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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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ジョブ固有スキル教授

「そういや、師匠」

 赤瀬がいった。

「結局洗濯、出来なかったんだけど」

「出来なかったのか」

 彼方は鸚鵡返しに応じた。

「さっき、喜び勇んでいっていたのに。

 それで、原因はわかってるのかな?」

「いや、単純に、水のこと忘れてました」

 赤瀬は即答する。

「シャワーの方のタンクから水、持って来てみたんすが、今度はすぐになくなっちゃって」

「ああ」

 彼方は頷く。

「洗濯機、かなり水を使うからね」

 実のところ、彼方自身も給水については失念していた。

 元の世界に居たときは水道があったし、今は水魔法がある。

「水くらいどうにでもなるだろう」

 と軽視する気分が、どうも抜けきらないようだ。

「洗濯機用の水タンク、か」

 彼方は考え込んだ。

「ゆすぎとか何度もするから、結構使うよな。

 そんなに大容量の水タンク、あるかな?」

「一番容量が多いのですと」

 会話に耳を傾けながらマーケットの画面をチェックしていた仙崎がいった。

「給水塔が丸ごと売ってますね」

「給水塔、か」

 彼方はいった。

「大きいのってえと、元の世界でいえば、施工業者くらいしか扱ってないんじゃないか?」

「普通の通販サイトでは、売ってなさそうですよね」

 仙崎も、彼方に頷く。

「これ、買ってもいいですか?」

「そちらが買うのを止めるつもりはないけど」

 彼方は答えた。

「それの設置、素人でも出来そう?」

 大容量の給水塔というと、中の水も含め、かなりの重量物になるのではないか。

 それを素人だけで、設置可能なのだろうか?

 というのが、彼方の懸念になる。

「設置は、ええと、まず、重量を支える強固な地盤。

 それと、アンカーっていうんですか、それを刺すために、コンクリの土台が必要みたいです」

「アンカーっていうのは、太いボルトみたいなのだね」

 彼方は説明する。

「まあ、それくらいは必要になるか」

「あ、じゃあ、作ります。

 土台」

 赤瀬が気軽な口調でいった。

「千尋ちゃん。

 その土台の作り方とか、わかる?」

「まあ、だいたいは」

 仙崎は答えた。

「重量から必要な強度とか割り出して。

 計算してみないと断言出来ませんけど、おそらくはマーケット経由で入手可能な材料のみで作れるはずです」

「さすが、千尋ちゃん!」

 赤瀬は、はしゃいだ。

「頼りになるなあ!」

「ええと、仙崎さん」

 彼方が確認する。

「その手の知識とか、ある人?」

「別に詳しいわけではないですが、わからなければ調べればいいんです」

 仙崎は、あっさりとした口調で答える。

「マーケット、電書とか本も、普通に売ってますよ。

 かなりマイナーなのとか専門書も含めて」

「うん。

 それには、おれも気づいていた」

 彼方も、頷く。

「それでは、そっちは任せちゃってもいいかな?」

「はい」

「洗濯機のためなら!」

 仙崎と赤瀬が、躊躇いなく返答した。

「あ、あとですね」

 仙崎が、そのあと、すぐに続ける。

「オークションの方に、お風呂が売っていたんで、こちらも買っちゃいますね?」

「えっと」

 彼方は、一瞬、思考が止まる。

「お風呂、っていった。

 今」

「はい」

「それって、家庭用の浴槽とかユニットバスとかではなく?」

「いえいえ」

 仙崎は首を横に振る

「かなり大きな、同時に十人くらい入れるようなやつです。

 マーケットではなくオークションで売りに出ているということは、つまりはどこかのパーティが手放したんだと思います」

「なるほど」

「あの市街地で使うことを想定すると、排水の始末が大変そうですもんね。

 そこいくとここには、もう浄水槽があるわけですから」

「はいはーい!」

 赤瀬が元気よく片手をあげる。

「排水用の配管作業なら、やりまーす!

 さっきやったばかりだから、やり方だいたいわかるしー!」

「お風呂は、大事」

 それまで会話に参加していなかった緑川までもが、そんなことをいい出す。

「わたしも、協力する」

「頑張ってね」

 彼方としては、声援を送ることしか出来ない。

 なにしろ、彼女たちが自発的にやろうとしていることなのだ。


 そんなわけで、彼方は午後、魔法少女隊の三人とは別行動することになった。

 彼方は彼方で、予定している作業がある。

 現時点でH形鋼の柱だけが立っている自宅候補地から浄水槽まで、配管作業をする予定だった。


「思ったよりも、虫とか見ませんね」

「季節的なもんじゃないかな。

 ちょっと肌寒いくらいだしね」

 一方、森の中で行動している三人の方も、休憩して昼食を摂っていた。

「昨日、歩いた場所は足跡がついていて、少しは歩きやすかった」

 恭介はいった。

「草とか、踏み分けながら移動していたから。

 それで、思っていたよりも罠にかかっていた動物が多かったんで、その始末に時間を取られた。

 プラスとマイナスで、昨日と同じくらいのペースで進んでいる感じかな」

 彼方が防壁で囲った拠点が、それくらい広大だということもあったし、それに、森の中で足場が悪い、ということもある。

 普通の道を歩くよりは、時間がかかるのだった。

「こっから先は未知の領域だから、また枝を払いながら進む感じだねえ」

「ハルねー、また先頭を頼める?」

「もちろん。

 キョウちゃんには周囲を警戒して貰いたいし」

「おれよりもハルねーのが、実質的な索敵範囲、広そうなんだよな。

 多分、斥候としての能力なんだと思うけど」

「そうみたいだね。

 狩人は、索敵よりも自分の体を隠蔽する方向に特化しているみたいだけど」

「どちらも、どちらかというと、こういう森の中で有利に働く能力ですよね。

 遮蔽物が多く、視界が限定されている場所よりも」

「そだねー。

 斥候も狩人も、市街地とか視界が開けた場所だと、あまりジョブの有利さを生かし切れないっていうか」

「索敵範囲が広い狩人とか、隠蔽能力に長けた斥候とか居ると、かなり便利そうなんですが」

「そりゃ、いいや」

 恭介は相づちをうった。

「闇討ちとか暗殺とか、し放題になる」

「ニンジャとかアサシンタイプになるね」

 遥も、軽く笑い声をあげる。

「でもまあ、そういうのは、どちらかというと上級職になるんじゃないかな?

 PPで買えるスキルとは違って、ジョブの固有スキルは、どうも他のジョブの人にはつけられないみたいだし。

 もしもその手を作るも取れるのなら、わたしなんか真っ先に、キョウちゃんの気配を絶つスキルとか認識を阻害するスキルを貰うよ」

「どっちも、これまではあまり使う機会がなかったスキルだからなあ」

 恭介も、気軽な調子で頷く。

「使ったのはせいぜい、決闘のとき、試しに使ってみたくらいかな。

 オーバーフローみたいな場面では、あまり役に立たないスキルだし」

「ねえねえ、キョウちゃん」

 遥は微笑みながら恭介に片手を差し出した。

「ああ、いいよ」

 恭介は、差し出された遥の手を握る。

「あげられるものなら、あげるよ」

 軽い、その場限りの冗談。

 戯れ。

 その、はずだった。

 しかし。


『アラート:

 ジョブ固有スキルの譲渡は出来ません』


『アラート:

 プレイヤー馬酔木恭介とプレイヤー宙野遥は、条件を満たしています。

 師弟関係を設定することにより、ジョブ固有スキルを教授することが可能になります』


『プレイヤー馬酔木恭介はプレイヤー宙野遥にジョブ固有スキルを教授しますか?

 YES/NO』


 二人の視界に、立て続けにそういうメッセージが現れる。


「はいぃ?」

「なんでぇ?」

 遥と恭介の、間の抜けた声が響いた。

「どうしたんですか?」

 そうしたメッセージがまるで見えていない仙崎は、二人の様子を見て怪訝な表情で首を傾げている。

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