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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接続篇

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ケンタウロスっぽい種族

「今度は五番ルートで、直立二本足歩行のGっぽい集団と遭遇、と」

 報告を受けた小名木川会長は、誰にともなく呟く。

「新城委員長はその場で逃げたけど、他の風紀委員たちが残ってどうにかコミュニケーションを取ろうと試みている、と」

「新城委員長の虫嫌いは、折り紙つきですからね」

 小橋書記がいった。

「駄目なものを無理強いしてもいいことはないですし、仕方がないかと」

「いや、新城委員長はいいんだ、別に」

 小名木川会長はいった。

「虫が絡まない、普段の仕事はよくやってくれているし。

 それよりも、翻訳魔法がありながら、交渉が難航しているっていうのがなあ」

「翻訳魔法はそれなりに効いているようなんですが、われわれとは思考形態が違いすぎて、意志の疎通を図るのが難しい、とのことです。

 その、彼らは言葉を持たず、どうやら匂いで仲間同士のコミュニケーションをおこなっている、らしいとのことで」

 小橋書記は説明した。

「それでも、かなりの試行錯誤を繰り返して、どうにか意志の疎通を図ろうと試みている、とのことです。

 翻訳魔法がなかったら、お手上げ状態だったそうですが。

 幸いなことに、向こうからはあまり敵意が感じられない、とのことでしたが。

 とりあえず、彼らの目的はあの斜面を降りること。

 それを邪魔しない限りは、交戦するつもりはないようです」

「六番ルートは、多勢に無勢と判断した坂又どすこいズがその場で撤退を選択。

 下に居たプレイヤーたちと合流後、斜面をくだって来た軍団と改めて交渉の場を設ける予定」

 小名木川会長は、指折り数えながら、そういった。

「三番ルートを降りて来た機械獣の中からは、ヒトっぽい生き物が発見される、と。

 八つあるルートのうち、三つで斜面をくだろうとする集団と遭遇したってことは」

「残りの五つのルートでも、同じような感じになる可能性が高い。

 のでは、ないかと」

 彼方が小名木川会長の発言を途中から引き取った。

「ぼくらがあの塔をどこまでも登れというミッションを示されたように、彼らも誰かの意を受けて動いているのかどうか。

 その辺を確認したいところですね」

「あと、斜面をさがりきって地上に到着したあと、どうするつもりなのかも」

 こうした場では珍しく、遥が発言する。

「地上を征服するつもりだ、とかいうんなら、あの塔の途中で迎撃する方がなにかとやりやすいと思うんだけど」

「あの塔の中に、八つもルートが存在しなければ、それでもいいんだろうがな」

 シュミセ・セッデスが苦り切った表情でそういった。

「八カ所すべてで防衛戦を同時進行するとなると、控えめにいってもかなり骨が折れるぞ。

 ただでさえ、守る一方は、きついというのに」

 防衛戦には、戦利品がない。

 防衛に成功したとしても、得られるのは「それ以上に損害が増えない」という保証だけなのだ。

 防衛戦とは、いわば、

「いかにして負債を、それ以上に増やさないか」

 という部分を、決める勝負になる。

 勝ったとしても得られるものがない戦闘は、むなしいし、モチベーション維持するのが難しい。

 長くチュートリアルという防衛戦を指揮してきたシュミセ・セッデスの言葉は、実感が籠もっていた。

 さらにいえば、今回の場合、その防衛戦を、最悪、八カ所同時に展開する可能性すら、ある。

「えっと、今度は一番ルートから、です」

 小橋書記が報告する。

「今現在、斜面をくだろうとしていた集団と遭遇。

 今度は、ケンタウロスっぽい生物の集団、とのことです」


「本格的に交渉とやらに入る前に、一つ訊きたいことがある」

 はるか頭上から見おろす視線に射すくめられて、宇田は、背筋に冷たい汗が流れた気がした。

「お主らは足が二本しかないのに、何故に、うしろにひっくり返らんで済んでおるんじゃ?」

「まあ、慣れですよ、慣れ」

 宇田はへらへらと笑いながら、適当に答える。

「われわれ人間は、生まれた当初は四本足、今は二本足、やがて三本足で歩くようになる種族なのであります」

「へえ」

 その牝馬は、素直に感心してくれる。

「そちらは、そんな種族なのかい」

 別に宇田としても笑いたくて笑っているわけではなく、緊張が高まりすぎてテンションがおかしくなっているだけ、なのだが。

 まず、目の前のケンタウロスっぽい種族が、とても迫力に満ちている。

 下半身は馬、馬の首に相当する部分に人間の上半身が乗っかっている、という態の種族であった。

 それはいいのだが、一口に馬といってもポニーからサラブレッドまで、様々な種類がある。

 目の前のケンタウロスっぽい種族は、馬でいえば、労務用の輓馬、に、なるのだろう。

 とにかく、大きい。

 手足も、丸太のように太かったし、背も、高い。

 目線の高さが、軽く二メートルを超えている。

 下手すると、三メートルに届こうとしているように見えた。

 その他にも、いろいろと、大きい。

 宇田と対面しているリーダー格、らしい個体は、外見上の特徴から女性、いや、牝馬らしかった。

 いろいろと、大きかったのだ。

 彼らは、人間っぽい外見の部分に衣服をまとっていたが、それでも隠しきれないほどの大きさだった。

 宇田としては、その部分ばかりを注視しないようにするのに、精一杯だった。

 しかし。

 と、宇田はふと疑問に思う。

 あそこに乳房があるとすると、この種族は、授乳はどういう姿勢でするのだろうか?

「なんだい?

 まだ乳が恋しい年頃なのかい?」

 その牝馬はいった。

「異種族の年齢は、なかなか見当がつかないんだが。

 なにも出ないけど、そんなに気になるんなら、あとで吸わせてやろうか?」

「いやいや、滅相もない!」

 宇田は、慌てて断りを入れる。

「ただ、体の一部だけが妙にわれらの種族と似ているのだなあ、と、感心した次第で」

「ああ、そうだな」

 その牝馬は宇田の言葉を首肯する。

「こちらも、これほど似た種族が存在するのははじめてみかけた。

 たとえ、体の一部のみであろうとも、だ。

 それに、この翻訳魔法、かい?

 随分と便利なもんが存在するもんだな、そちらには。

 こっちでは、魔法なんて子ども向けのおとぎ話の中にしか存在しないんだが」

「その事情は、こっちも同じなのですが」

 宇田はいった。

「厳密にいうと、こちらは同じ人間でも別の世界出身者の混合集団でして。

 魔法が使えるのは、われわれと別世界の人間たちになります。

 われわれは、そちらの人々の余録として魔法の恩恵を受けているような次第でして」

「ふん。

 なかなか、込み入った事情があるようだね」

 その牝馬は、宇田の説明にそう反応する。

「細々としたことはあとで時間をかけて説明して貰うとして、だ。

 最初にいくつか、確認しておきたいことがある。

 わたしらは、こちらが地上まで降りたいと思っている。

 あんたらは、それを邪魔するのかい?」

「地上に降りることそのものを、阻止する理由はありませんな」

 宇田は即答した。

「ただ、降りたあとにどうするつもりなのかは、確認させていただきたい。

 地上に降りて、そこを征服するつもりだというのなら、こちらとしては精一杯の抵抗をするしかないわけでして」

「なにがあるのかわからない土地を欲しがって、どうするんだい?」

 その牝馬は、宇田の憶測に質問で返す。

「まずは様子を確認したいだけ、さ。

 今のところは、だが。

 ある日、なにもない平原の真ん中に、ぽっかりと出口が開いた。

 その出口の向こうには、見覚えのない坂道が上下に、延々と続いている。

 そうなれば、その先になにがあるのか、確認したくなる。

 それが、知性ある存在ってもんじゃないのかい?」

 つまり、彼らの目的は探索そのもの。

 というわけ、らしかった。

 多分、本当だろうな。

 と、宇田は思う。

 その牝馬の態度や口調には、裏があるようには思えなかった。

 ただ今後、地上を見てから、彼らの中から妙な野心を芽生えさせる者が出てこないとも限らないわけだが。

 そこまで、この時点で心配するのも馬鹿馬鹿しい。

 少なくとも、そんな未来に属することは、今、宇田が危惧するような問題ではなかった。

「ま、素直に通してくれるっていうんなら、それが一番だ。

 こちらとしても、面倒な仕事が一つ減る」

 宇田の表情からそのまま通れそうだと判断したのか、その牝馬はそう続ける。

「あと、もう一つ、今のうちに確認しておきたい。

 そちらには、強いやつは居るのかい?」

「山ほどおりますなあ」

 宇田は、ほぼ反射的にそう答えていた。

「破壊をつかさどり、ドラゴンさえも倒した一団に、雷と一体化して移動や攻撃をおこなう勇者。

 それには及ばないものの、一癖も二癖もあるプレイヤーたちがごろごろと」

「ほぉ」

 牝馬の両目が一瞬輝き、ついで、破顔した。

「そいつは、楽しみだねえ」

 実にいい、笑顔だった。

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