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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
混合編

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トライデントによる現状分析と若干の予測

「え、撃った」

「ワイルドだなあ。

 流石は異世界」

「公権力が発達していないと、こうなるよね」

 その中継は、トライデントの面々も観ていた。

 ちょうど、休憩中にその中継が入って来たからだ。

 ただ、この四人は生徒会やSソードマンの人々と違って、詳しい背景などについて、別に詳細な情報を得ているわけではない。

 事前に生徒会経由で知らされた概略くらいは知っていたが、

「ドルイセ商会が巨大ゴーレム群によって襲撃された」

 という事実さえ、この時点では知らなかった。

 さらにいえば、システムを経由したフラナの言葉には翻訳魔法が効かないので、中継の中で口にされる言葉もほとんどわかっていない。

 アトォがごく簡単に説明をしてくれるのだが、それもかいつまんでの翻訳であり、全体像を正確に理解するというのにはほど遠かった。

 自宅を襲撃されたリーリス嬢が実行犯を捕縛し、その上で公開尋問と処刑を速やかに実行している。

 ということだけは、かろうじて把握出来ていた。

「この尋問と処刑をしている子が、フラナの統括者ってこと?」

「そういうことなんじゃないかな」

 遥の質問に、彼方が答えた。

「転入希望を却下して正解だったかなあ。

 あちらにはあちらの事情があるんだろうから、一元的に非難をしたくはないけど。

 でも、ご近所付き合いして嬉しい人でないのは確かだし」

「背後の事情こみで考えると、普通に地雷だよな」

 恭介は彼方の言葉に頷いた。

「近くに居たら、絶対、その事情とか抗争に巻き込まれていたぞ」

 彼方と恭介は、それなりに歴史関係の読み物などにも親しんでいる。

 だから、集権的な権力構造が発達する以前の社会で、秩序がどのように維持されていたのかも肌感覚で理解していた。

 ぶっちゃけると、そうした社会の原則とはつまり「弱肉強食」の一語に尽きるのだが。

「この着飾った、いかにも主人公っぽい服装をした子が統括者で、なおかつ、自分の家が襲われて激おこ状態になっている、と」

 遥は、映像とアトォの説明から理解出来た部分を整理して口にした。

「やり過ぎって気もするけど、警察とかがない場所だと、こういう感じになるのかあ」

「公然と報復しておかないと、やられっぱなしになる危険性があるからね」

 彼方がいった。

「どんどん弱みにつけ込まれていって、収拾がつかなくなる。

 程度はともかくとして、こういうパフォーマンスをするのはそれなりに有効な手段、ではあるんだけど。

 でも、うーん」

「商会、ってことは、なにか商売をしている家の人、なんでしょ?

 この統括者」

 恭介が疑問を口にした。

「マーケットが誰にも使えるようになったら、少なくとも従来と同じ商売は続けられない、はずだ。

 その状態で、実家の威光をここまで保とうとしているのは、不自然といえば不自然かなあ。

 いや、おれたちが把握していない背景事情とかが、あるとは思うんだけど」

「ああ、そうか」

 遥は、その説明に頷いた。

「そうだよねえ。

 マーケットのおかげで、あっちの商業関係はすべて落ち目、なんだった。

 その中で、実家の商会をここまでアピールする必要性、確かにわからないよねえ。

 アトォちゃん、その辺の事情、なにかわかる?」

 没落必至なドルイセ商会の健在ぶりを、こんな中継をしてまで周知しようとする動機が、遥には想像出来なかった。

「さあ」

 アトォも、首を傾げた。

「普通に考えれば、一度は限界まで整理して、規模を縮小したドルイセ商会という組織で、今後、なにか新手の商売をはじめるつもりなんじゃないかなあ、とは推測出来ますけど。

 ただこれも、なんの根拠もない想像に過ぎませんからね」

「マーケットが存在していても成立する、新手の商売、か」

 恭介は、思案顔になった。

「何種類か、ぱっと思いつくけど。

 一番現実性が高そうなのは……」

「あ、今、その今後のことについて、リーリスさんが声明を出しはじめました。

 簡単に翻訳してみますね」

 恭介の言葉を、アトォが遮った。

「今後、わがドルイセ商会は心機一転、新天地へと本部を移し、新事業を展開します。

 新天地とは、皆さんもすでにご承知の通り、近く出現するという接続の塔にほど近い、ソラノ村長支配下の土地になります。

 まだなにもない場所だそうですが、そこにセイトカイの賛同も得た上で新たな本部を構え、これまでになかった商いをはじめる所存です」

「ああ、その件があったか」

 彼方がいった。

「土地を貸すのを許可したのは、事実だしなあ。

 間接的にだけど、ぼくらもしっかり巻き込まれているわ、これ」

「その新しい商いとは、必要な時に必要な人材を育て、必要な職場に送り込む、ええと」

 アトォは律儀に翻訳を進めている。

「人材派遣業、っていうんだよ、そういうの」

 恭介が、説明を補足する。

「そうくるよなあ。

 人と、それに教育は、システムのマーケットでは扱えない分野だ。

 おれでも、向こうの世界で商売をやっていたら、そこに目をつけていたと思う。

 さらにいうと、統括者ってユニークジョブとの相性もいい」

「実際、こちらでも少し前から各分野の専門家が圧倒的に足りていないからね」

 彼方がいった。

「その面でいえば、リーリスさんの商会が教育事業を率先してやってくれるっていうんなら、むしろ歓迎したいところだけど」

「翻訳の問題。

 普段の会話はもとより、言語の違いから、日本語で書かれた教科書や専門書を向こうの人たちが読めないって部分が、ボトルネックになっている」

 恭介はいった。

「この言葉の壁を人海戦術でどうにか解決してくれるんなら、まあ、歓迎は出来るかなあ。

 それ以外の、スキルの使い方とかの開発については、酔狂連あたりと共同でやって貰うしかないと思うけど」

「戦闘面に関していえば、実際にその人に、ダンジョンに入ってレベルアップして貰うのが手っ取り早いしね」

 遥も、頷いた。

「今、本当に欲しい人材っていうのは、結局それ以外の分野になるし」

「ええと」

 アトォは、不思議そうに他の三人を見回した。

「皆さんは、あの中継を観ても、リーリスさんにあまり嫌悪感とかないんですか?」

「ああいうことになった背景や事情が、この時点では不明だからね」

 真っ先に、恭介がそういった。

「詳細な背景などについて事情がわからない以上、判断は保留するしかないでしょう。

 あのリーリスさんは、なにかと戦っている。

 多分、それは組織だったなにか、ってことになるのだろうとは思うけど」

「戦争やっているところにいって、一方的にどちら片方が悪いと弾劾するのって、意味がないよね」

 彼方がいった。

「なんのためにその争いが起きているのか。

 原因を究明して、その原因を取り除ければそれが一番だとは、思うんだけど。

 ただ、現状、ほとんど情報がないからなあ。

 うん。

 恭介のいうとおり、今の時点では判断を保留するしかないや」

「わたしらは、それでいいとしても」

 遥が、指摘した。

「土地を貸す約束をしただけのわたしらとは違い、生徒会はもうがっつりリーリスさん一派に巻き込まれているよねえ。

 どうやら、襲撃事件を撃退したのも、生徒会が派遣した子たちみたいだし」

「まあ、事情をわからない人が見れば、同盟関係くらい結んでいそうには見えるだろうなあ」

 恭介はいった。

「同類、っていうか。

 最悪の予想をすれば、リーリスさんと敵対している勢力が、こちらのプレイヤーを襲って来るような可能性も、あることはあると思う。

 いや、相手の行動パターンとかがわからないから、あくまで最悪なら、って予測に過ぎないんだけど」

「どうもこの直前にリーリス嬢の側が襲撃されて、それを撃退したって状況だったみたいだしね」

 続いて、彼方がいった。

「公開尋問と処刑をされている人たちは、どうもその実行犯だったようで。

 この人たちが捕まっているってことは、リーリス一派自身がそれなりの戦闘能力を備えているのと、それに、こちらのプレイヤーも防衛戦に加担しているって可能性もある。

 生徒会から、迎えに人を出したようだし」

「ポジション的には、Sソードマンあたりだろうな」

 恭介が指摘した。

「こっちに話が来ていなくて、次に生徒会が指名するんなら、まずその辺だろう。

 今回はがっつりと巻き込まれて、ご愁傷様なことで」

「今頃、その当事者たちはあちらで、混乱しているんだろうなあ」

 彼方がいった。

「どうしてこうなった、って」

「あと、気になったことっていうと」

 恭介がつけ加える。

「このリーリスって人、この中継が与える印象とか、確実に意識して制御しようとしているよね。

 こちらの文化をかなり予習しているようだし、それを前提にしても、学んだ文物の効果について、かなり想像を逞しくして積極的に活用している。

 学習能力と先見性を合わせ持つという意味でも、かなり貴重な人材ではあるんじゃないかな。

 うん。

 敵に回すと、なかなか怖い存在になると思う」



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