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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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総力戦(十四)

「おっと」

 恭介は軽く呟いて、足場を変えた。

 先ほどから、上下左右が目まぐるしく入れ替わっている。

 恭介が体内に潜り込んだ竜が、のたうち回っているのだろうな。

 と、そう予想した。

「外から見て、竜の様子ははどう見える?」

 恭介は、そう訊ねた。

「なんか、先ほどから、激しく暴れています」

 仙崎が答えた。

「っていうか、師匠は無事なんですか、これ」

「どうにか踏ん張っているよ」

 恭介は答えた。

「自分で開けた穴の奥深くに入り込んだような状態だし、すぐに振り落とされることはないと思う。

 せいぜい、暴れてみるさ」

 どこまで出来るかな。

 とか思いつつ、恭介は杖を取りだして構えた。

 ちょっと試しに、全力で無属性魔法、ぶっぱなしてみるか。

 もちろん、ジョブは魔術師に変えている。


「わ」

 箒に乗った状態で竜の様子を確認していた仙崎は、間の抜けた声をあげる。

「竜の体が、いきなり真っ二つになってる」

 中央司令部からいわれて、外から見た竜の様子をビデオカメラで撮影しはじめたばかりだった。

 いきなり、とんでもないスペクタルなシーンが撮影出てきちゃったな。

 とか思いかけ、慌てて呼びかける。

「師匠!

 無事ですか!」

「一応、無事」

 恭介の返事は、すぐに返って来た。

「いきなり空中に放り出されたんで慌てたけど、今は箒に乗っている」

「慌てただけで済んで、よかったですよ」

 盛大に安堵しながら、仙崎はいった。

「今度はいったい、なにやったんです?」

「試しに、全力で無属性魔法をぶっ放してみた」

 恭介の返答は不自然なほど、静かなものだった。

「あの竜、体内からの攻撃には、案外脆いみたい」

「普通、モンスターは体内からそれほどの攻撃をされるとは思っていないんじゃないですかね?」

 仙崎は、恭介のペースにはまって突拍子もない返答をしてしまう。

「それよりも、あのモンスター。

 まだ倉庫に収まっていないってことは、生きているってことですよね。

 流石に、飛行能力は失って、そのまま落下しているようですが」

「あー、中央司令部」

 恭介がのんびりした声で警告した。

「これ聞こえていたら、速攻で、城塞内部から人払いをした方がいい。

 今、かなりの大質量がそっちの真上から落ちていくから。

 って、間に合うのかな、これ」


「間に合うわけないだろ、馬鹿者!」

 小名木川会長が怒鳴った。

「ええと、総員退避を推奨する!」

「総員、城塞内部から退避させよ!」

 シュミセ・セッデスも叫んだ。

「問答無用で、全員だ!

 負傷者もどうにかして外部に連れ出せ!」

「今、左内くんが、動かせる超大型数体を、落下予想地点に配置しようとしています」

 小橋書記も叫んだ。

「最低限、その超大型周辺からは人を遠ざけてください!

 あの竜の大きさからして、うまくキャッチ出来たとしても、受け止めた超大型もろとも押しつぶされるものと予想されます!」

「ウダ殿が、使用可能な人形を総動員して城塞内部の人員を強引に運び出してくれているようです」

 アイレスがいった。

「こちらでも見えてきた」

 上空を監視していたカメラの映像を観ながら、小名木川会長がいった。

「どんどん大きくなる。

 っていうか、あれ、大き過ぎるだろ!

 もう来るもう来る。

 全然、間に合わない!

 ああ、もう着地する!」

 次の瞬間、大きな地響きが轟いた。

 続いて、ビルが爆破されたかのような爆音が複数箇所で連発し、最後に、天井方向から大きな打撃音が響く。

 ずん、と、中央司令部の天井自体も身震いし、細かい破片が上から無数に落ちてきた。

「……城塞の天井に、あのデカブツが無事に乗りあげた、ってことかな」

 小名木川会長がいった。

 モニターのほとんどが機能を喪失してブラックアウトしているので、外の様子がわからない。

「多分、そういうことだと思います」

 筑地副会長が冷静に答えた。

「ここもいつ崩れるかわかりません。

 われわれも、早急に対比した方が身のためだと思います」

「せっかく構築した監視網が壊された以上、このままこの場に居続けるわけ理由もない」

 シュミセ・セッデスがそういった。

「総員、速やかに城塞外に退避、だ」


「わひゃひゃひゃひゃ!」

 クァールの背に乗った吉良明梨はその光景を間近に目撃し、笑いを堪えられなかった。

「いやいや。

 ないわー、これ!

 真っ二つに断ち切られた竜がいきなり落下してくる、って!

 どんな怪獣映画にも、こんなシーン出てこないよ!」

 分断された竜の体は、左内の召喚獣によって一度は受け止められた。

 しかし、そのような重量物が落下してきた衝撃はその程度のことでは相殺出来ず、数体の超大型モンスターと数十体の大型モンスターは実質的にはクッション代わりにその衝撃を受け止めて、そのまま退場している。

 基本的に、左内の召喚獣は大きく、強い者ほど再度召喚するまでにかかるクールタイムが長くなる傾向にあり、今の左内は大型と超大型モンスターのすべてを一度に失った形になる。

 幸いなことに、直前までの奮戦により、城塞外部に出現した超大型モンスターはすべて倒しきっていたので、それでも支障がない、ともいえたのだが。

 あの竜の出現を最後に、新たなモンスターは湧いてこなくなっていた。

 あの竜が、文字通りのラスボス扱いなのだろう。

 そのラスボス扱いの竜は、出現してからごく短時間のうちにたった一人のプレイヤーによって胴体を分断され、城塞の上をのたうち回るだけの存在と化していた。

 その様子を目撃していた吉良としては、爆笑するしかなかった。

 このような事態はまるで予測していなかったし、それ以上に、ことの重要さと目前の光景とのギャップが、どうにもおかしくてしからがない。

 見れば、城塞のあちこちに亀裂が走り、そこここの天井が落ちはじめている。

 あの下に居る人が、落ちてきた天井や崩れた壁の下敷きになっていてもおかしくはないのだ。

 冷静に考えれば、今の状況は深刻で、決して笑えるようなものではないのだが。

「クァール、いくよ」

 表情を引き締めて、吉良は黒豹に似た召喚獣の背中を軽く平手で叩いた。

「一刻も早く、あのデカいのを消さないと」

 城塞内部は、今頃、てんやわんやの騒ぎになっているんだろうな。

 と、吉良は思う。


 このチュートリアルに参加していたプレイヤーの反応は、大別して二種類に別れた。

 城塞内から脱出しようとするプレイヤーと、落下してきた竜に向かう者とに。

 セッデス勢の城塞は、基本的は頑強な作りではあったが、あのような巨大な落下物にのしかかられることを想定していない。

 城塞が完全に破壊されるのも、時間の問題といえた。

 城塞内部に居たプレイヤーたちは、我先にまず外部へと通じる出口に向かい、外に出られたら、今度は城塞外部へと向かう。

 城塞外部に発生した超大型モンスターが一掃されているのと同様に、爆心地に発生したモンスターもこの時点ではほぼ殲滅されていた。

 というより、新たなモンスターが出現しなくなれば、既存のモンスター程度ならかなり短時間で駆除可能なのだ。

 仮にセッデス勢だけであっても、その程度のことは普通に出来た。

 彼らとて、これまで八十年に亘ってモンスターと対峙して来た経験は、伊達ではない。

 そうして城塞内部から逃げるプレイヤーたちも、人形たちが搬送する負傷者たちを優先的に逃がす程度には、余裕があった。

 そうした脱出組も特にパニックに陥るということもなく、整然と列を作って外部へと逃げている。

 この大部分の脱出組とは別に、落下して来た竜に向かって移動するプレイヤーたちも少数ながらも存在した。


「いくぞ、勇者」

「出遅れるなよ、侍」

 Sソードマンの五人が、連れだって分断された竜の元へと向かう。


 召喚術士の左内は、クールタイムが終わっていないモンスターを除き、すべての戦力を召喚して竜に対抗しようとしていた。

 その中には五メートル級のゴーレムなども複数体、含まれており、すでに暴れようとする竜の体を取り押さえる役割を果たしている。


「聞こえる?

 今からこのあたりに、無属性魔法をかけるから」

 赤瀬は、手にしていた杖で竜の体の一部を示しながら、通信でそう伝える。

「ちゃんと狙ってね

 三、二、一、はい」

 無属性魔法をかけると同時に、箒に乗った赤瀬はその場から迅速に離れた。

 その背中で風を切る音が通過し、戦車の主砲が竜の体に炸裂する。

 マダム・キャタピラーの戦車は三両。

 仙崎を除けば、魔法少女隊の人数は三人。

 連携するのに、ちょうどいい数だった。

 戦車の主砲が命中した竜の体に、大きな穴が穿たれる。

 貫通するには至っていないが、それでも、表面のバリヤー的な膜を無効化すれば、現代兵器でも通用するということが確認された。

 さらにいえば、一度大きな穴が空けば、そこから内部に侵入し、中から攻撃可能であることも、恭介がすでに証明している。

「ということで、こちらはどっこどこ風穴開けていきますんで、他の人たちはその穴から攻撃していってください」

 赤瀬は、通信で小名木川会長にそう伝える。

 中央司令部は、物理的には機能しなくなったようだが、中の人たちは健在である。

 そうである以上、司令塔として実質的に機能して貰わなければ困るのであった。

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