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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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魔法講義と亥のダンジョン

「とまあ、こういうわけで」

 遥は三パーティに向けて、説明をはじめた。

「魔法だろうがそうではない方法だろうが、敵が飽和攻撃をはじめたら、なす術はありません。

 そうならないように、事前に可能な限り、情報収集をして、窮地に陥らないようにしてください。

 立場を逆にすると、敵の射程外、安全な位置から、ボコボコに殴り続けるのが、対戦する際にまずするべきことです。

 そうすると、リスクは最低なまま、相手のみにダメージを与えられます。

 くれぐれも、爆撃機に竹槍で戦おうとするなど、間違った方法を選択しないでください。

 彼我の戦力差と、それに有効射程の差を意識せずに戦うことは、自殺行為です。

 攻撃にどういう方法を選択するのかは、むしろ二の次三の次、ですね。

 魔法だろうが近代兵器だろうが、その場で有効な手段を選択するように心がけてください。

 そうしないと、早晩、死にます」

 身の蓋もない見識であったが、三パーティの人員は、血の気の失せた顔をして、コクコクと頷き続ける。

 どうもトライデントは、この意見に説得力を持たせるために、Sソードマンと魔法少女隊の決闘を仕組んだ節があった。

 一応、Sソードマンは、上位パーティのひとつに数えられている。

 そのSソードマンが瞬殺されたあの光景は、あの決闘を目撃した者たちに、大きな印象を与えたはずだ。

 正式に魔法教育をはじめる前のデモンストレーションとしては、それなりに効果的だろう。

「とはいっても、うちのパーティ。

 実は、魔法にはあんまり力を入れて研究とかしていないんだよなあ」

 その直後、遥はそんなことをいい出す。

「魔法が必要な場面では、キョウちゃんがあの弓とか使うと、どうにかなっちゃうことが多いから。

 あ、場合によっては、杖も使うか。

 とにかく、キョウちゃんが魔法使うと、たいていは、想定外に強火になっちゃうから。

 魔法関係の火力で困ったことって、そんなにないんだよねえ。

 だから、魔法の鍛え方って、実は、よく知らない」

 魔法があまり効かない相手に困った経験なら、あった。

 だがそれは、この場ではあまり関係がない。

「ということで、あとは、魔法少女隊の人たちにお任せしたいと思います」


「ということで、師匠ズに頼まれたわけなんですけどぉ」

 青山は、三パーティの人々を見渡して、そう切り出す。

「ぶっちゃけ、わたしたちあまり、魔法の効果を高めようとか、努力したおぼえがないんですよね。

 わたしたちの魔法、そんなに強いですか?」

「今さらそれはないだろう!」

 先ほど、決闘で瞬殺された奥村が、真っ先に反応する。

「あんなもん、反則だ!

 そもそも、だな。

 なんでお前ら、魔法で飛べるんだよ!

 そんな魔法、スキルリストにはなかったぞ!」

「ああ、はい。

 浮遊魔法そのものは、厳密にいうと、スキルではないですね」

 青山は、頷く。

「ただ、魔力操作ってスキルはあるので、それを応用すると、誰でも飛べるはずです。

 少なくとも、うちのパーティの四人は、すぐに飛べるようになりました」

「ちょっと、待った」

 坂又が片手をあげて発言した。

「その、浮遊魔法、というのか。

 それは、とても重要だ。

 ことによると、魔法の効果を高めることよりも、ずっと重要かも知れない。

 すぐに教えられるのなら、まずは、その浮遊魔法から教えて貰えないだろうか」

「異議なし」

 風紀委員の新城が、その意見に賛同する。

「移動と、それに、遠距離攻撃の際、高所への位置取りなどと。

 浮遊魔法が使えるとなれば、便利なんてものではない。

 応用が利きすぎる」

「ああ、はい」

 青山は、あっさり頷いた。

「それでは、まず、魔力操作のスキルを取ってください。

 ポイントを支払えば、誰でも取得できるはずです。

 とりあえずは、レベル一でも十分です。

 で、魔力操作のスキルを取ったら、次は、倉庫の中に眠っているクズ魔石、属性ごとに精製していない、安いやつで十分です。

 その、安い魔石から魔力を解放して。

 それで、周囲の空気と、それに、自分の体重を軽くするようなイメージで……」


 五分もすると、三パーティの全員が、体を浮かせられるようになった。

「おい」

「いいのか、こんなに安易で」

「安易もなにも」

 そんな風に騒ぎはじめた人々に、青山は、そう告げる。

「魔法なんて、もともと、そういうご都合主義的な力でしょ。

 酔狂連の頭のいい人たちにいわせると、この世の摂理とは別のレイヤー?

 とか、そういう部分で動いているらしい、とのことですが」

「いや、これ」

 坂又が、額に汗を滲ませて、そういう。

「実質、重力操作的な効果、なのではないか?

 軽々に使ってしまったが、とんでもないことだぞ」

「そうなんですか?」

 青山は、首を傾げる。

「わたしたちはそういう、難しい理屈はわかりません。

 やってみたら出来たんだから、どんどん使えばいいんです」

「あの、質問、いいですか?」

 今度は新城が、片手をあげる。

「さっきのボードとか、前は、箒を使っていましたが。

 ああいった道具は、なんのために使っているんですか?」

「ああ、はいはい」

 青山は頷いた。

「皆さんも、一度、浮いてみたからわかると思うんですが。

 浮遊魔法、意外と、制御が難しいんですよね。

 こう、ただ浮いているだけでも、意外と思考と注意力を持っていかれるっていうか。

 箒とかボードは、それを緩和するために使っています。

 具体的にいうと、箒は推力維持、ボードはバランサーとして機能しています。

 そうした術式をあらかじめ、そういったアイテムに仕込んでおいて、魔力だけを流すと、自動で機能してくれる、という。

 魔法関係のアイテムは、だいたいそういう機序で動いていますね。

 たとえば杖とかステッキ類、それに、このZAPガンなんかも、そういったマジックアイテムの一種になります……」


 遥たちがそうした「初級魔法講義」を開催している頃、恭介は単身で市街地に通っていた。

 ここ数日、恭介は、亥のダンジョンに挑んでいる。

 別名、惑乱のダンジョンとも呼ばれる亥のダンジョンは、要するに、「攻略する人の知性がだんだん低くなっていく」ダンジョンだった。

 どうしてそういうことになるのか、具体的な仕組みが恭介にはまったくわからなかったが、ある種の、デバフなのだろう。

 出没するモンスターは、さほど強くはない。

 今の恭介なら、発見次第に瞬殺出来る。

 以前の何日かは普通に三人パーティで挑んでいたのだが、何度かこのダンジョンに入るうちに、

「多人数だと、かえって危ないな」

 と思うようになった。

 知性が低下する、ということは、判断力が鈍くなるのと同義で、実際、再三、

「同士討ちをしかけて、危うく途中で止める」

 という事件も、起こしている。

 だから、今では、恭介が単身で乗り込んでいた。

 同じように、遥や彼方も何度か単身でこのダンジョンに挑んでいるのだが、この二人は結局、ほとんどなんの成果もないまま、その度に、自主的にリタイアして終わっている。

 恭介も、これまでの成果としては同じようなものであった。

 が、恭介は、他の二人にはない要素を持っていた。

 ここ数日、恭介は、自分の判断力が鈍くなる限界までダンジョン深くに潜り、そのあと、自分のジョブを「狂戦士」に切り替えている。

 目撃する存在すべてに攻撃をする狂戦士ならば、恭介自身の知能や判断力がいくら怪しくなっても、最終目的であるダンジョンマスターに遭遇するまで、先に進むことをやめないはずだった。

 あるいは、その前に、恭介が死亡するか、あるいは意識を失うなどして、これ以上の抗戦は不可能と見なされ、ダンジョンから排出されるか、だ。

 結果、ここ数日、恭介は特にこれといった成果も得られず、むなしくダンジョンに入っては排除される、という行程を繰り返していた。

 ただ、徐々にダンジョンの深部にまで至っているという感触は、ダンジョンから出て来た時の、体に残る疲弊感から得ては居る。

 もちろん、錯覚ではないのだが。

 この、亥のダンジョンの攻略法を、恭介は他に思いつかなかった。

 他のプレイヤーたちも、このダンジョンをすでに「攻略不能」と見定めているのか、今のところ、ここを攻略しようとしているプレイヤーの姿は、見かけたことがない。

 だから恭介は、その日も、別に順番待ちをすることなく、そのまま単身で亥のダンジョンに入っていった。

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