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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接続篇

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予測とアナウンス

「具体的な対策については、なにも話せませんが」

 このまま放っておくのもなんなので、恭介はそう続ける。

「漠然とした内容であれば、いくらかお話し出来ます」

「聞こうではないか」

 シュミセ・セッデスが自分のシステム画面を確認しながら、そういった。

「公開予定時刻まで、あと二時間もない。

 どんな内容であれ、その間の無聊を慰めるくらいの役には立つだろう」

 つまりは、内容について、厳密さなどは一切求めない。

 と、そう明言したようなものだった。

「その前に、ひとつ確認させてください。

 この塔に関する情報は」

 恭介は、そう質問する。

「シュミセ・セッデス様とリーリス様のみが受け取っているんですよね?」

 シュミセ・セッデスとリーリスは一度顔を見合わせ、頷き合った。

「その通りですわ」

 二人を代表する形で、リーリス嬢が回答する。

「同じ勢力代表者であっても、オナキカワセイトカイチョウにはアナウンスがそうです」

 これまでも、三人で確認する機会があったのだろうな、と、恭介は思う。

「それはこの塔が、あくまでこちらの世界の問題であると、設定されているからだと思います」

 恭介はいった。

「つまり、一連の事態を計画、実行している何者かに、ということですが」

「それは、まあいい」

 シュミセ・セッデスはいった。

「確証こそないが、これまでに散々認識して来たことだしな。

 で、それがなにを意味するというのか?」

「とはいえ、この前終了したこちらのチュートリアルは、三勢力が協力しないと終わらせられない程度の難易度に調整されているようでした。

 今回も、それと同等か、あるいはそれ以上の難易度になると、おれは推測しています」

 恭介は、そう続ける。

「順当に考えると、あとに来るイベントほど、難易度は高く設定されている。

 と、そう思うのですが」

「つまり、三勢力が協力しないと完遂不可能な難事になると、そうおっしゃりたいのですか?」

 リーリス嬢が直球で確認してくる。

「その通りです」

 恭介は頷く。

「塔の性格その他、詳しい内容はわかりません。

 しかし、そのことだけは予測出来ると思います。

 予測が外れて、あっさりクリア可能なイベントしか待っているのなら、それに越したことはないのですけど」

 そうなったらいいな。

 と、恭介は本気で思っていた。

 避けられない強制イベントなど、簡単な方がいいに決まっている。

 ただこの予想というか願望は、おそらく外れるのだろうが。

「三勢力が協力し、なおかつ、プレイヤー各位が将来的に成長する分まで予想した上で、こちらが全力を出してどうにかクリア可能な目的を設定してくるものと予想します」

 恭介は、そうつけ加えた。

「現時点でのプレイヤーの実力に合わせると、あっさり突破されてしまうかも知れませんので」

「なんというか、意地が悪いのだな」

 シュミセ・セッデスはそういった。

「手が届きそうで届かない、ギリギリの線を狙って来るというのか?」

「あまり目標が非現実的な内容だと、プレイヤーもやる気を失ってしまうでしょうから」

 恭介は、そういった。

「もう少し頑張ればどうにかなる。

 なりそうな気がする。

 現実的に考えると、そんな線を狙って来るんじゃないでしょうか?」

「そういう難易度調整を考えるのも大変そうですよね」

 リーリス嬢が、妙に実感の籠もった口調でいう。

「絶対にクリア出来ない難易度に設定したはずなのに、軽々とクリアするプレイヤーなんかも出て来るでしょうし」

「あちらのダンジョンの何カ所かは、そんな感じだったな」

 彼方が軽い口調でいった。

「いくつかのダンジョンは、プレイヤーにクリアされることを想定していない感触がしたし。

 あ、うちのパーティは、軽くはクリアしていないから。

 しっかり苦労しているし、偶然が重なってどうにか終わらせることが出来たパターンも多かったし。

 はたからそう見えるよりは、それなりに苦労しているから」

「ただ、何度かレベルリセットを繰り返せば、どうにかなるんじゃないかなあ、とも思ったなあ」

 遥はいった。

「割と、力押しでどうにかなるダンジョンが多かったし。

 というかあのダンジョン群、結局、攻略することが目的なのではなく、プレイヤーを強化するためのもんじゃないかなあ」

「なんのためにプレイヤーを強化しているのかというと、結局はあの塔とか、あるいはそれ以降に出会うはずの困難に備えて、と考えるのが妥当だと思うんですよ」

 恭介は、そう主張する。

「本番なのは、むしろこれからなのでは?」

「戦いは、あると思うか?」

 シュミセ・セッデスが単刀直入に訊いて来る。

「つまり、なんらかの敵。

 そんな存在との戦闘が」

「いくらかは、あると思います」

 恭介は答えた。

「そうでないと、レベルという概念を設定する意味もないだろうし。

 ただ、それだけですべてが解決するわけでもないでしょうね。

 戦闘に長けているだけだと、いずれはどこかで詰まる。

 そんな困難が待っているものと予想します」

「そう思う根拠は?」

 シュミセ・セッデスが再度、訊ねて来た。

「単純なことで。

 レベルをあげて殴るだけで解決するんなら、そんな困難を設置する理由がなくなるからです」

 恭介は即答した。

「だって、やる前から結果が予想出来るわけでしょ?

 時間さえかければ誰にでも突破出来る困難なら、わざわざ実行するまでもなく、シミュレーションで済ますはずです」

「シミュレーション、とは、なんですか?」

 リーリス嬢が、すぐに質問した。

「ごく簡単に説明すると、この場合は、数学モデルなどを用いた予想になります」

 彼方が説明する。

「ある程度レベルをあげればクリア出来る。

 そう判断出来る内容ならば、実行するまでもなく、計算をすればいい。

 それで、結果をかなり正確に予測することが可能となります。

 多少複雑な計算でも、こちらの機械を使えばある程度は予測が可能です。

 でも、それでは、やる前から結果が見えているのなら、そもそもやる意味がない。

 と、恭介はいいたいわけです」

「実力以外の要素も、関連してくるだろうと」

 シュミセ・セッデスが確認して来た。

「それ以外の要素とは、具体的になにが考えられるのか?」

「わかりやすい例をあげると、運なんかですね」

 恭介はいった。

「実力に関係なく、一定の確率でしか先に進めない場所がある、とか。

 運ゲーになると、レベルとかは関係がありません」

「運、か」

 シュミセ・セッデスはそういってため息をついた。

「それは確かに、自身では制御出来ない要素だな」

「運というのはあくまで、レベルや実力とは関係のない要素の一例でしかないわけですが」

 恭介はいった。

「その他、こちらが想定していない、想定し得ないような、いやらしい罠なんかをわんさか仕掛けて来るんじゃないでしょうか?

 これまでの傾向から、おれはそう予想しています」

 そういう具合に歓談している最中、なんの予告もなく、全員の脳裏に毎度お馴染みのアナウンスが響く。


「全ダンジョンをクリアしたプレイヤー、宙野遥の要望により、全プレイヤーを対象とした医療環境の提供が実装されます。

 医療環境の実働開始として、十日後から健康診断を開始されます。

 各プレイヤーはシステムに送付されたメッセージを一読の上、質問事項すべてに回答の上、期限までに予約を入れて最寄りの医療機関を訪問してください」


「全ダンジョンをクリアしたプレイヤー、宙野彼方の要望により、システム内のテキストについてわかりにくい部分を適宜より理解しやすい形へ改変している最中です。

 わかりにくい説明などがありましたら、ヘルプ内にあるフォームから詳細な要望を記し、送付してください」


「全ダンジョンをクリアしたプレイヤー、アトォの要望により、システム内部のテキストと音声など、ほぼすべての情報が多言語対応になりました。

 プレイヤー間のコミュニケーションが従来よりも容易になるものと予想されます。

 より充実したプレイ内容をお楽しみください」


「もうすぐ接続の塔が解放されます。

 そこで、接続の塔について、いくつかの情報を開示します。

 接続の塔は、とても高い塔になります。

 プレイヤーの目的は、最上階を目指すことです。

 内部に入るための門は、全部で八つ。

 どこから入っても、最上階を目指すことが可能です。

 塔の内部には、八つの螺旋状の通路が上部へ向けて伸びています。

 最上階を目指すのためには、プレイヤーはこの通路を進み、上部へと移動することになるでしょう」


「ちょっと待て!」

 シュミセ・セッデスが大きな声をあげる。

「今回は情報量が多すぎるぞ!」

「全ダンジョンをクリアしたプレイヤーは、願いをかなえられると聞いていましたが」

 リーリス嬢は、思案顔でそういう。

「なるほど。

 こういう形になるのですね。

 となると、この報償も案外、限られた願いしかかなえられないのではないでしょうか?」

「で、なんで、馬酔木の報償だけ、情報がオープンになっていないんだ?」

 小名木川会長はそういって、恭介に意味ありげな視線を送る。

「オープンに出来ないような願いをいったのか?」

「オープンに出来ない、というか、オープンにしても意味のない内容だったからでしょ」

 恭介は、素っ気ない態度で答える。

「実際、他のプレイヤーには関係がない願いですし」

「もっと具体的な内容をいってみろよ」

 小名木川会長は、さらに追求した。

「他のプレイヤーに関係がないかどうかは、そのあとに判断するから」

「最後のダンジョンをクリアしたあと、インターフェースと名乗る存在と遇いました」

 恭介は、淡々と説明した。

「一応、人間に見えましたが、そのインターフェースの説明によりますと、自分はシステムとかこの事態すべてを仕組んだ存在によって作られた存在、だそうです。

 黒幕的存在と人間とは、あまりにも違いが大きすぎてまともなコミュニケーションが取れないので、黒幕的存在と人間とを仲介するためにインターフェースが作られた、と。

 で、おれの願いなんですが、そのインターフェースになにかわからないことがあったら質問する権利をくれと願い、無事に受理されました。

 その権利が与えられるのはおれのみ、ですから、他のプレイヤーは関係ありません」

 小名木川会長はたっぷり五秒以上、恭介の質問を頭の中で咀嚼し、その後、

「なんじゃそりゃー!」

 と、大きな、悲鳴にも似た声をあげた。

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