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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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射撃と走り込み

 恭介は楪を完成したばかりの射撃場に案内し、耳栓用途のヘッドホンと硝煙避けのサングラスを渡す。

「まず、おれが手本を見せるから」

 そのあと、そう告げる。

「まずそれを見て、あとで真似をしてみて」

「それは、別にいいんですけど」

 楪はいった。

「標的までの距離、少しあり過ぎじゃないっすか?」

「いや、こんなもんだろう」

 恭介はいった。

「せいぜい、八十メートルってとこかな。

 百メートルもないし」

「その基準、絶対おかしいと思います」

 楪は、譲らなかった。

「だってそれ、拳銃ですよ?

 それの有効射程って、せいぜい十メートルくらいじゃないでしたっけ?」

「よく知っているなあ」

 恭介は、素直に感心をする。

「ハンドガンなら、せいぜいそんなもんだろう。

 巧い人は、二十メートルとか三十メートルくらい離れていても、当てるかも知れないけど。

 普通の素人は、せいぜい十メートル前後が限界だ」

「前に銃の購入を検討した時に、調べましたから」

 楪はいった。

「だったら、何故……」

「でも、スキルの力を借りると、ここからでも当たるんだ」

 恭介は無造作に拳銃を持つ手をあげると、そのまま引き金を引く。

「え?」

 楪は目を丸くして標的の方を見て、倉庫の中から双眼鏡を取りだして、再度確認した。

「ええ?

 いや、なんで?

 本当に、真ん中に命中しているんですけど!」

「だから、スキル、狙撃手のジョブ固有スキルの力」

 恭介は、少し困惑した様子で説明する。

「おれ個人の能力ってわけではないから、素直に自慢する気にはなれないんだが。

 でもまあ、この程度は軽く出来てしまうんだ」

「……とんでもねぇなぁ」

 楪は、本気で呆れかえっている。

「チュートリアル最終日に、ワイバーンをばかすか落としていたのにも納得だわぁー」

 若干引き気味に見えるのは、錯覚だろうか。

「ともかく、これくらいは出来るんだ」

 恭介はいった。

「実際に実演して見せたんだから、これで納得してくれ」

「はぁ。

 まぁ」

 楪は、曖昧に頷いた。

「でもこれ、すぐに真似しろっていっても、無理っすよ、絶対」

「そう思うか?」

「そら、もう」

「狩人のジョブになった経験は、あるんだよな?」

「何度か。

 ただ、精密な射撃とかは、ほとんど経験していないっす」

 楪は、答える。

「ばばばばー、って連発する銃で、弾丸ばら撒いて仕留める、っていうやつばかりで」

「いや、狙撃のスキルを持っていれば、なんとかなるだろう」

 恭介は、いった。

「狙撃手の命中補正ほどではないにせよ、狙撃だけでも持っていれば、かなり違う」

「そういうもんですか?」

「そういうもんだよ」

 恭介は、渋る楪を、どうにか説得しようと試みる。

「どの道、遠距離攻撃は、他の人たちにもおぼえて貰うつもりだし。

 楪さんは、パーティ内での遠距離攻撃の要になって欲しいんだ」

「他のみんなも、ですか?」

 楪は、首を傾げる。

「うち一人がおぼえれば、それでよくないっすか?」

「楪さんが、負傷その他の理由で応戦不能になったら、どうする?」

 恭介は、そう説明する。

「基本的に、全員に、遠距離、近距離、物理、魔法。

 そのすべてを、おぼえて貰うつもりでいる。

 得意、不得意な分野は、あってもいい。

 けれども、誰かが欠けた時に、他の誰かがその穴埋めを出来ないようだと、いざという時に大変なことになる。

 それだけ、パーティが壊滅する可能性が大きくなるわけだから」

 初歩的なダメージコントロールの考え方なのだが。

 果たして、どこまで理解してくれることか。

「うわぁ」

 楪は、口を大きく開けて、なんともいえない表情になる。

「本気で、やるつもりっすね?」

「もちろん」

 恭介は、真面目な表情のまま、頷く。

「こっちだって、自分の用事を後回しにしてつき合っているんだ。

 そっちも、マジになって貰わないと、困る」

「わかったっす」

 楪は、しぶしぶ、といった感じで頷いた。

「もう一度、見本を見せて貰ってもいいっすか?」


 最初こそグズったものの、その後の楪は、意外に真面目だった。

 何度か恭介が実演して見せた見本をまじまじと観察し、その後、自分でも射撃練習をはじめた。

 恭介は、楪のフォームを何度か直す。

 具体的には、足の開き具合や、姿勢、肩の位置などを、自分の手で触れて、よりよい位置に直した。

「なんか、遥パイセンが向こうで凄い目つきで睨んでいるんっすけど」

「放っておいて」

 恭介は、そのことに構わなかった。

「ハルねーも、必要なことだとは理解しているはずだから」

「こういう、直す部分がわかるってもの、スキルの力っすか?」

「そうなるね」

 恭介は、そういって頷いた。

「こうすれば、命中するってフォームなんかが、直感的にわかるんだ。

 自分で射撃するんなら、そのまま動けばいいだけなんだけど、それを他人に伝えるっていうのは難しいかなあ」

「でも、だいぶ狙いやすくはなってるっす」

「それは、よかった」

 恭介は、しにじみとした口調でいった。

「狩人の、狙撃スキルも、影響していると思うけど」

「それでかぁ」

 楪は、感心した口調で、そういう。

「だんだん、当たるようになって来た」

 コツ、というか、どう狙えば、狙った位置に弾丸が命中するのか。

 というのが、だんだんと飲み込めて来た。

 気がする。

「最初に拳銃を選んだのは」

 恭介は説明した。

「あまり当たりやすい銃を最初におぼえると、より難易度が高い銃に対応出来なくなる。

 そんな気がしたからだ。

 銃身の長いライフルとかだと、もっと当てやすい」


 小一時間ほど射撃練習を続けて、少し休憩しようということになった。

「うわ」

 楪は、自分の肩を手で探って、そんなことをいう。

「肩とか、バキバキになってる」

「余計な部分に力が入り過ぎているから、だと思う」

 恭介が、いった。

「慣れてくれば、もっと気軽に、力を抜いて撃てるようになる。

 その、はず」

「そっちも休憩?」

 遥が、汗まみれの内海を伴って、射撃場までやって来た。

「うん」

 恭介は、頷く。

「そっちの調子はどう?」

「とりあえず、演習場の外周、走らせてみたんだけどさ」

 遥は、あっけらかんとした口調でいう。

「内海ちゃん、まだ十周も終わらないうちに音をあげてさ」

「それでも、十周したのか」

 恭介は、半ば呆れた。

「演習所の外周って。

 演習場、かなり大きいだろ」

「そーだねー」

 遥は、あっさりと頷く。

「外周を一周して、三キロ弱ってところかな」

「この、クソアマ」

 ジャージ姿の内海は、そのまま地面に座り込んで荒い息をついていた。

「後で絶対、締めてやる」

 まだ完全にグロッキー状態になっていないあたり、根性があるなあ。

 と、恭介は思った。

 元の世界で、定期的に運動をしていたようにも見えない。

 どうにか十周を走り続けられたのも、レベルアップによる恩恵によるところが大きいのだろう。

「初っぱなから、それは、キツいんじゃないのか?」

 恭介は、一応、遥に意見をしてみる。

「もっと緩いのからはじめて、徐々にキツくしていく、とか」

「それも手だけど」

 遥はいった。

「今回、そんなに時間をかけたくはないんだよね。

 それに、回復術があるから、筋肉痛になったら、それを使えばいいし」

「やだ!」

 いきなり、内海が大きな声をあげる。

「あの痛いの、いや!」

 回復術に、なにか嫌な思い出があるらしい。

 いや、回復術にその手の思い出がないプレイヤーの方が、珍しいのか。

 ともかく、筋肉痛からの回復にも、回復術が効果的なのは、すでに立証されていた。

 遥がハイペースで進めているのも、そうした事実が前提になっているからだろう。

「あー。

 内海ちゃん」

 楪が、珍しく、途方にくれた様子で声をかける。

「自分で、立てる?

 全身汗まみれだし、一度シャワーでも浴びて、着替えて来た方がいいよ。

 あの、シャワーくらい、貸してくれるんっすよね?」

「合宿所のを、使えるんじゃないかなあ」

 恭介が、そう答える。

「左内くんに連絡して、確かめてみるよ」

 合宿所の建築に駆り出された人たちも、そこで汗を流してから帰る人も居る。

 と、以前に聞いた気がする。

 合宿所の管理人も兼任している左内に事前に連絡しておけば、特に問題はないはずだった。

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