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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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賢鳥

「そこな人の子よ」

 三人で森を見回りがてら罠を仕掛けていたら、突如頭上から声をかけられた。

「ひさしく姿を見かけなんだが。

 汝らはいかにしてこのような辺地にあるか?」

「こっちが聞きたい」

 恭介は声の主の正体を見極める前に即答している。

「で、あんた、誰?」

 この周辺に三人以外はいないはず、だった。

 つまり、プレイヤー百五十名は、ということだが。

「ふむ」

 声の主は答えてから羽音を響かせ、恭介の視界に入る。

「これは失敬。

 名乗らず姿を見せずというのも、いかにも無礼であったな」

「あなたは鳥のように見えます」

 恭介は、見たままを言葉にする。

「フクロウとかミミズクとか、そうした猛禽に似た姿をしています。

 しかしおれは、言葉を解する鳥類とは会ったことがありません。

 こちらの世界では、あなたのような存在が一般的なのですか?」

「こちらの世界、世界。

 ふむ」

 鳥は顔をぐるりと九十度ほど横転させる。

「ということは、汝らは別の世界より来た、というわけか?」

「昨日、ここに居る三名を含め、総勢で百五十名ほど。

 どういう意図よりに呼ばれたものか、不明ではありますが、別の世界よりこちらへと連れられております」

「ふむ。

 左様なことが」

 鳥はまた、今度は反対側に顔を回転させた。

「汝らの由来については心得た。

 道理で、数百年ぶりに人の子の姿を見かけたものよ」

「おれの名は、馬酔木恭介」

 恭介は続ける。

「あなたのことは、なんとお呼びすればよろしいのでしょうか?」

「わが名を問うか、人の子よ」

 鳥から、薄く笑ったような気配がした。

「以前に言葉を交わした人の子には、賢鳥と呼ばれておった」

「おれたちが来た世界でも、フクロウは多くの伝承で知恵者とされています」

 恭介は平静な態度を保つように努めていた。

「あなたがフクロウであると仮定すれば、ですが」

「世界を跨いでいる以上、左様な比較に意味はない。

 そうではないか、人の子よ」

 その鳥は何度か瞬きした。

「だが、そうさの。

 この我と似た鳥が知恵者とされていることに、悪い気はしない」

「賢鳥よ。

 おれたちは昨日、この森に来た」

 恭介は慎重に問いかける。

「この森に住むことに問題はないか?

 それに、この森でしてはいけないことなどがあれば、事前に知っておきたい」

「この森は、誰のものでもない。

 してはならないことも、ない」

 鳥は厳かな口調で告げる。

「すべての事物は移ろい、すでに起こったことの結果として今が在る。

 そうではないか、人の子よ」

「賢鳥よ。

 ことによるとおれたちはこの先騒ぎを起こし、この森の静寂を破ることになるかも知れない」

 恭介は断りを入れる。

「意図的にそうするつもりはないが、今後、森に入る人数が増えればなにかの問題を起こすかも知れない。

 もしもおれたちの仲間がこちらの禁忌に触れるようなことがあれば、早めに伝えて貰いたい」

「慎重であるな、人の子よ」

 鳥は目を細めた。

「汝らの仲間とやらがしでかしたことの責は、なにごとかをしでかした当人によって償われるべきであろう。

 種族を同じくするというだけのことで、汝らにまでその責を負わせるのはまるで筋が通らぬ。

 左様な杞憂はそうそうに忘れよ」

「賢鳥よ。

 あなたはこの森に住んでいるのか?」

「この森を含めた空の下すべてが我の住まいである」

「では、おれたちはご近所というわけだ」

 恭介は頷いた。

「おれたちの世界では、引っ越した際、引っ越し先の住人に粗品を配る習慣がある。

 たいしたものが用意出来るとも思わないが、なにか欲しい物はないか、賢鳥よ」

「ふむ。

 ふむ」

 鳥は、何度も深く頷いた。

「その殊勝な心がけやよし。

 汝らの幽世かくりよからどうにもうまそうな匂いが漂って来ておる。

 そこな肉を多少分けては貰えぬか?」

「お安いごようで」

 恭介は即答した。

 パーティの倉庫には、これまでに倒したモンスターの肉がほとんど残っている。

「どのような肉でも構わないのですか?」

「珍しい肉がよい」

 鳥も即答する。

「この世界にはない、甲羅を被ったオオトカゲの肉を所望する」

「あれ、ですか」

 恭介は心中でげんなりしていた。

 また、オオコウライグアナか。

「有り余っているくらいですから、差し上げることにはなんの問題もありませんけど。

 量的には、どれほど……」

「全部だ」

 喰い気味に、鳥は答えた。

「幽世にあるオオトカゲの肉をすべて、所望す」

「それは構わないのですが」

 恭介ははじめて背後の二人を振り返った。

「こんな鬱蒼とした場所では、あの肉をすべて出す空間がありません。

 一度、おれたちの拠点まで戻ってもよろしいでしょうか?」

「是非もない」

 鳥はいった。

「汝らの住処でいいのだな?

 我は先回りしておる」

 いい終えるとすぐに軽い羽音を残して空高く舞いあがった。

「と、いうわけだ」

 恭介は背後の二人にいった。

「一度拠点に戻ろう」

「それはいいんだけど、恭介。

 なんというか、凄いね」

「あれ、明らかに不自然、ああ、超自然的な、っていうんだっけ?

 とにかく、そんな存在なんでしょ?

 よくあれほど平静な態度で会話してたねー」

「まあ、神霊とかそういうたぐいだと思った方がいいな。

 おれも、そのつもりで接したし」

 恭介は宙野姉妹に答える。

「緊張したけど、たいしたこといってないんで途中から冷静になった。

 あれ、難しいいい回しこそしているけど、こっちの知りたいことにまるで答えてくれてない。

 いやまあ、いきなりあんなのに出くわしたんで、ここは異世界なんだなあと、改めて実感したけど」

「それで、どうするの恭介。

 今後、あれの扱いは?」

「扱いもなにも、普通にご近所つき合いするしかないだろ」

 恭介は即答する。

「少なくとも、こっちが新参者なんだから。

 腰を低くしてつき合うく方が、問題は起こりにくいんじゃないか?」

「ねー、ヘルプちゃん」

 遥は、音声機能を経由してシステムに確認している。

「あなたたち、ああいう存在については把握してた?」

『該当するデータが存在しません』

「秘匿情報ではなく、該当するデータがないのかあ」

 遥は、少し考え込む。

 つまり、システムは、この世界について十分な知識を蓄えているわけではない。

 らしい。


 三人が拠点に戻ると、賢鳥は恭介たちが咲くや寝泊まりした建物の屋根にとまっていた。

 家の前で、倉庫からオオコウライグアナの肉を全部取り出す。

 他の建物とはだいぶ離れているので、巨大な肉を出すスペースは十分にあった。

 賢鳥は巨大な肉の上で、

「ふむ、ふむ」

 としきりに呟きながら何度も旋回し、それから、肉の上に降りたった。

「この肉、すべてを貰い受けても構わぬのだな?」

「すべて、差しあげます」

 恭介は答えた。

「もともと、持て余しているくらいでしたから」

「善き哉、善き哉」

 賢鳥は大きな声で叫んだ。

「汝ら、人の子らのいく先に幸あらんことを!」

 その声が止んだとき、巨大なオオコウライグアナの肉塊ととも、賢鳥の姿も消えていた。


「ってなことが、あったんですけどね」

 彼方が昼食がてらに報告すると、通話相手である小名木川会長はしばらく絶句していた。

『……お前らなあ』

 しばらく絶句したあと、小名木川会長はようやく言葉を絞り出す。

『なんで、お前らばかり。

 その、正直にいうと、だ。

 そんな報告を受けても、こちらとしてはどう返答するべきか、判断がつきかねるぞ』

「お気持ち、お察しします」

 彼方は真面目な表情で頷く。

「いや、ぼくも、恭介があの鳥と普通に会話した時点で同じような印象を受けましたもので。

 でもまあ、心配することはない、と思いますけどね。

 恭介がいうことには、呪われたのではなく寿ぎを受けたわけで。

 すぐにどうこうっていう影響はないだろうと、いうことらしいです」

『だったら、なんでわざわざこっちに報告してくるんだよ』

「こういう事例がありましたってこと、そっちが把握していないのもまずいでしょ?

 今後も、同じようなことが起こるかも知れませんし。

 だってここ、異世界ですよ。

 こういうことが起こり得るんだって情報は、生徒会も持ってた方がいいですよ」

『……そういうもん、なのか?』

「そういうもんです。

 経験は蓄積して共有してこそ、活用のしようもあるわけで」

『わかった。

 この件は、文書化して全プレイヤーと共有するように手配しよう。

 だが、本当に大丈夫だろうな?

 その賢鳥とやら』

「少なくとも、悪いものではないようですよ。

 案外、気さくなところもあるし」

 彼方はいった。

「恭介がいうには、土地神のたぐいではないから助かった、だそうですけど。

 今のところは、風変わりなマスコットキャラ、くらいに思っていていいそうです」

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― 新着の感想 ―
空の下全部縄張りの存在が人見たの100年振りってことは……
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