表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

218/401

VS結城姉弟(二)

 現在、彼方が常用している大きな盾は、酔狂連謹製の最新型だった。

 というより、重量があり過ぎてこの時点では彼方以外に使用出来そうなプレイヤーがいないので、実質、オーダーメイドに近い製品になっている。

 酔狂連としても、ダンジョン経由でもたらされた新素材などを使用した試作品を製造することにより、相応の知見を得られるので、こうした製品は積極的に製造しているらしい。

 先ほど、結城ただしの広域電撃魔法をこの盾で受け止めていたように、各種の、想定される限りの攻撃を受け止める能力が、現時点の技術力の限界まで与えられている。

 という、触れ込みだった。

 その大盾にもそれなりに弱点はあり、物が大き過ぎて前方に構えていると、使用者の視界がほぼ遮られてしまう。

 このわかりやすい弱点も、当然しかるべき対策は講じられており、つまりは盾の縁にいくつかのカメラが取り付けられており、盾の裏側に取り付けたモニターを経由して確認出来るようになっている。

 そのモニターに、ぐんぐんと姿を大きくしていく結城ただしの姿が表示されていた。

 速い。

 高レベルプレイヤー特有の、移動速度だった。

 しかし、それをもていた彼方自身もレベルカンストしたプレイヤーだったので、特に反応が遅れるということもなかった。

「土魔法」

 彼方が小さく呟くと、結城ただしの周囲の地面が、唐突に消失する。

「ついで、マーケットで熱々アスファルト、二十トンほど購入してプレゼント、と」

 チュートリアル最終日に、この近くの聖堂で使った手の再演、だった。

 これで片付けば、楽なんだがな。

 などと、彼方は思う。

 基本的に好戦的ではない、というより、戦闘行為自体にあまり意味を見いだす性格ではない彼方は、可能な限り戦わない方法を考えて実行する傾向がある。

 それが不可能ならば、可能な限り楽に勝てる方法を考えて、実行する。

 同時に必要以上に楽観する性格でもなかったので、ここで素直に結城ただしが終わってくれる、とも、予測していなかった。

 いや、結城ただしが単身であれば、この状況から脱する術は、ちょっと思いつかないのだが。

「ほらな」

 モニターを監視していた彼方は、ぽつりと呟いた。

「相棒が、聖女様だもんなあ」

 聖女というジョブは、多種多様な回復手段や神聖魔法を持っていることが確認されている。

 それ以外に、雰囲気とかイメージ的に、味方に対するバフくらいはかけられるのかも知れない。

 詳細は、勇者というジョブと同様、周知されていないので、この時点では不明だった。

 頭上に降り注ぐアスファルトを突き破ってまっすぐに飛び出して来た結城ただしは、全身オイルまみれでひどい有様だった。

 さらにいえば、露出している顔面は焼けただれて……いや。

 焼けただれている顔面は、見る間に回復して正常な肌に戻っている。

 厄介だなあ。

 と、彼方は思う。

 カンスト聖女の、回復能力とは。

 全身に負った重度の火傷を、ほんの数分で完全に回復させてしまうというのは。

 一般のプレイヤーが使用する回復術も、それなりに反則級の能力なのだが、聖女様のそれは、それをさらに超えた超反則級、とでも形容するべき能力といえた。

 黙って見守るだけではなく、彼方は間合いを詰め、結城ただしの剣を盾で抑えている。

 結城ただしは、剣を振りあげる途中で彼方の盾に押さえつけられた形になる。

 剣を振るためのモーションが大ぶりであり、それだけ、攻撃の前兆を読みやすい。

 力と速度は、それなりだった。

 高レベルプレイヤーの中では群を抜いているといえた。

 が、力ではカンスト領主ロードの彼方に、速度ではカンストくノ一の遥に、遠く及ばない。

 パラメータ的に見れば、バランスがよく、高いレベルでまとまっているが、突出した能力はない。

 と、いったところか。

 気を抜かなければ、どうにか対処可能、かな?

 と、彼方は思う。

 あくまで、結城ただし一人が相手ならば、だが。

 結城ただしは、各パラメーターだけを取り出してみればかなり高い水準にまとまっていた。

 しかし、彼方が容易く攻撃を先読み出来たことからもわかるように、戦闘時の駆け引きではまだまだ未熟に思えた。

 レベルアップした分の能力を、使いこなせてはいない。

 多くのプレイヤーに共通する欠点を、この結城ただしも持っているらしい。

 結城ただしは、自分の攻撃が盾によって潰されたことを悟った瞬間、数メートルほど後退して彼方から距離を取った。

 近距離でどつき合いは不利と、そう悟ったようだ。

 この判断力も、いい。

 彼方は、そう評価する。

 とりあえず。

 と、彼方は思う。

 この子一人だけでも、しばらくこちらに引きつけておかないとね。

 そうすれば、あとの二人がよろしくやってくれるだろう。


 結城ただしが単身で突出したのと前後して。

 ステルス状態で結城紬の背後から忍び寄った遥は、必殺の一撃を結城紬の杖で軽く弾かれていた。

 重っ!

 と、遥は、攻撃が弾かれたことよりも、杖で軽くいなされた際の感触に驚く。

 地面か、分厚いコンクリートに、全力で攻撃をした時のような、揺るぎない感触。

 カンスト聖女は伊達ではない、か。

 と、遥は、そう判断する。

 遥の攻撃を弾く時、結城紬は、自分の背後さえ振り返らず、柄の長い杖だけを後頭部あたりに振りかざしていた。

 視覚で遥の存在を確認したわけではなく、なんとなく気になったあたりを、飛んでいる虫でも追い払うような感覚で杖を振ったような感じ、なのだろう。

 多分、だが。

 魔力とか回復系の能力だけではなく、フィジカル的な能力も、レベルアップカンストのおかげでかなり向上している状態だ。

 おそらく、だが。

 単純に力だけを取り出せば、今の自分よりもかなり上。

 しかも、極端な回復能力も持っているから、一撃で即死まで持っていかないと、即座に元通りにまで回復する。

 速度的にはこっちが上だと仮定しても。

 遥は、そう思う。

 この人、一撃で即死まで持っていくのは、かなり難しいのではないか。

 隙をつくる行為自体が、警戒心を抱かせるわけだし。

 どう攻めるべきかなあ。

 と、遥は考える。

 セオリーに沿って考えるのなら、最初に回復役を潰せば、あとは比較的楽に勝てるはずなのだ。

 なにしろ今回の敵は、たった二人しかいない。

 まあ、遥がなにか思いつく前に、恭介が想定外の方向から打開策を提示する方が、早いとは思うのだが。


 彼方と遥が結城姉弟を攻めあぐねていた時、恭介はステルス状態で他の連中から距離を取り、マーケットの画面を開いてなにか使える物がないかと走査していた。

 この二人は、正面から力尽くでどうにかしようとしすると、かなり苦労することになる。

 なんといっても、二人とも、カンストしたユニークジョブだしなあ。

 恭介たち三人は、カンストした上位職とはいえ、一般職に過ぎない。

 パラメータ的な数値だけではなく、ジョブとしての性質自体が、ユニークジョブとその他のジョブでは、根本的に違っている気がする。

 あくまで、

「恭介はそう考えている」

 ということに過ぎないのだが。

 それでも。

 と、恭介は思う。

 あの二人とまともにやり合うのは、こちらの損耗が激しくなり過ぎる。

 馬鹿正直にそんなことはせずに済ませる方法はないものか。

 そう考え、恭介はなにか使えそうな物をマーケットで見つけようとしていた。

「ああ」

 恭介は、ある製品を見つけて、小さく呟く。

「ちゃんと、あるじゃないか」

 この場で、使えそうな物が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ