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母の日サプライズプレゼント編

「母の日どうしようか?」

妹から聞かれ、わたしはすぐに思いついた。


「ホテルに泊まるのはどう?京都の。京都好きだし。」

「ありやね」

「ちょうど泊まりたいホテルがある」

「どこ?」

「京都のOMO。八坂神社の近くにあるところ」

「私も気になってた」

「いくらくらいなんだろう?」


ホテルのサイトで値段を確認。

3人で¥56000くらい。


(出せれる。)


私は今パートとして働いている。

月10万はいかないくらいだ。


妹は正社員として働いているが、1人暮らし。


お互い出せれる金額は決まっている。

ある程度お安い方がありがたい。



「朝食はどうする?」


このホテルに泊まることが決定。

あとは予約するだけ。

朝食もいくつかの種類があり、どれにするか悩む。

母親の好みも考えて、精進料理が食べられる朝ご飯にした。



○●○



「あった!」

ホテルの看板を見つけてホッとする。


以前、このホテルの前を通ったことがあったが、こんなにも奥の方にあった記憶がなく、通り過ぎたのではないかと不安になっているところだった。


写真を撮り、ホテルの暖簾をくぐる。

この暖簾をくぐることが夢だったので、触れられただけでも嬉しい。

感触を楽しみながら、暖簾の中へ。


もう一瞬で別世界に変わった。

先ほどまであんなにもたくさん人がいたのに、急に静かになる。

フロントも素敵だ。


チェックインを済ませ、ホテルの説明を受ける。

落ち着いた柔らかい口調で話してくださるので、まるで高級ホテルにでも泊まりに来たような気分になった。


一通りお話を聞いたら、門の前へ。

この門を潜り抜けれるのは一部の人のみ。

そう。

ルームキーを持った宿泊者のみだ。

そんな説明を受けると、嬉しくなる。


(これから私が通れるんだ)


ルームキーをかざし門が開く。

「ごゆっくりお過ごしください」

一礼をし、門をくぐりエレベータ前へと向かう。


エレベーター前も素敵だ。

提灯が飾られていて、京都を感じる。

お部屋が楽しみだ。



「うわー!広ー!」

お部屋に入った瞬間、思った以上に広くてテンションが上がった。

ベッドが3つ、キッチン付きで荷物も広げられると書いてあったが、こんなにも広いと思わなかった。


私は、お部屋に着いてすぐにやることがある。

撮影だ。

着いてすぐの綺麗なうちに撮影をしたいのだ。

お部屋全体を見た後、気に入った場所を撮影。

その後、ライトのスイッチをポチポチ押し、どこのライトなのか確認する。

これもすごく好き。

まさかの所が光ったり消えたりする。

それが終わったら、くつろぎタイム。

ベッドで寝っ転がったり、お湯を沸かしてお茶を飲んだりする。


今回は、大きなソファがあったので、ベッドではなくソファに寝っ転ぶ。

ふかふかで気持ちいい。


お茶を飲みながら、Googleマップを開く。

次の目的地への行き方を調べるためだ。


(ここから歩いて30分か・・・)


電車でも行けるが、30分くらいなら歩いていきたい。

母に伝えると、母も歩きたいようで同意してくれた。



祇園の大きい通りを抜け、細い道を歩く。

大きい通りは人も多いし、信号も多い。

脇道にそれる方が歩きやすいのだ。

少し怪しいお店も多く、1人じゃなくてよかったと思った。

通り一本入っただけで、こんなお店もあるのか。


見たことのある交差点にさしかかった。

以前もこの辺りを歩いたことがあるらしい。


(あの時だろうな)


京都の南座で劇を見た後、この辺りを歩いたのを思い出した。


京都にはこの頃よく来る。

昨年の秋には紅葉を見に来たし、今年の春には桜も見に来た。

観光客が多いという理由で避けてきたが、気候変動で昨年は12月でも紅葉が見れた。

インスタやXでそのことを知り、行くしかないと思った。

圧倒的に11月に紅葉を見に来る観光客の方が多く、12月は少ないと思ったからだ。


これが正解だった。


思った以上に観光客は少なく、のんびりできた。

しかも、紅葉もちょうど見頃。

いい時期に来れた。


それから京都には何度か足を運んでいる。

今まで我慢していた分、行きたいところがたくさんある。

朝早くから京都に行けば、観光客も少ないことがだんだん分かってきた。

大阪からも行きやすく、日帰りで帰ってこれるというのも京都に何度も足を運ぶ理由になっている。



ホテルから歩くこと3、40分。

目的のお店に着いた。

外からでも、たくさんの扇子が置いてあるのが見える。

引き戸を開け、お店の中へ入る。


すぐに目的のものを見つけた。

『薬屋のひとりごと』とのコラボ扇子だ。

触ってもいいとのことで、扇子の裏表を確認する。


(猫猫と壬氏さまだ)


表は猫猫、裏は壬氏さまをイメージしたデザインが施されている。

光にあてると裏が透けて見える。

これで¥5500は安い。


ほかの扇子も見て回る。

1番高いので1万いかないくらいだ。


ふと、ひとつの扇子に目がいく。

それは、桜の模様が入っていて、一部透けている箇所がある。

折りたたんだ時の色合いも素敵だ。

目的はコラボ扇子だったが、他に気に入る扇子があればそちらを買おうと思っていた。

そう決めていたものの・・・やっぱり悩む。


(2つ買うか?)


悩むということはいらないということだと考え、何も買わずお店を出た。



扇子のお店から歩くこと10分ほど。

違うお店の前に来た。

扉を開け店内に入る。


ここでもすぐ目的のものを見つけた。

『薬屋のひとりごと』の絵が描かれたお菓子だ。

まだたくさん積まれているので在庫に余裕がありそうだ。


店内で飲食もできるということで、コラボしているスープとデザートをいただく。


こうしているとふと過去の自分を思い出す。

アニメとのコラボを楽しんでいる人を見ると、すごいなぁ・・・と思っていた。

若干、引いていた部分もあった。

だけど、いざ自分がそれを楽しんでいると思うと、周りは冷たい目で私を見ているのだろうかと思った。


だけど、家族全員『薬屋のひとりごと』が好きで、私のことを引いたりしていない。

むしろ、自分たちも楽しんでいる。


(いい家族だ)


私も楽しんでいる。

それでいいじゃないかと思った。



ご飯を食べた後、コラボのお菓子を手に持ってレジに並んだ。

2種類のパッケージがあり、中身は一緒。

入っている個数が違うだけ。

それでも迷わず2種類とも買った。

どっちも欲しかったからだ。

これぐらい軽い気持ちでお買い物ができると、心も気持ちがいい。



その後、仕事帰りに京都にかけつけた妹と晩御飯を食べ、ホテルへ戻った。



○●○



「失礼します」

ホテルのスタッフさんが、お部屋に朝食を持ってきてくれた。

わざわざ朝食会場に行かなくていいので、楽でよかった。


朝ご飯は、精進料理だ。

京都の味が好きな母は、喜びながら食べている。


(よかった)


母の日のプレゼントとして大成功である。


チェックアウトは11時と遅め。


母はおいしい朝ご飯を食べて幸せなのか、また眠ってしまった。


昨日の夜にも思ったが、この部屋には時計がない。

窓もない。

異空間を作るためか。


時間はスマホで確認していた。

今何時だろう?と時間を確認していると、ふと疑問に思った。

どれほど時間によって行動が決められているんだろうと。


お風呂に入る時間、晩御飯を食べる時間、寝る時間。


この時間までにこれをしときたいというのが私にはあるので、夜は時間によってある程度行動が決まっている。

時計がないだけで、その使命のようなものから解放されたような気がした。


チェックアウトの15分前に母を起こす。

急いで支度をし、フロントへ。

なんとか間に合った。



四条駅から歩いて10分ほど。

再び、昨日の扇子屋さんにやってきた。

妹が行きたいと言ったからだ。

かくいう私も、もう一度行きたかったのだが。


引き戸を開け店内へ。

迷いなく、『薬屋のひとりごと』のコラボ扇子の前へ行く。


(さぁ、どうしようか)


もう一度、手に取ってみる。

桜の扇子も見に行ってみる。

店内もぐるりと回ってみる。

また、コラボ扇子を見てみる。


迷いはあるものの、ひとつ昨日とは違うことがある。

桜の扇子を見ても昨日ほどのトキメキはなかった。

決定だ。


「猫猫と壬氏さまのにする」


不思議なものだ。

昨日はあんなに悩んでいたのに。



帰りの電車はプレミアムカーに乗った。

追加料金分は母が出してくれた。

ひとり旅だとやらないことだ。

他の人と一緒に旅をすると、普段しないこともできたりする。

こういう旅もいい。

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