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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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歓談

 そのあと、話題は魔法の詳細に移っていった。

 具体的には、あちらでの魔法の活用法などを魔法少女隊の四人がアトォに聞き取りする形となる。

 魔法少女隊も、それなりに魔法について研究しているわけで、相応に興味があるのだろう。

 割と熱心に、アトォを質問攻めにしていた。

 恭介たち、トライデントの三人は、その話題には深入りせず、黙って成り行きを見守っている。


「そういえば、馬酔木師匠は、魔法職とか本気で極めるつもりはないんですか?」

 その話題が一段落したタイミングで、赤瀬がそのように訊ねて来た。

「魔法の素質でいえば、ダントツってことじゃないですか。

 今のままだと、もったいないっていうか」

「機会があれば、やってもいいけど」

 恭介は、そう言葉を濁す。

「現状だと、あまりやる意味がないかな。

 ただでさえ、攻撃力が高過ぎるくらいだし、パーティ内でのバランスという問題もあるし」

 現実問題として、現状で魔法攻撃力が不足しているのなら、改良する意味がある。

 しかし、実際には今のままでも魔法攻撃力は必要以上に過剰なわけで、さらに努力をして向上させる意味がない。

 恭介は、

「実用上十分な性能さえ持っていれば、それで十分」

 と考える人間であり、

「意味もなく最上の性能を求める」

 という、限界ゲーマー的な発想は、持っていなかった。

 魔法攻撃力という一点に関していえば、今でさえ持て余し気味なのである。

 さらにいえば、あのドラゴンのように、魔法攻撃をあっさりと無効化する敵の存在も確認されている。

 だとすれば、なおさら、魔法攻撃に拘る必要を感じない。

「もったいないといえば、もったいないですね」

 アトォも、そんなことをいう。

「キョウスケ様は、希代の魔術師になれる素質をお持ちですのに」

「その行く末が梟雄だとかなら、わざわざ努力をしてそんな者なんかにはなりたくないかな」

 恭介はいった。

「自分の性能を高めること自体が目的化しても、ろくなことにはならないでしょ。

 その性能を使ってなにをするか、の方が、よっぽど大切で」

「なるほど」

 アトォは、真剣な表情で頷く。

「キョウスケ様のお考えは、理解出来ました。

 ちなみに、今の時点で、キョウスケ様の目的はなにになるのでしょうか?」

「自分と仲間の身の安全」

 恭介は即答する。

「さらにいえば、快適な暮らしが出来るといい。

 長期的な目標としては、元の世界に帰りたいってのがある。

 けど、こっちはそうするための手掛かりすらないのが現状だから、どうにも努力のしようがない」

「それじゃあ、最後の長期的な目標以外は、今でも割と充足しているってことになりません?」

 赤瀬が、恭介に確認した。

「そうなるね」

 恭介は即答した。

「ただ、この状態がいつまで維持出来るのか、っていう不安はあるけど。

 なんにせよ、不確定要素が多過ぎるからなあ」

 アトォたち異世界人の出現なども、事前に予測可能な出来事ではなかった。

 ここでは、未来は鮮明に見通せるものではない。

 想定外のイベントが多いからだ。

「予想していない出来事は、割と多いっすね」

 赤瀬も、その言葉に頷いた。

「そういうのに慣れて気にならなくなって来たあたりも含めて、注意しておきたいところです」

「気にしてもしようがないって側面もあるけどね」

 遥がいった。

「警戒していても、なんの役にも立たないし」


 なんだかんだで会話ははずみ、魔法少女隊の家に滞在していた時間はかなり長いものとなった。

 日が暮れる時間になって、

「おれたちはそろそろ帰るけど、アトォちゃんはどうする?」

 と、恭介は確認する。

「なんだったら、このままこの家に泊まってもいいし」

 本音をいえば、このままアトォを魔法少女隊に押しつけたかった。

「いえ、それなら、わたしもいっしょに帰ります」

 アトォは即答した。

「こちらの方々とは、今後も仲良くさせていただく機会がありそうですし。

 明日は、ダンジョンがあるとかいう、市街地を案内してくれますか?」

「いいけど」

 恭介は、そう返す。

「おれたちも、そろそろ市街地にいっておきたいと思っていたところだし」

 あてが外れた落胆は、表には出さなかった。

 と、思う。

 ただ、アトォが魔法少女隊と仲良くなれそうなのは、普通に収穫だと判断出来た。

 魔法少女隊側が新規アイテムの開発について意見を求めるなど、かなり突っ込んだやり取りもしており、アトォがこのままこちら側に居座るつもりなら、長期的な発展性も望めるはずだ。

 酔狂連以外の生産現場が増えるのならば、それはそれで歓迎するべきことなのだろう。

 と、恭介は思う。


 自分たちの家に帰ってから、四人総出で餃子を作る。

 皮とか具から手作りする、餃子だった。

「慌ただしい時は、ここまで手間をかけられないからね」

 などと、彼方はいった。

「作る過程自体、楽しいし」

 皮を発酵させる時間は、四人でお茶をしていたが、それを過ぎると怒濤の手作業が待っている。

 作り置きの分も含めて、四人は大量に、餡を皮で包む作業をし続けた。

「これに似たような料理は、あちらにもあります」

 アトォは、作業をしながらそんなことをいう。

 詳しく訊くと、どうやら小麦に近い穀物は向こうにもあり、普通に栽培されているそうだ。

 牧畜が盛んでその逆に、農耕はあまり盛んではないので、肉よりもそうした穀物の方が珍重されている、という。

 そのため、その「餃子に似た料理」は、割とご馳走なのだ、ということだった。

「ところ変われば、だねえ」

 遥は、そんな感想を漏らす。

「だったら今日は、遠慮せずにいっぱい食べていくといいよ」

 アトォは、炊いた白米と餃子をいっしょに食べることに、

「穀物で穀物を食べるのですか!」

 などと驚いていたが、結果としてかなり大量に食べていた。

 水餃子と焼き餃子の両方を、かなりお気に召した様子だった。


 翌日、アトォは遥に同行して罠巡回につき合い、いつもの日課を終えてから、四人揃って市街地へと向かう。

「そういえば、こちらには、人が乗れるほど大型の家畜がいないんでしたね」

 アトォは、妙に落胆した表情を見せた。

「自転車、試してみる?」

 遥が、そう訊ねてみる。

「いえ、いいです」

 アトォはそういって、遠吠えをする。

 すると、前の決闘の時のように、地面から物質ではないなにかが染み出してきて、大型犬の姿を取る。

「この子に乗っていきます」

 大型犬の背に跨がったアトォが、そういう。

「そんなに気軽に使役してもいい存在なのかな、それ」

 恭介が、そんな感想を漏らす。

「この子にしてみれば、わたし一人を運ぶくらいはほとんど負担はありません」

 アトォは、きっぱりとした口調でいった。

「この程度の用事で現界出来るのすから、むしろ喜ぶんじゃないかと」

 そんなもんか、などと恭介は思う。

 そちらの事情は、正直、よくわからなかった。

「それで、これから市街地へといくわけなんだけど」

 彼方が、アトォにそう告げた。

「あっちは、割と人が多いから。

 声をかけられることも多いと思うけど、気をつけて。

 信用出来そうな人以外は、無視していいから」

 こう見えて、アトォは貴重な人材なのである。

 誘惑して仲間に引き入れようとするプレイヤーも、それなりに居るはずだった。

「はい」

 アトォは、素直に頷く。

「基本、無視していいんでしたよね。

 カナタ様たちが指示した人以外の言葉は、翻訳すらしない」

「そう、それでいい」

 彼方は頷く。

「残念なことに、プレイヤーの全員が全員、善人であるという保証もないからね」

「とりあえず、生徒会には顔を出さなくてはな」

 恭介はそういって、小名木川会長に連絡を取る。

「おう、ちょうどこちらから連絡を入れようとしていたところだ」

 小名木川会長は、そんな風に返答した。

「いくつか用件があるんだが、どれから聞きたい?」

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