光の中
桂城碧とは、小学校の頃からの幼なじみだ。
昔から、危なっかしくてほっとけない奴だった。
只でさえ、友達が少ないようだし・・・・
支えてやりたいと思っていた。
こういうのを『好き』という感情だと気づいたのは最近になってからだった。
この頃、碧の様子がおかしかった。
いつも、暗い顔をしている。
前から、本好きだが放課後や昼休みなど図書室にこもるようになった。
「おい、碧聞いてんのかよ?」
学校の校門で、大声が響いた。
碧は校門の大きな木の下にいた。
「なんで、図書室で待ってないんだよ・・・
帰ったのかと思ったぜ」
息を切らしながら裕真は碧に近づいていった。
「・・・・・・・」
碧は何も言わずに歩き出した。
「おいおい、ちょっと待てよ」
裕真は碧の鞄を引っ張った。
「・・・・・さわらないで・・」
裕真が碧の顔を見たが、碧は下を向いており
どんな表情をしているのか分からなかった。
「わりぃ・・・よし。帰るぞ」
裕真はまた大声を出し、碧の手をつかんだ。
「ちょ・・・と・・・」
周りの生徒はガヤガヤしていた。
「なんで、手を離してくれないの?」
学校を出てしばらくしたあたりでも、裕真は碧の手を離さなかった。
「まぁいいだろう?昔よくつないでたし」
裕真はふざけながら言った。
「・・・・・・・」
碧は鞄から少し大きめな飴玉を出して口に入れた。
裕真は少し驚いた顔をして
「なんだよ、まだ食ってんのかよ、それ」
その飴を小さい時から碧は食べていたようだ。
「うん?食べる?」
裕真に可愛らしい包みの飴玉を差し出した。
「おぉ」
裕真は少し嬉しそうに飴玉を口に入れた。
飴玉はとても甘くイチゴ味だった。
「なぁ、碧。お前どうしたんだ。綾さんと上手くいってないのか?」
裕真は空を見ながら言った。
空はまだ明るかった。烏が数羽飛んでいた。
「なんでそんな事聞くの?」
碧は道に捨ててあるタバコを見ながら・・・・・
下を見ながら答えた。
「・・・学校じゃイジメとかされてないだろう?
お前、習い物とかもしてなかったし、だから、残るは家しかないだろ」
裕真は碧を見たが、碧は顔を下げたままだった。
「怖いな・・・・裕真は私を監視でもしてるの?」
碧の口調は少しふざけてはいたが、声は震えていた。
「違げぇよ・・・おっおい、どうした」
碧は下を向いて泣きだした。
「落ち着いたか?ココア好きだろ?」
公園のベンチに碧は座っていた。
裕真がココアの缶を碧の頬に付けた。
「ごめ・・・ん・・・」
碧の目は腫れていた。
そのくらい泣いたのだろう・・・・
「なぁ、今日は家こないか?か、母さんも久しぶりに
会いたがってるしさぁ・・・・」
裕真は碧の隣に座って、コーヒーの缶を開けた。
「・・・・・もう帰るよ・・・・ありがと」
碧が立とうとした。
「おい、一人で抱え込むなよ。俺を頼ってくれよ・・・」
裕真は碧の腕をつかんでいた。
「何があったんだよ。なんで泣くようなことあんのに黙ってんだよ」
碧は、裕真の手を振り払ってまた、ベンチに腰をかけた。
「裕真には関係ないよ・・・・」
碧は制服のポケットに手を入れた。
「俺はお前を守ってやりたいんだ・・・・
ほっとけないというか・・・・・
これは自分のエゴなのかもしれない・・・・
でも、お前の力になってやりたいと思う
本気なんだ」
碧は空を見上げた。
もう、辺りは薄暗かった。