召喚3日目3:対ノクシエル戦
ノクシエルは翼を羽ばたかせ、宙をかける。ビームガンの攻撃を的確によけ、わずかな時間で俺に肉薄する。
「やっぱ速いな。」
巨大かぎ爪が俺の体に襲い掛かる。切り裂かれる寸前、何とか体をそらした。反撃とばかりにビームガンを放つ。だが、向こうもすばしっこく、掠めもしない。
「先ほどまでの威勢はどうした?」
「くそっ、これじゃじり貧だ。」
ノクシエルの攻撃を避け続けるのは至難の業。右へ左へと、何とかかわすことはできている。だが、その爪がいつ俺の体を切り裂くか。それは時間の問題だった。
「ここで一芝居うってみるか……」
俺は一旦、後ろに飛びのく。同時にポケットからとあるものを取り出すと、それを高く掲げた。
「見せてやるよ、これが大量破壊兵器ダイナマイトだ!」
大声でそう叫ぶと、ノクシエルめがけて投げつける。
「来たな、これさえ喰らわなければ、私が負けることはない。」
ノクシエルは、すぐさま距離をとる。放物線を描くその物体に対し、精神を集中。最大出力で高密度のビームを放った。ダイナマイトと呼んだその物体は、爆発する暇もなく、ビームに晒され溶け消えた。
だが、これは目論み通り。
「こんなもんでも、騙せるんだな。」
俺がノクシエルに投げつけたのは、煙幕発生装置。ダイナマイトを知らぬノクシエルだからこそ使えた作戦だ。
「あいつのビームは1度撃つと、次撃つまでにタイムロスがある。無駄撃ちさせたのは収穫だな。」
ほくそ笑む俺に対し、何も知らないノクシエルは自信満々に宣言した。
「どうだ、貴様の切り札は打ち破ったぞ!」
「ああ、そうみたいだな~。」
「棒読み?全く動揺が感じられない。どういうことだ!?」
「ここからは俺のターンだ。」
先ほどのビーム発射は少し堪えたようだ。少し素早さが落ちている。俺はここぞとばかり絶え間なく、ビームガンを撃ち込んだ。降りかかるビームの雨。ノクシエルはこれらを的確に振り払う。その実力は大したものだが、先ほどまでの攻めと違い、防戦一方に。
「防御魔術はどうしたんだろうな?」
「それは……」
「そうか、未知の武器相手では防御魔術は練れないみたいだな。」
「くそ、鋭い奴め。」
自然界の水は火を消すことはできるが、電気を防ぐことはできない。電気を防げるのはゴムやガラスが有効。これと同じで、防御魔術と一言にくくっても、攻撃によってそれを防ぐ魔術は異なる。別世界で作られたビームの防ぐ魔術などわかるはずもない。
結果、自慢の爪でビームを振り払うという苦肉の策に陥ったのだ。
「お前も大したことないみたいだな。さっきのダイナマイトも本物じゃないし。」
「何?」
「騙されたてくれてありがとな。」
「何だと……なめるなあああ!」
いかん、調子に乗って怒らせてしまったようだ。動きが先ほどより荒々しい。
更にビームをかするも構わず、こちらに突っ込んできた。
正面から襲い掛かられると思った矢先、視線上からノクシエルが消えた。その代わり4つのブーメランが出現。真っすぐ俺の方に向かってくる。
「またブーメランかよ!面倒なものを何度も何度も……」
まずはブーメランを避ける。だが、その隙に後ろに回りこまれてしまう。
ノクシエルの爪が、またも俺を狙う!その速さは避け切るには難しい。
「これでどうだ!」
咄嗟にビームガンを鈍器にして、これを防ぐ。だが、もう片方の腕から繰り出される攻撃までは防げない。その爪が、俺の服をかする。
「危なっ!これが四天王の本気……ゲーム内ではずっと舐めプしていたってか……」
よく主人公が感情のパワーで強くなるってあるよな。今のノクシエルがそれだ。本当どうして煽っちゃったんだろ俺。
「これで、貴様は終わりだあああ!」
「いや、まだまだ。これ以上魔王軍に現代兵器を見せたくはないが、四の五の言ってる余裕はなさそうだ。」
手持ちの煙幕装置を起動。ノクシエルに投げつけ、その視界を奪った。
この隙に距離をとり、ビームを撃ち込むべきだが……先ほど避けたブーメランが再び襲い掛かってきた。まずはこれを撃ち落とす。
「まず2つ……おっと!」
後方、残り2つのブーメランが迫りくる。一つは上から、一つは下から。刹那、俺は飛び上がり体を丸めた。2つのブーメランの間を潜り抜けて見せる。
跳躍から着地すると、すぐさま銃口をブーメランへと向ける。ぶれることなく、Uターンしてくるそれらを撃ちぬいた。
「この事態を突破するには、そうだ!まだあれがある。」
俺は咄嗟にその場から駆け出した。目当ての場所は、破壊されたメイの体。
「ちょっと借りるぞ。」
彼女が隠し持っていた最後のダイナマイト。これならいける。
「小癪な真似をしてくれたな。」
煙幕からでてきたノクシエル。彼めがけてダイナマイトを投げつけた。
「うん、何だ?まさか!」
「そのまさかだよ。」
彼が驚愕の表情を浮かべたその時。耳をつんざくような轟音とともに、爆風が吹き付けた。
「これが……大量破壊兵器、ダイナマイトだというのか!」
ノクシエルは咄嗟に後ろに飛びのいたが、既に遅い。爆風に巻き込まれ、その勢いで吹き飛ばされる。魔族の中でもかなりの上澄みなだけあって、これでもノクシエルは死なない。だが、壁に叩きつけられて、うなだれる彼はもはや戦える状態ではなかった。
「くっ、油断した。」
「とどめだ、ノクシエル!」
俺は、ノクシエルに向け銃口を向けた。もはや動くこともままならない相手。引き金は引かれ、勝負は決した……かに見えた。だが、ビームが届くことはない。
「弾かれた!?」
俺とノクシエルの間に、防御魔術による膜が生成。ビームを弾いてしまう。それは俺の前に立ちはだかった新手によるものだった。




