月夜
「久しぶりねぇ、碧ちゃんが家に泊まりに来てくれるなんてねぇ」
紀子さんは、嬉しそうに料理を作っていた。
忙しそうに、テーブルに料理を並べる。
「あの・・・お構いなく・・」
碧は少しうつむいて言った。
「なぁにいってんのよ!!今日はごちそうたくさん作るんだからぁ」
「おい、母さん鍋、鍋」
「あぁ、ちょっと裕真止めて」
裕真は急いで火を止めた。
「何やってんだよ、たくよぉ」
「そんなに言わないでよ、母さんだって碧ちゃんが来てくれて嬉しいの」
紀子さんはワシワシと裕真の頭を撫でた。
「碧、何か飲むか?オレンジジュースとかあるよ。
あぁ、母さんが昨日ケーキ作ったんだけど食うか?」
裕真が隣に座った。
「いいよ・・何も要らない」
裕真は碧の頭を強く撫でながら
「遠慮すんなよなぁ」
裕真が笑った。太陽のような男の子。
いつも周りには人がいて、みんなが回りに集まってくる。
みんなが彼を必要とする。
太陽を必要とするみたいに・・・
「よぁし、出来たわよぉ!尚彦さんは、まだだけど
先に食べちゃいましょう!」
紀子さんの声が響いた。
テーブルにはたくさんの料理が並んだ。
「碧ちゃん、遠慮なんかいらないのよ。」
紀子さんは微笑んで料理を素早く盛りつけ
碧に渡した。
「美味しかっただろ?母さんの料理は」
裕真はイチゴの入った器とミルクをテーブルに置いた。
「お風呂改築したんだね・・・」
「あぁ、4年くらい前にな」
碧は、紀子さんの服のを着ていた。
「風呂上がりはイチゴかアイスだよな」
裕真は、嬉しそうにイチゴをより分けた。
「・・・・・・そっか」
碧はイチゴを口に入れた。
「大丈夫か?」
裕真の口調が少し静かになった。
「・・・・・・」
「今日楽しかったか?」
裕真は、イチゴを一つ口に入れた。
「うん、昔に戻ったみたいだった・・・」
静かな口調だった。
外には、綺麗な月が出ていた。
碧は、月のような少女だった。
一人離れ、孤独な存在。
でも、とても美しく人を引きつける。
でも、誰かを受け入れることはない・・・・
きっとない・・・・