太陽
「おい、さっきから呼んでんだろ。おい、桂城碧」
図書室で、こんな大声を出して良いのだろうか?という大声と同時に、
黒崎裕真が碧の肩を叩いた。
碧は驚いた様子で、本を置きながら振り返った。
「たく、何でこんなところにいんだよ。今日おまえ日直だろうが」
裕真は日誌を本の上に置き、碧の隣に座った。
「なんだよ、言うことあんだろうが」
言い方はきついが声のトーンは優しかった。
「・・・・ありがとう」
「おぉ」
裕真は嬉しそうにわらった。
碧は下に置いていた鞄から筆入れを取り出し日誌を書き出した。裕真はじっと書くのを待っていた。
「なんで、隣に座ってるの?」
碧が書きながら訊いてきた
「ん?なんとなくかなぁ、生徒会とかめんどいしさぁ」
黒崎裕真は生徒会副会長をしていた。
仕事はきちんとしているらしい・・・・・のだが
碧は書き終わると立ち上がった。
「あぁ、俺が出してきてやるよ。本読んでんだろ?」
碧は座りながら、ペンをしまった。
「なぁ、今日何時くらいに帰んの?
一緒に帰んないか?」
碧は裕真の顔を見た。
「いいだろ?あ、いつも下校時刻までいるよな?待ってるよ」
「待ってなくていいよ。なんで裕真と一緒に帰らないといけないの?」
碧は、また本を開いて読み始めた。
裕真はしばらく何も言わなかったが、何かを決意したかのように、
「俺が碧と一緒に帰りたいからだ。お前この頃元気ないっていうかさぁ、なんかおかしいから。気になってな」
碧は、本を閉じ裕真を見た。
「・・・・・・ 」
裕真は困った顔をして頭をかいた。
「黙んなよ。照れんだろ」
碧は席を立ち上がった。
「おい、・・・・」
裕真が声をかけたが、碧は止まらず、本棚の奥に行ってしまった。
「どうしたんだよ、嫌ならイヤで・・・」
裕真が後を追うと、碧が本をもう一冊手に持っていた。
「もう、今日はもう帰る・・・から、これ借りてく・・・・」
碧がさっき読んでいた本の続きだった。
「なんだよ、それならそうと・・・」
ため息混じりで言いながら、
「ああ゛、日誌置いてくっからちょっと待ってろ」
慌てて図書室から走り出していった。