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リクエスト②

宜しくお願いします。

 「はぁ……疲れたぁ……」

 時刻は夕暮れ時。茜色に染まる空の下を一人の男子高校生が歩いていた。


 彼の名は"八神 蓮"。"私立桜学園"に在籍する高校二年生である。

 容姿は黒い癖っ毛の髪に三白眼が特徴であり平凡な体つき。ちょっと人相の悪いモブ顔とは彼の様な顔であろう。


 そんな彼は図書委員に所属していて、その日は彼のクラスが放課後当番する日だったので、帰りが遅くなった。


 そんな彼が家に向かっていると途中にある公園に目が止まった。いや正しくはそのブランコに座る人物に目が向いていた。


 そこに座るのは一人の少女である。


 黒いストレートのサラサラとしたロングヘアに小さい顔。クリクリとした黒い大きな瞳が特徴の清純派美少女。

 スタイルも良くて華奢な体をしている。その服装は黒のセーラー服服に灰色のカーディガンを合わせた服装。


 桜学園の女子の制服はブレザーなので違う学校の様である。

 少女は何やら悲しそうな顔で俯いて座り込んでしまっている。


 時間も夕暮れ時。人も少なくなるこの時間に若い女の子一人は危険である。それに何やら落ち込んでいる様子に蓮は公園に足を踏み入れて少女に声を掛けた。


 「あのぉ。そろそろ暗くなるから危ないよ?」

 そう話しかけると少女はピクリと肩を震わせて目を丸くして蓮に視線を向けた。


 「あ! す……すみません……。帰ります」

 少女は少し泣きそうな顔で去ろうとするが蓮はその手首を掴んだ。

 「待って待って! 君何でそんな辛そうな顔してんの? 何かあったの?」

 「え……」

 「あ。ごめんねいきなり手首掴んで。いやこんな遅い時間に女の子が一人でいるし、なんか泣きそうな顔してるから。

 良かったら話聞くよ?」


 と蓮が優しく説得すると少女はプルプル震え出し、いきなりうわぁぁん! と泣き出した。

 「じづはぁ! 好きな人にぃ……ぎらわれだんですぅ!」

 と大泣きし始めた。


 話を聞くとさっき言ってたセリフは

 『実は。好きな人に嫌われたんです』である。


 少女の名前は"神崎 瑞希"。桜学園の近くにある"私立紅葉学園"の高校二年の女子生徒である。

 そんな彼女には幼馴染がいてその人の名前が"明智 京介"という紅葉学園に通う二年の男子生徒。


 神崎の言う好きな人こそがこの明智なのである。

 神崎の様な美少女ならば堕とせそうだと正直蓮は思っていたのだが、どうやら神崎の性格が少し癖が強いらしく。色々やらかしてきたそうである。


 「えっと……つまり今回。その明智君が他の女子と仲良くしてるのが面白くなくて、"自分以外の女の子と喋るな"って怒鳴ってそれに対して明智君がキレたと」

 「はい……。彼が他の女性と仲良くすると許せなくてつい……。はぁあのセリフ言ったのもうかれこれ十回行ったか行かないかぐらいかも」


 これに蓮は驚愕の目で見始めた。

 「待て待て待て! 幾ら何でも多いよ! えっとどころへんのラインから許せないの?」

 「本当は目も合わせて欲しくないし同じ空間にいて欲しくないですけどそうもいかないので一言でも挨拶したら許せなくなるんです」

 「うわぁ……」


 蓮は完全に引いていた。

 「その……京ちゃん。とっても優しくて普段私に怒ったりしないんです。私が何でもお願いすると叶えてくれる。そんな彼。

 そんな優しい彼を前にすると私……どうしてもうまく話せなくてついひどい事言っちゃって……。

 何か恥ずかしくなるというか……」


 と神崎は真っ赤な顔で顔を手のひらで隠した。中々可愛い仕草。蓮は取り敢えず話をゆっくり聞くために彼女の隣のブランコに腰掛けた。

 「成程ねぇ。例えばどんなお願い?」

 「はい。例えば私が人気店のクレープが食べたいって言うと買ってきてくれるんです。他にも私がふとあれ欲しいって言うと買ってきてくれるし……。

 けど私あの時もひどい事いってしまったんです」

 

 「どんな?」

 「こんなお使い程度子供でもできるんだからドヤ顔やめて。キモいって……」

 「うわぁ……最悪」

 「うう。やっぱりそうなんですね」


 更に神崎は今までのことを教えてくれた。

 例えば本当はデートに誘いたいのに

 『ナンパ避けぐらいになら役立てるでしょ? 私とデートできることに感謝しなさいよ』

 と言ってしまったとか。


 いざナンパを撃退してくれても感謝したいのに

 『ふん。私アンタみたいな底辺男が彼氏だと思われるので苦痛なんだけど』

 と言い出したりとひどい事を言いまくっていた。


 素直になれない性格もそうだが、何をしても怒らない彼なので、ここまでしても彼は私を受け入れてくれてるという快感に酔いしれてしまったのも原因である。


 まぁ甘やかす明智も悪いしだからと言って暴言を吐く神崎も悪いので結局両者悪いことになる。


 「私小学生の低学年ぐらいまでは普通に京ちゃんと仲良しだったんですけど……クラスの男の子に彼との仲を揶揄われて」

 「嗚呼あるあるだなぁ」

 「京ちゃんといるのが恥ずかしく感じる様になったんです。

 けど……それでも私京ちゃんと離れたくなくて……揶揄われない形で京ちゃんを繋ぎ止めようとした結果。こんな事に……最低です私」


 とまた俯いて落ち込む神崎。反省はしている様である。

 「けど暴言を吐くのはダメだって言うのは分かるだろ?」

 「はい」

 「だろ? どってもしその明智君に同じ様な事言われたら「嫌です! そんなの!」だろ? でも君はそれを明智君にしてるの。

 直していかないと明智君に嫌われるよ?」


 その言葉に青くなる神崎。自分が嫌な事を相手にしてしまっているのだ。それは本人も理解しているらしい。


 「まぁなんだ? まず今からでも遅くないから謝ろう。そして態度ぐらいは変えないと」

 「けど……」

 「けどじゃない。いいのか? このままで」

 「よくないです……けどちゃんと素直に言える自信が……」


 とまた目に涙を溜め始める彼女。これには蓮も頭を抱え始めた。あれから数十分話して既に外は暗くなっている。

 このままずっといる訳にいかない。


 「仕方ない。神崎さん俺家まで送るから帰ろう? もう夜だよ?」

 「え?! あ本当だ。すみません……こんな遅くまで」

 「いやいいよ。それより今回の問題は結構やばい。暴言吐きまくればいつか相手は愛想尽かす。限界があるんだ」

 「……そうですよね。私が彼を追い詰めているのならちゃんと謝らないと」

 「そ! もし言えそうにないなら明智君の事知らない神崎さんだけの知り合いに相談してついてきてもらうってのも手だよ。

 俺は……まぁ男が一緒に行くと火に油注ぐかもだし。……ま! 俺が言えるのはこれくらい。

 そろそろ帰ろう」


 そう言って蓮は神崎を家まで送る事にした。



 ◇



 道中……

 「……八神君って優しいんだね。見ず知らずの私に声をかけてくれるんだもん」

 「そう? だって辛そうだったから」

 と和気藹々と話す。どうやら明智だけに酷い態度をとりがちの様である。


 しかし思考回路の隅っこにある思惑も浮かんだ。仮に今回ので明智に振られたらもしかしたら神崎が自分に振り向くのでは? という思惑。

 中々甘い考えだが矢張り相手は美少女である。一緒にいればそんな妄想もしてしまう。だって男の子なんだもの。


 「……何でかなぁ……他の人になら普通に喋れるのに……京ちゃんにだけあんな……」

 「それだね明智君が神崎さんの中で身近だったんだよ。だから大切さを忘れてたんじゃない? だから今がチャンスだったのかも」

 「チャンス?」

 「うん。明智君が離れている今だからわかったんじゃない。明智君が大切だって事。それがわかった神崎さんならきっと大丈夫だよ!」

 

 蓮は安心させる様に神崎ににっと笑みを見せる。それに神崎もつられてふにゃと微笑んでいた。そんな時である。


 「瑞樹!」

 

 男性の声が暗い住宅街に響く。その声に神崎は泣きそうな顔になり……

 「京……ちゃん」

 と呟いた。


 現れたのは、短い黒髪に垂れ目。黒い瞳が特徴な優しそうな少年。制服は学ラン。こちらも紅葉学園の制服である。

 ちなみに桜は男女ともブレザーである。


 現れたモブ顔その2に蓮は目を丸くしている。

 「もしかして明智京介君?」

 声をかけると少年は頷いた。

 「そうだけど……君は?」

 「俺は八神蓮。桜学園の生徒なんだ」

 「そうなんだ! えと……みず……じゃなくて神崎さんが何か?」


 神崎さん。その他人行儀にも聞こえる呼び方に神崎はピクリと震え……

 「何しにきたの?」

 「いやその。暗くなっても帰ってこないから……心配で」

 「アンタに心配されることなんて何もないわよ! うざいのよいつもいつも保護者ぶらないで!」


 その神崎のセリフに蓮は口をポカーンと開けた。神崎はフーフーと息を荒げるがすぐに顔を青くする。

 すると明智も悲しそうな顔をして……


 「そうかよ……分かった……」

 そう言って明智は名残惜しそうに帰る。


 モゴモゴしてるこの二人。その煩わしさに間に挟まれた蓮の中で何かが切れた。


 「だぁぁぁあ! テメェら一回落ち着け!」

 「「!?」」

 いきなり叫ぶ蓮に二人は目を丸くする。蓮はガシガシと頭を掻き……


 「まず神崎さん? さっき俺と話していた内容。まるっと忘れてるよな?」

 「いやその……本番になると」

 「本番もクソもねぇんだよ! 今はいいけど大人になっても明智君が侮辱罪で訴えたら負けるからな!?」

 「ぶ……ぶじょ……」


 叱られた神崎はシュンと小さくなる。すると明智がフォローを入れようとするがそれをすかさず蓮が制止し。

 「お前も! 何でフォローすんの?! プライドないの?! 今はお前だけに神崎さんこんな態度だけど。もし今後他の奴に同じことをしたらどうするの!」

 「い……いや瑞樹はそんなことする子では」

 「んなもんわかんねぇだろうが! 本当に大切に思ってんなら注意しろよ! 甘やかす=大切ではないんだよ!」


 ハァハァと息を荒くする蓮。そんな蓮の言葉に二人は黙り込んだ。

 すると先に明智が……

 「そうだよな……その瑞樹。前々から思ってたけどその……人の傷つくことを言うのはよくない。本当の瑞樹はいい奴なのに誤解されちゃうのは嫌だ……。

 それに女の子や他の人と喋るなは無理だよ。

 社会に出たらそんなの通用しないんだ。俺だって社会に出て働かなきゃいけない意思があるんだ。


 だからその……俺の意思も尊重してほしい。

 勿論瑞樹の意思も尊重する。それと………さっきは頭ごなしに怒ってごめん」


 矢張り指摘の仕方も甘くて優しい明智に蓮は頭を抱える。しかし神崎には効果覿面であり、彼女もウルウルの涙目になり顔を真っ赤にさせて首を横に振る。

 「違う……謝るのは私の方なの。傷ついてるなんて考えてなかった。当たり前のことなのに……私最低だよ。

 今回で分かったの。京ちゃんが大切な人だって理解できたの。


 京ちゃん。今までごめんね。これからはちゃんと京ちゃんの意思を尊重する。だから嫌いにならないで……」


 大泣きする神崎を明智は優しく抱きしめていた。何なら二人の周辺にあまずっまい空気が漂い♡が散らばっている様にすら見える。


 それを見守ると蓮はゲンナリして……

 「俺先帰るから」

 「瑞樹……」

 「京ちゃん」


 しかし二人の世界にいる幼馴染コンビ。蓮はハァとため息を吐き……。

 「……俺も可愛い幼馴染か恋人ほしい……」


 と拗ねた顔で一足先に帰っていく。ちなみに家に帰るのが遅いからと親に怒られたのは言うまでもなく。巻き込んできたバカっプルに内心キレていたとかいないとか。

ご拝読有難うございました。

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