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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接続篇

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新設定、Sポイント

 その、三角形のサインの元に、続々と人が集まってくる様子がここからでも確認出来た。

 数十人、いや、百人以上は居るのかか。

 意外と、あの塔に先行することを望んだ人々は多いようだ。

「思ったよりも、人が集まっているな」

 恭介は、そう呟く。

「ダンジョンにも最後のチュートリアルにも乗り遅れた人たちが、ここぞとばかりに集まっているようですね」

 アトォが、そう解説してくれる。

「今回は、三十日も前から告知されていましたし、一攫千金を狙っている人も多いようです。

 その、それまでの生業が立ちゆかなくなった人々も、それなりに居るそうだから」

「ああ、そうか」

 恭介はそういって、納得した。

「フラナの人たちは、今、割と混乱期にあるんだったよな。

 だったら、一発逆転のチャンスに乗っかる人も出て来るわけか」

 当然、事前に情報は集め、多少の対策もした上で、だろうけど。

 それでも、今回は肝心の塔がどういう性格の物なのか、まったく明かされていない。

 リスクは承知の上で、それでも行動するしかない立場の人たちも、居るというわけだった。

 すでに相応のポイントを獲得しているトライデントなどとは、立ち位置が違う人々が。

 こういう空気は、どうも好きになれないな。

 と、恭介は思う。

 結局、今集まっている人々の大半は、それまでの生活環境を破壊された上で、意に沿わない行動を選択するしかなくなっているわけで。

 やはり、贋作者たちの行動と選択は、恭介たちプレイヤーの立場や心境を無視したものだ。

 との確信が、さらに揺るぎないものになった。


「塔の公開まで、あと一時間を切りました」

 そんなことを考えると、本日何度目かの全プレイヤーに向けたアナウンスが、頭の中に響き渡る。

「塔の公開と同時に、塔内での各プレイヤーの働きはすべて映像として公開されるようになります。

 そうした映像はすべて、システム内で確認可能な状況となります。

 同時に、よりよい活躍をしたプレイヤー、ないしはパーティに対して、任意のSポイントが配布されるようになります。

 このSポイントは、獲得した分を同額のCポイントやPポイントに変換することが可能です。

 また、プレイヤー同士で、手持ちのCPやPPを他のプレイヤーに対してSPとして譲渡することも可能となります」


「ん?」

 そのアナウンスの内容をすんなりと理解出来なくて、恭介は首を傾げる。

「つまり、塔内でのプレイヤーの活動は、すべて中継されるってこと?

 そんなことをして、なんの意味があるっていうんだ?」

「あー。

 これは」

 生徒会の小橋書記が、そんなことを呟いた。

「配信物になるわけですね。

 そうか、こう来たかあ」

「配信物?」

 恭介は、その小橋書記に顔を向けて訊き返す。

「そういうのが、あるの?」

「あるんです」

 小橋書記がそうこたえて、頷く。

「ダンジョン内の活動を配信する、って設定の、小説とかマンガが。

 だとすると、SポイントのSは、スパチャの頭文字ですね。

 スーパーチャット。

 いわゆる、投げ銭です」

「どうも、そうみたいだね」

 彼方が、真面目な表情のまま頷く。

「なんというか、相変わらず斜め上だねえ。

 どうやらあの塔でのプレイヤーは、完全に見世物になるみたいだ。

 いつだったか恭介が、プレイヤーの境遇はある種のリアリティショーなんじゃないか、って意味のことをいっていたけど。

 ここでは、どうやら本当にショーのネタにされるみたい」

「そのショーの視聴者は、どこの誰なんだよ」

 恭介は、怒りを含んだ声でいった。

「おれたちプレイヤーの苦労を娯楽扱いしやがって」

「その視聴者の正体は、よくわからないけど」

 彼方は、冷静な声で答えた。

「あの塔からは、観客が存在するってことが、これで確定したわけだね。

 恭介が怒るのも理解出来るけど、それはそれ。

 ここではその観客を前提にして、活動内容を考慮する必要がある。

 より多くのSポイントを稼ぐためには、どう動くべきか、って」

「どうすれば、そのSポイントとやらを稼げるのですか?」

 リーリス嬢が、彼方に質問した。

「今の時点では、なんともいえません」

 彼方は、真面目に答える。

「塔の中でプレイヤーの働きと、それに連動したSポイントの獲得状況などをしばらく観察してみないことには、まともな結論は出ませんね」

 当然といえば、当然なのだが。

 前例がなにも観察出来ていない現状では、なんの推測も成立しない。

「ただひとつ、指摘出来るとすれば」

 彼方は、そう続けた。

「あの塔の中でなにをするにせよ、注目を浴びるような行動をした方が、そのSポイントも獲得しやすくなるんじゃないでしょうか?」

「面倒な追加設定だなあ」

 恭介は不機嫌な声を出した。

「受けや映えを意識して行動しろってのか?」

 恭介にしてみれば、贋作者たちによって、自分たちプレイヤーが玩具にされているような印象がある。

 それが、ひたすら腹立たしい。

「そういうルールなら、従った方が効率よくポイントを稼げるってわけだね」

 恭介とは対照的に、彼方は冷静な態度を崩さなかった。

「この場合、Sポイントを稼ぎやすい受けや映えがどういうものなのか。

 そういう検証は、必要になってくるんだろうけど」


 そんなやり取りをしていると、恭介のシステムに呼び出し音が響く。

 誰からだと確認すると、見慣れたID、酔狂連の桃木マネージャーからだった。

「うちの馬鹿どもが、あの塔について検証したいことがあるってきかなくて」

 恭介が受信をすると、桃木マネージャーはそんなことをいい出した。

「馬酔木さんたち、今、あの塔の近くに居るんですよね。

 悪いですけど、ちょっとあの塔に向かって、魔法とか物理で攻撃してその映像を送ってくれませんか?」

「それくらい、わけないですけど」

 恭介は、そう答える。

「あれを攻撃したら、反撃とかされないかな?」

「おそらく、ですが」

 桃木マネージャーは、そう答える。

「大丈夫だと思います。

 というのは、うちの馬鹿どもは、あの塔を構成しているのは、実際の物質というより、ゲーム内でいう破壊不能オブジェクトのようなものではないか、って説を唱えていまして」

「破壊不能オブジェクト、ねえ」

 恭介は、うめき声のようなものをあげそうになった。

「いや、意味は理解出来るけど。

 そんなものが、本当にあるんですか?」

「これまでのことを思い返せば、それくらいは用意できるんじゃないのか、って」

 桃木マネージャーは、そう答えた。

「映像で見る限り、あの塔の構造は、全然現実的ではないそうです。

 あんな形状だと、どんな強度の構造材であろうと、その重量を支えられない、とか」

 実際に破壊不能かどうか、恭介が全力で破壊にかかってみることで、確認したいという依頼だった。

 あの塔が本当に破壊不能オブジェクトであれば、恭介がなにをしようが壊れないし、反撃を心配する必要もない。

 そして、酔狂連の見立てでは、破壊不能オブジェクトである可能性が高い。

「なら、試してみるか」

 恭介はそういって、トライデントの仲間にいくつかの手配を頼んだ。

 映像の中継と、録画。

 それに、念のため、結界術によってこの場に居る人々の安全を確保すること。

 恭介が危惧するように、万が一、反撃が来たとしたら。

 そもそも、それが物理的な物になるという決まりもない。

 それでも、なんの備えもしないよりはマシだった。

「いや、その前に」

 簡単に事情を説明すると、小名木川会長が悲鳴のような声をあげた。

「さっきいってた、インターフェースとやらに問い合わせてみろよ!

 お前さんなら、それが出来るんだろ!」

「ごもっとも」

 恭介は頷いて、システム経由でインターフェースを呼び出す。

「あー、おれだけど。

 いくつか、訊きたいことがあって」

「なにを訊きたいのかは予想がつきますが、それらの質問にはお答えできません」

 インターフェースは、恭介がなにかいう前に即答した。

「それらの質問はすべて、プレイヤー自身が確認するべき事項として定められています。

 こちらから回答することは、許されていません」

「ふむ。

 ネタバレ防止ってわけだな」

 恭介は頷いた。

「せめて、反撃が来るのかどうかだけでも確認出来ないか?」

「申し訳ありませんが、それも含めて回答不能です。

 こちらには、それに回答する権限が与えられておりません」

 質問する権利を要求した時に、すべての質問に答えられるわけではない。

 と、そう念を押されていた。

 だからこの反応についても、恭介は特に残念だとは思わなかった。

「だ、そうです」

 恭介はインターフェースの回答について、小名木川会長に説明した。

「ということで、自分で確かめるしかないようです」

「それはいいですけど、ここからあの塔まで、攻撃が届きますの?」

 リーリス嬢は、軽く眉根を寄せて恭介に確認した。

「ここからだと、かなり距離があるように見えますけど」

 そんなことをいいつつも、リーリス嬢がこの場から逃げる様子はなかった。

「いうても、一キロ程度ですからね」

 倉庫から魔力弓を取り出しつつ、恭介は答えた。

「この程度の距離であれば、まったく問題はありません」

 恭介は手慣れた動作で魔力弓を引き、そのまま放つ。

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