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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
混合編

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魔法と精霊

 アバウトだなあ、と、恭介は思う。

「強制的に止めたり、制御したりすることは可能なんですか?」

 立場上、そう確認しておく。

「出来るか出来ないかでいえば、出来るけど」

 ダッパイ師はそう答える。

「一度それをすると、機嫌を損ねてしばらくこちらのいうことを聞いてくれなくなるんだよね」

 それは、実質的には制御がしきれない、ということではないか。

「一応、範囲攻撃ではあるようだけど」

 恭介は、そう評価した。

「使用者の手で制御しきれない自律ボットなんて、危なっかしいものは積極的に使いたくはないな」

 割と本音だった。

「でも、効果はあるみたいよ」

 広範囲の察知スキルを所持している遥が、そういった。

「あの子のいく先々で、モンスターは見事に絶滅しているし。

 モンスターが消えた通路があるんで、あの子の居場所が確認出来る、っていうか」

「一説によるとあれは、大昔にある術者が餓死した生物全般の感情を集積して作ったそうだ」

 ダッパイ師がそう解説する。

「いわば、人工の悪霊だな」

「ああ、それは」

 彼方はため息混じりにそういった。

「制御不能になりがちだし、見境なく敵を襲い続けるだろうね。

 あれ、味方を襲うことってないよね?」

「多分、ないはず」

 ダッパイ師は頼りない返答をした。

「あれ、あまりにも扱いづらいんで、滅多に使われないんだよね。

 それで、使用実績とかノウハウも、あまり蓄積されていなんだわ」

「そんな不確かなもんを実戦で使用するなよ」

 思わず、恭介は本音を漏らしてしまう。

「いやまあ、でも」

 遥が、そうフォローする。

「効果は抜群なわけだし。

 結果オーライってことで、ねえ」

「うん」

 ダッパイ師は自分のステータス画面をチェックしている。

「レベルっていうの?

 それの数字がどんどん増えている。

 ああ、こういうもんなんだな、って、はじめて実感できたわ」

 向こうの人たちは、レベルとかジョブなど、ステータスの内容について最近まで詳しく知らなかった。

 知識として最近しったことがらが、ようやく実感を伴って来た、というところか。

 ダッパイ師は、恭介たちの反応に、特に気を悪くした様子もないようだ。

 これが、向こうの人たちの一般的な反応なのかもな、などと、恭介も思う。

 それまで意識されなかったことを詳しく説明されたとしても、すぐには実感出来ないのが「普通」なのではないか。


「とりあえず、あの子は速度を増しながらいく先々のモンスターを消して移動中」

 恭介の思考を遮るように、遥が現状を説明する。

「こちらに戻ってくる様子はないから、わたしらに被害が及ぶ心配はないと思うけど、どうする?」

「続行しよう」

 恭介がいった。

「おれたちは、疲れすぎない速度で移動して、ドロップアイテムなどが落ちていないのか確認する」

「まあ、そうなるよね」

 彼方がいった。

「倒したモンスターがなにかをドロップする確率って、そんなに高くはないはずだけど。

 一応、その確認がてら、あの子のあとを追った方が無難かな」

 そんなわけで、一同はダンジョンの通路を進みはじめた。


「しかし、そちらの魔法とスキルの魔法は、かなり違うんだなあ」

 歩きながら、恭介はそんなことをいう。

「根本的な部分から、性質が違うというか」

「むしろ、同じ魔法という呼称を使っているのが間違いという気がするな」

 ダッパイ師は、そう反応する。

「こちら、わたしらの魔法は長い歴史の中で試行錯誤を繰り返した結果完成した、普通の技術体系だ。

 スキルの魔法とやらが、表面的な効果のみを取り出して適当な名前をつけた、まがい物って感じがする。

 確かに発動はするようだが、なんというか、全般に薄っぺらい印象がある。

 ええと、何故発動するのか、その原理がよくわからないから、今ひとつ信頼出来ない、っていうか」

「本物の魔法使いから見れば、そう見えるのかも知れませんね」

 彼方が答えた。

「ゲームとかにありがちな魔法を真似て、似たような効果を持つ魔法を適当に組み合わせてでっちあげました、的な適当さがあるからなあ、スキルの魔法。

 その分、応用方法を研究する余地があるんだけど」

「それで今度は、自分たちのスキルも条件次第では公開して、他の者にも使えます、ってことだろ?」

 ダッパイ師は、そう続けた。

「最初に聞いた時は、長年の研鑽を経てはじめて特定の術式が使用可能になるわれらを愚弄しているのか、と思ったぞ。

 そんなイージーなことでいいのか?」

「その感情も、ごもっともで」

 恭介は、そう返す。

「スキルとかステータス関連の設定は、いかにもご都合主義的な内容だからなあ。

 こちらとしては、使えるものはなんでも使うだけなんだけど」

「ふと思ったんだけど」

 遥がいった。

「魔導師がスキル化可能なのは、魔法だけなのかな?」

「どうかな?」

 恭介は首を捻った。

「割といい加減というか、明らかに魔法でないだろってスキルも、セットして公開出来たように思うけど」

「じゃあ、さ」

 遥が続ける。

「翻訳魔法をスキル化するのも便利そうだけど、その他の言語能力、ええと、フラナとかセッデスの言語なんかも、スキル化出来そうじゃない?」

「それは、どうだろう?」

 恭介は首を傾げた。

「おれの時は、日本語能力というのはスキル化出来ていなかったけど。

 バイリンガルであるアトォが魔導師になったら、あるいは、なんらかの言語能力がスキル化出来る、のかも、知れない」

 実際には、そうなった時に試してみるしかなかった。

 なんにせよ、「スキル化」という能力自体に、謎が多く、この時点ではその機能や法則がはっきりとわかていない。

「ま、おれたちにいわせれば、魔法が存在すること自体が驚きなんだけどな」

 恭介が、そう続ける。

「存在しないはずの魔法が存在して、普通に使えるって時点で、それがどんな出鱈目な原理で動いていても、今さら驚けないっていうか」

「こちらにいわせれば、魔法がまったくない世界、っていう方が信じられないのだがな」

 ダッパイ師が、真面目な表情でいう。

「それでよく、高度な文明を維持出来たもんだ。

 確かに、そちらの機械類などは精緻で、驚くほど多種多様な機能を有している。

 それをすべて魔法抜きで作りあげたってことの方が、よほど驚嘆に値する」

「おれたち自身は、そうした高度で精密な機械を自分では作れませんがね」

 恭介は、そう答えた。

「出来ている製品を購入して、使う一方です。

 修理さえ、自分では出来ません」

「無数の、多種多様な専門家が存在することで、はじめて維持可能な文明だそうだからな」

 ダッパイ師は、そういって頷いた。

「こちらの感覚では、それだけ大勢の人間を養えているという一点で、そちらの世界について想像が出来ない。

 聞けば、そちらには何十億という単位の人間がひしめいていたそうではないか。

 そんな大勢の人間が同時に存在する、という。

 ちょっと想像しただけで、目眩がしてくる」

 そういう認識は、高度な専門知識を持つ、研究者気質の魔法使いらしかった。

「多少原理が怪しくても、使えるものはなんでも使う。

 そうした、なにかを使用することに対する貪欲さが、そちらのプレイヤーたちにとって一番の強みなのかも知れないな」

 ダッパイ師は、そう結論する。


 それから少し時間が経過して、貪欲の精霊についていくつかのことが判明した。

 まず、貪欲の精霊はダンジョンのフロアを跨いで進行することはない。

 この現象は、何故なのか。

 その理由は、判然としなかった。

 飢餓の精霊はただひたすら、水平方向に移動しては手近なモンスターを食らいつくし、モンスターを全滅させたあとにはそのまま消失した。

「そいつの進行方向に使用者が居ない場合は、割と使い勝手がいいかな」

 恭介は、そう結論した。

「ただ、使用者があれの進行方向を完全に制御しきれないそうなんで、そこも結局は運次第。

 なんだけど」

 ちなみに、あの精霊がこちら、使用者の方に向かって来た場合、しばらく使用不能になることを覚悟した上で強制的にこの世から退去させるしか、対処法はないらしい。

 基本性能はともかく、微妙に欠点がある魔法だった。

 ダンジョン以外の、開けた場所などでは、危なっかしくて使えそうにない。

「精霊と呼ばれる存在は、これまでいくつか見てきたけど」

 恭介がいった。

「どれも、行動パターンが違うような」

「精霊というのは、かなり曖昧かつ広範囲な呼称だから、そうなるだろうな」

 ダッパイ師は頷いた。

「強いて定義するのなら、独自の判断で動く超自然的な存在は、だいたい精霊ということになる。

 飢餓の精霊は、大昔の術者が作りあげた人工精霊という分類になるかな」

「ということは、アトォが前に使役していたり、結城たかしが一体化していたりしらのは、人工ではない方の、天然物の精霊ってことか」

 恭介はそういって頷いた。

「あまり深入りするつもりはないんだが、そっちにもいろいろと種類があるんだな」

「ダッパイ師が無事に魔導師になったとしたら」

 アトォが指摘する。

「その精霊の使役法も、ある程度はスキル化されると思いますけど」

 そうした精霊も、やがては全プレイヤーにとってそれなりに馴染み深いものになる。

 少なくとも、そうなる可能性はある、ということらしかった。

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