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召喚3日目1:四天王ノクシエル

「また、懐かしい夢を見たな。全く、いつまで俺は思い出に囚われているんだか。」


 夢の中で思い出した内容は、客観的にはほとんど苦労譚といって差し支えない。それでも、今では楽しい思い出になってしまうのだから、人間とはわからない。


「しかしメイの奴、初めて会ったときは清楚で気の利くメイドだと思ったのに、いつからこんな毒舌マシンに。」


「おや、今でも私は気の利くメイドですが何か?」


「うおお、いたの?」 


 突然、顔をぴょこっと出してきたメイ。昨日、あの後俺とメイは一言も会話していない。少々気まずいのだが、その様子はいつもと変わらなかった。


「えっと、おはよう……」


「昨日のことを気にしておられるのですか?でしたら、不要です。私は、アンドロイドです。それにあの場では直太様の判断が賢明だと考えます。」


「まあそりゃそうか。そうだな、ありがとう。」


「ところでその仮面は一体?」


 メイは、俺の手に持つ白いキツネのお面を指さした。お祭りの屋台とかでよく売っているやつだ。


「ああこれか?ちょっと敵を威嚇するためにな。家から偶然持ってきたものだ。」


「というのは建前で、実際は出番のない直太様が少しでも目立とうというささやかなあがきです。」


「ち、ちげえし。」


 どこまでも人の心を読みやがって。ああそうだよ。あんまり出番がないから、変わった仮面でもつければちょっとは目立つかな~とか。


「さあ、直太様。気を引き締めてください。今日こそボス戦ですよ。」


「どうせ、お前が爆弾ぶっぱなして終わるんだろ。勝手にやってくれ。」


 張り切っているメイに対し、俺は投げやりに答えた。




 再び神殿に戻ってきた俺たち勇者パーティー。立ちはだかる門の前で進太朗君は頭をひねった。


「さて、どうしよう、この門。」


「俺たちが帰った後も色々やってみたんだろ?」


「ああ、駐在の騎士や魔術師たちが手を尽くしたようであるが。結果は伴わなかったようだ。」


 この世界の住人であるガルドさんが手を尽くしたと評すのだ。王国の技術を結集しても、この門を開けるのは相当難しいようだ。


「本当、どうしたもんかね……」


 俺はダメ元で、門の扉を押してみた。


「え?」


 すると扉はいとも簡単に開かれた。昨日は間違いなく、開かなかったはずなのに。


「これって、罠ですかね。」


「そうとしか考えられぬぞ。」


 二人の言う通り、これは罠だろう。門を閉ざして時間を稼ぐうちに罠の準備を整えていたと考えればつじつまが合う。


「どういたしましょう、直太様。」


 不安そうに尋ねるメイ。だが俺は、笑って見せた。


「心配はいらない。俺たちは勇者だ。どんな罠だろうと正面からぶっ潰す。」


 俺たちは恐る恐る、扉の中の暗闇を進む。すると突如、灯りがともり、このボス部屋の全貌が明らかになる。そこにいたのは、銀髪の男。笑みを浮かべたその口には、鋭い牙が光る。


「よく来たな、勇者一行よ。」


「おお!魔王軍四天王の1人、吸血鬼のノクシエルか。」


「ほう、私を知っているようだな、そこの冴えない男よ。」


「悪かったな、冴えてなくて……」


 メイの奴が横で笑ってやがる。どいつもこいつも俺をバカにしやがって。


 しかし、アストロピア王国戦記をプレイした身としては、少し違和感があった。


「妙だな、ノクシエルってもっと後に出てくるキャラだぞ。」


「確かに、召喚から3日目で四天王の一人と対峙とは、流石にペースが速すぎますね。」


 お・ま・え・が・い・う・な!メイがあんな無茶苦茶なことしなければ、1日でボス部屋までたどり着くわけねえだろ!殴り掛かりたい衝動を抑えて、視線を戻すと進太郎君が1歩前に出て聖剣をノクシエルに向けた。


「覚悟しろ、ノクシエル。どんな罠であろうとこの剣の勇者、太多進太郎には通用しない。」


「罠?なんのことだ。威勢はいいが、今回の私の目的は貴様ではない。」


「何?どういうことだ!」


 ノクシエルは、前に出ている進太郎君ではなく、奥にいた俺たちの方を指さした。


「今回の目的そこの冴えない男と緑髪の娘。この二人は未知の飛び道具や大量破壊兵器を持っている。」


「ゲッ、やべぇ……」


「未知数の相手に対して、神殿の者たちで対処するのは心もとない。そのため四天王である私直々に赴いたというわけだ。門を閉じていたのは私が来るまでの時間稼ぎだ。」


「なるほど……おい、やってくれたな、メイ。」


 俺は冷ややかな目で睨みつけた。未知の飛び道具に大量破壊兵器、思い当たる節しかない。メイは、青い顔をして俺から目をそらす。


「こいつ要するに、お前が銃やらダイナマイトを使ったから出現したんだよな。剣と魔法で戦っていれば、こんなことにはならなかったんだよな。」


「ご、誤算でした。効率を重視した結果、ゲームの流れを変えてしまうとは……」


「何てことしてくれるんじゃボケ!」


「いやん、か弱い乙女に乱暴しないで。」


「元特殊部隊所属24歳男性を羽交い絞めにした奴のどこがか弱いんじゃごらあ!」


 頭にきて、メイを締め上げにかかる。こいつは調子に乗りすぎなのだ。


「ふ、内輪もめとは無様なものだな。仲良く、あの世に送ってくれる。」


「まずい、あれは!」


 ノクシエルの手に光の球体が出現する。それはビームへと変化し、俺たちに向けて突き進んできた。ゲームで何度も苦しめられた、ノクシエルの瞬殺ビーム。食らえば命はない。


「させるか!」


 進太郎君とガルドさんが、咄嗟に防御魔術を展開。


 だが、その威力は凄まじく、勢いを殺しきれていない。奮戦虚しく、二人は扉の向こうに吹き飛んでいった。


「進太郎君!ガルドさん!」


「あの程度の攻撃でやられる方ではありません。それより今は……」


「ああ、このノクシエルって輩を何とかしないとな。」


 俺はビームガンをノクシエルに向けた。彼は、先ほどの余裕と打って変わり、警戒の視線を向ける。


「それが、未知の兵器か。」


「怖いか?降参するなら今だぞ。」


「ほざくな。私は四天王の一人だ。どのような相手であろうと、降伏の選択肢はもたない。」


「直太様、その武器ではノクシエルには勝てません。」


「バカっ!どうしてそういうこと言うんだよ。ハッタリでも警戒させれば時間稼ぎにくらいなるだろ。」


「ほう、何だ。無駄に警戒するだけ損だったか。」


「あ~もう、馬鹿野郎。」


 ゲームでノクシエルと戦った際、攻略にかなり苦戦し、何度もやり直している。こいつと直接やり合って生き残れる可能性は薄かった。

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