんな彼女に俺とメイは近寄った。そして、1年前まで毎日かけていたこの言葉を言い放つ。


「お帰り千穂。」


「お帰りなさいませ千穂乃様。」


 戻ってきた日常の象徴。1年分のお帰りをやっと言えた。千穂の瞳からは自然と涙が流れ出ていた。


「ただいま。」


 彼女は俺の胸元に縋りつき、俺はそんな彼女を抱きとめた。






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