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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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検分と検証

「ちっくしょーっ!」

 遥が、森の奥に向かって叫んでいる。

「なんで転職出来ないんだよー!」

「あれ、放っておいていいんですか?」

 青山は恭介に確認する。

「大丈夫でしょ」

 恭介は即答した。

「放置しておいても、別に害があるわけじゃないし」

 恭介としては、今はもっと優先して確認するべきことがある。

「野戦士と、狙撃手かあ」

 現在、恭介が転職可能な上位職ついて、である。


「野戦士」は、従来までの「器用さ」に加えて、レベルアップするたびに「体力」と「素早さ」のどちらかのパラメータがランダムであがる仕様だった。

 狩人のよさを引き継ぎつつ、弱点を若干補正するジョブ、といえる。

 ただ、戦士のジョブと比較すると「体力」の上昇率は緩く、攻撃を受けるタンク役に徹するほどに、タフでもない。

 ジョブ固有のスキルは「我慢」と「カウンター」。

「我慢」は、致命傷の攻撃を受けても、一度は延命するスキル。

「カウンター」は、攻撃を受けた際、一定の確率で自動反撃をするスキル。

 ゲーム的な発想からすると、どちらもタンク役の職業が持っていそうなスキルになる。

 つまりはこの野戦士というジョブは、「長距離攻撃も可能なタンク」という性質のジョブ、なのだろう。

 使いようによっては活用可能な場面もありそうだったが、正直なところ、「半端」な印象が拭えなかった。


 もう一方の「狙撃手」は、完全に狩人の延長というか正当発展版で、狩人と比べると「器用さ」の上昇率が倍近くになっている。

 さらに、「運」のパラメータまで、レベルアップごとにアップする仕様であるらしい。

 固有スキルは「命中補正」と「集中」。

「命中補正」は、使用者の意思によりオンオフの切り替えが出来ない、いわゆるパッシブスキルで、その名の通り、このジョブである限りは、攻撃が当たりやすくなる、というスキル。

「集中」は、攻撃前にこのスキルを使用すると、その一撃のみ攻撃力が微増する、というスキル。

 一見、欠点がないようにも思えるのだが、その実、「器用さ」と「運」以外の伸び率がほとんどなく、つまりは、狩人と同じく、力も素早さもノービス並み、防御面では紙装甲、という、かなり長距離射撃に特化した仕様になっている。

 つまりは、攻撃を受けると、極端に弱い。

 避けることも、受け止めることも出来ない。


「まあ、この二つのうちどちらかだったら」

 狙撃手だよなあ。

 と、恭介は思う。

 自分の体で攻撃を受ける趣味がないので、野戦士は、あまり食指は動かなかった。

 野戦士ジョブの仕様は、ある程度攻撃を受けることが前提になっている、ように思えた。

 それに狙撃手は、「打たれ弱さ」という明確な欠点があるにも関わらず、「運」が伸びるという、他のジョブにはない特徴がある。

 初日にヘルプ内の関連情報を調べた彼方は、

「運というパラメータが伸びる、と明確に説明されたジョブがない」

 と結論し、恭介と遥にも、そう説明している。

「運は、ジョブごとに固定されていて、あとは、アイテムなどで修正するパラメータなのではないか」

 と、その時点での考察もつけ加えていた。

 つまりは、「運」をあげることが可能なジョブは、極めて珍しい。

 この「運」をあげると、実際にはどうなるのか?

「実地に試してみるしかないよなあ」

 というのが、恭介の結論になる。


 遥が解放した「忍者」と「くノ一」は、それぞれ斥候直系の上位強化版になる。

 両者ともに、「素早さ」、「力」のパラメータがレベルアップするたびにあがる仕様だ。

 両者の大きな違いは、ジョブ固有スキルにある。

「忍者」が暗視と忍術、「くノ一」は誘惑と房中術。

 スキルの効果はそれぞれの語感から受ける印象そのままで、遥にいわせれば、

「忍者が戦闘面の強化版、くノ一はエロ方面の強化版だね」

 ということになる。

 基本性能的でいえば、両者ともに「レベルが上がるほど、クリティカルが出やすくなる」という特性があり、斥候、狩人、狙撃手と同様、「紙装甲である」、という欠点も共有していた。

 いずれにせよ、今の遥は「転職する資格」は得たが、「転職可能な基準」は満たしていない、という半端な立場になり、それが先ほどから無闇に騒いで憂さを晴らす、という行動の原因になっている。


『ジョブ「狙撃手」に転職します。

 よろしいですか?

  YES/NO』


 表示の「YES」部分をタップし、恭介のジョブはあっさり「狙撃手」へと変更した。

 なにか不都合があれば別のジョブに切り替えるだけのこと、だった。

 現行のシステムは、ジョブの変更に関する制約やペナルティが極端に乏しく、いつでも切り替え可能になっている。

 極めて自由度が高い。

 というより、高過ぎるくらいだった。


「斥候のスキルは、どうですか?」

「マップは視覚的な情報だけど、察知のスキルはちょっと漠然としているかなあ」

 青山の問いを受けて、恭介はそう答えた。

「インターフェースの仕様が、かなり違うというか。

 察知は、方角とか距離とか、数字や視覚像ではなく、もっと不確かな感覚として伝わってくる感じ。

 あっちの方角から強い、あるいは弱い敵が来る、もうかなり近い。

 みたいな。

 ごめん。

 なんかうまく言語化出来ない」

「直感、みたいなものですか?」

「うーん。

 そうなる、のかなあ」

 恭介は首を傾げる。

「ただこれ、緊急時には、かなり頼りになるスキルだと思う。

 とりあえず、危ないと感じたら、その方角から身を躱せばいいわけだから」

 欠点としては、このスキル、かなり「うるさい」。

 拾う情報の量が多すぎて、慣れないうちは普通にしているだけで気疲れしそう。

 視覚情報のように、「適当に無視する」というのに、どうやらコツが必要なようだった。

 これについては、このスキルの先輩である遥から、うまく使う方法などをあとで教えて貰うしかない。


 効能はともかく、性能を比較すると、教授システムでおぼえたスキルよりも、本来の、天然のジョブ固有スキルの方が、性能面では優秀なようだ。

 たとえば、察知だと、遥の方が恭介のものよりも、かなり遠い範囲までの情報を拾えるらしい。

 教授システムとは、ジョブ固有スキルを単純にコピーするのではなく、少し劣化したコピーをおぼえることが出来る、代物なのだろう。

 まあ、その程度のデメリットくらいはないと、バランス的にも平等感がなくなるよな。

 と、恭介も思う。


「敬愛なる師匠」

 生徒会長との連絡を終えた直後、緑川が右手を差し出してきた。

「握手して」

「あ、はい」

 彼方は素直に緑川の手を握る。

 どうせ、こちらでも検証しようとは思っていたしな。

「師匠、罠師の固有スキルは?」

「取得ポイント割増し」

 彼方は即答した。

「自分で作った罠で獲物を倒した場合、通常の場合よりも一割前後、増えたCP、PPを取得する」

 戦闘職ではないせいか、罠師の固有スキルはそれだけだった。

「師匠、取得ポイント割増しを、教えてください」

 緑川はそう口に出したが、なにも起こらなかった。

「残念。

 失敗」

 緑川は悄然と項垂れて、彼方の手を離す。

「多分、好感度的な条件を満たしていないんだと思う」

 彼方はいった。

「青山さんも、恭介やねーちゃんと試してみたけど、駄目だったっていうし」

 その結果を聞いていたからこそ、「好感度の条件が関係してくるのでは?」という発想に至ったのだが。

 試しに、赤瀬と仙崎とも同じように試してみたが、どちらも成功しなかった。

 まあ、予測通りの結果、ではある。


「どうしよ、どうしよ」

 一方、彼方経由でこの情報を得た生徒会役員たちも、結構な騒ぎになっていた。

「誰か、試せそうな人に心当たりはないか!」

 基本、生徒会役員たちには、これといったジョブ固有スキルがない。

 加えて、すぐに試せそうな人材にも心当たりがなかった。

「いやいや。

 すぐそこに居るじゃないですか、今は」

 たまたま外出先から帰ってきた横島は、無駄に慌てる役員たちから事情を聞いたあと、冷静に指摘をした。

「結城さんたち、どっちも固有スキル持っているし、お互いの好感度も高そうでしょ」

「あ!」

 そうだ。

 あの二人が居た。

 急遽、結城姉弟の二人が生徒会執務室に招集さる。


「で、握手して」

「はい」

 結城紬とただしの姉弟は手短に事情を説明され、生徒会役員たちが見守る中、なんのてらいもなく手を握る。

「えっと、こういえばいいんですか?

 ねえさん、復活のスキルを教えてください」

「はい、どうぞ」


『プレイヤー結城紬はプレイヤー結城ただしにジョブ固有スキル「復活」を教授しますか?

 YES/NO』


「で、YES、と」

「どう?

 成功してる?」

「あ、はい。

 スキル欄に、復活ってスキルが増えていますね」

 小名木川会長の問いかけに、結城ただしが答えた。

「成功した!」

「再現性があるってことだ!」

 そのまま、結城紬も結城ただしのジョブ固有スキル「成長促進」などを教授して貰い、自分のスキルとする。


 もう一方の、上位ジョブ解放の件については、この場で検証することは出来なかった。

 結城紬の聖女も、ただしの勇者も、ともにユニークジョブである。

 おそらくは、転職可能な上位職というものが、存在しないのだろう。

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― 新着の感想 ―
死者蘇生のスキルが使える人が増えるのは結城紬の安全のためにも必要だね 誘拐みたいなことを防ぐためにも ただ、そこそこの人数が使えるようにならないとまだ危険だろうけど
紬ちゃんがぽっちゃり女子なのに聖女なのはここが理由だな つまり、野心的な男が落とそうと思えない魅力がない女性でうっかり死者蘇生を教授できない。 そして、ミーハーでないのでそれ目的のイケメンもなかなか…
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