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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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朝の集合

 酔狂連の拠点を出て、再び車に乗り込む。

 来た時と同じく、緑川と仙崎は箒による飛行移動だった。

 ただその箒も、三和に手ずから調整して貰ったおかげで、拠点を出来た時よりもぐっと安定性が増している、といっていた。

 三和には他にも、譲って貰ったアイテムにいくつかの手を加えて貰っていた。

 他愛のない、ちょいとした改良なのだが、恭介らがやるのと三和が手がけるのとでは、効率がまるで違う。

 スクルを使うため、作業時間も、ほとんどあっという間だった。

 要望を聞いて、その場で手を加え、完成させる形だ。

 三和は固辞したが、その分の手数料も多めに渡しておいた。

 今後も世話になりそうな相手であったし、こんなことで引け目を作るのも馬鹿馬鹿しい。

 トライデントも魔法少女隊も、ポイントは余り気味であり、ポイントを支払うことで解決する問題なら、出来るだけ支払って済ませる方針だった。


 市街地の中心部に近づくにつれ、人の姿を見かける頻度が増えてきた。

 恭介たちが乗る自家用車が珍しいのか、皆、目を丸くしてこちらを見返している。

 大半のプレイヤーたちにとっては、車など、まだまだ高価すぎて手が出ない状態なのだろうな。

 と、恭介は推測する。

 単に、こちらの世界では見かける機会がないので、物珍しかっただけかも知れないが。

 市街中心部の円形広場に出ると、五人は車を降りて、赤瀬はそれまで乗っていた車を倉庫の中に収納する。

 そして、五人で連れ立って、生徒会執務室がある大きな建物へと向かった。

 だいぶ、人目を集めている気がする。

 と、恭介は思う。

 まだ朝早い時間であったが、広場には、かなりの人数が行き交っていた。

 大半は、制服か学校指定のジャージ姿で、つまりはその服装がマーケット内で安価に売られているので、普段着として使っている者が多いのだろう。

 たまに個性的な格好をしている者もみかけたが、そのほとんどが武装した者だった。

 こちらは、戦闘職で、普段からそうした格好をしているのだと、容易に推測がつく。

 対して五人の姿は、カラフルなつなぎのジャンプスーツの上にマント様の黒衣を纏っている者が二名、カーゴパンツにTシャツ、ジャケット姿の男子が二名、陸上部のセパレートユニフォームの上に、制服の上着を羽織った者一名。

 この組み合わせは、かなり目立つらしい。

 五人は構わず、生徒会執務室のある建物に入る。

 巨大で分厚い扉は、これまでは閉まっていたはずだが、今は開け放たれて多くの人々が好きに出入りしていた。

 そのまま中に入ると、かなり広く天井が高いフロアにある。

 普段はがらんとしていたそこは、今では多くの人が居て、あちこちに数名ずつ集まってなにやら相談している様子だった。


「ああ、どうも。

 ご無沙汰しております」

 目聡くこちらの姿を見つけ、制服姿の女子がこちらに近寄り、声をかけてくれる。

「お早いおつきですね。

 まだ全員集まっていませんが、会長と到着した皆さんはあちらにいらっしゃいます」

 と、フロアの片隅を示す。

 ユニークジョブ聖女の、結城紬だった。

 先日、殲滅戦を演じてダントツ一位のプレイヤーになったはずだが、態度は以前とまったく変わらない。

 そのジョブに相応しく、増長などとは無縁の正確なのだろう。

 軽く挨拶を交わしたあと、五人は結城紬に案内された場所へと向かう。

 ここで、メンバーのレベルが上位に相当する戦闘職パーティが集められ、生徒会と含めて今日の対策を相談する、という。

 先日の生徒会総会のようなものだが、今回はメンバーを絞っており、まあ、実質的には、作戦会議になるのだろう。

 恭介たちが受け取った警告は当然、他のプレイヤーたちにも共有されているわけであり、各自の判断でバラバラに動くよりは、事前になんらかの申し合わせをしておいた方がいい。

 トライデントと魔法少女隊がこの手の会合に参加するのは、これがはじめてだった。


「おお、来た来た」

 その一画に近づくと、親しげに声をかけてきた男子が居た。

「トライデントと魔法少女隊、ナンバーワンとナンバーツーパティのお出ましだ」

 その声に反応してか、周囲の人間の注意がこちらに集中する。

「やあ、どうも」

 これ、おれが相手をするの?

 内心でそんなことを思いつつ、恭介が答える。

「その、ナンバーワンとナンバーツーです。

 失礼ですが、あなたは?」

「ああ、すまん。

 坂又どすこいズの坂又という」

 体格のいい男子はそういって、軽く一礼をした。

「あんた方は初日以来、姿を見せなかったから。

 こっちでは、いろいろな憶測を生んでいるんだ」

 レアキャラ扱いなのかな、と、恭介は思う。

 振り返ってみれば、初日以来、この市街地には寄りついていなかった。

 いや、魔法少女隊の方は、一度、結城姉弟を送ってここに来ていたか。

 いずれにせよ、

「市街地内では滅多に見かけない」

 というのは、紛れもなく事実になる。


「あんまりこちらまで出てこないのは事実ですが、たいした理由じゃありませんよ」

 恭介は、そう返答しておく。

「あんまり詮索するのもなんだが、今までなにをしていたんだ?」

「おもに、家づくりですかね」

 嘘ではない。

 その他に、神様っぽいのや精霊っぽいのとのやり取りや、スキルの教授法や上位職への転職方法を発見して試したり、など、いろいろやっているわけだが、そこまで説明すると面倒臭いことになりそうなので、ここではあえて省略する。

「家かあ」

 坂又は感じ入ったような表情になった。

「そら、長期的なことを考えたら、早めに対策しておいた方がいいよなあ。

 いや、あんたらほど最初から稼いでいたら、そういう思考になるのか」

 普通に、感心してくれている、らしい。

 どうやらこの坂又という男は、少なくとも恭介らに悪意はないようだった。


「おお、着いたか」

 小名木川会長がこちらの姿に気づき、手招きをしてくる。

「ちょっと、こっちに来てくれ。

 人が集まってくる前に、相談しておきたいことがある」

「会長が呼んでいますんで、失礼します」

「ああ、いってこい」

 坂又にそう声をかけてから、恭介たち五人は生徒会役員が固まっている場所まで移動した。

「会長、おはようございます」

「おお、おはよう」

 小名木川会長は、挙動のそこここにどこか疲れが滲んでいるように見えた。

 が、それでも気丈に挨拶を返す。

「朝から呼び立ててすまんな。

 で、これから本格的な会議になるわけだが、あんたら、あれからなにか変わりはないか?

 こちらが把握していない情報とかあったら、今のうちに吐いてくれないと今後に支障が出るんだけど」

 何度かやり取りをしているせいか、この会長も恭介たちを相手にする時は、かなりざっくばらんな態度になっている。

「なにかあったっけ?」

 恭介は振り返って、仲間たちの顔を見回した。

「あ、会長」

 遥が片手をあげていった。

「わたし、昨日、忍者への転職に成功しました」

「レベルアップして条件を満たしたか」

 小名木川会長は頷く。

「いずれはそうなだろうと聞いていたから、まあ予測の範囲内だな」

「会長」

 魔法少女隊の緑川が、同じように片手をあげて報告した。

「以前より開発していた、空飛ぶ箒が完成。

 航空戦力を入手した」

「はぁ?」

 小名木川会長はあんぐりと口を大開きにして、数秒、固まった。

「いや、それ、初耳なんだけど。

 航空戦力、だと?」

「最後の方は、酔狂連の三和氏にも手伝って貰った。

 改良の余地あれど、一応、実用レベルには仕上がっている」

「お、おう」

 小名木川会長は、気が抜けたような返事をした。

「そういう重要なことは、今度からもっと早めに教えてくれると、助かる」

「あ、会長」

 彼方が片手をあげて報告する。

「ぼくも、上位職に転職しました」

「いや、待て」

 小名木川会長は一度彼方を制して、大きく深呼吸をする。

「お前らからのこの手の報告、衝撃が大きいんでな。

 ちょっと落ち着いてから詳細を聞く。

 ……で、なんの上位職に転職したんだ?」

「陣地守護者、です」

「よし。

 予想通り、今までまるで聞いたことがないジョブだな」

 小名木川会長は、なぜか大きく頷いた。

「で、そのジョブの特徴は?」

「簡単にいうと、特定の場所を自分の陣地と認識し、その中に居る味方を全員、軽くバフかけることが可能になります」

「そういう便利なジョブに就いたら、さっさと報告せんか!」

 小名木川会長は立ちあがり、大きな声を出す。

「普段は神様だ精霊だと判断に困る報告ばかりしてくるくせに!

 そんなジョブがあるんなら、こちらの作戦も大きく変わるわ!」

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