8/10
かげり
「こんばんは、遅くに申し訳ありません。」
時刻は午後10時をまわっていた。
紀子さんが、玄関を開けるとそこには、若い男が立っていた。
「あなた・・・確か綾さんよね?」
黒髪に、知的な眼。整った顔。高い背丈。
「はい、そうです。あの、お尋ねしたいことがありまして・・・
こちらに桂城碧は来ていませんか?」
「はい、来ていますが。」
紀子さんは、戸惑った顔をして
「今日は、碧ちゃんここに泊まるって・・・電話いきませんでしたか?」
「え?そうだったのですか?家にいなくて心配して探してたんですよ」
綾は微笑んだ。
「あら、申し訳ありません。きっと電話するの忘れていたんでしょう」紀子さんも笑った。
2人の笑顔はとても自然だった・・・・
「分かりました。碧をよろしくお願いします。」
綾はスッと頭を下げて玄関のドアを静かに閉めた。