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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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訓練開始

「出来たて、おいしかった」

 楪が、感極まった、といった口調でいった。

 食堂を体験したSソードマンの面々は、そこで出された食事をかなり堪能したらしい。

 政庁の一階にも食堂はあるのだが、まだまだメニューが限られており、リクエストに対して柔軟に対応するということがない。

 作り置きの惣菜類を食器に盛って出すだけ、ともいえた。

 そこへいくと、合宿所の食堂は、今のところ左内が切り盛りしている。

 他の作業員たちは、まだ食事の時間になっていなかった。

 急遽訪れたSソードマンの面々に、下ごしらえが一段落していた左内が、

「なにか食べたいものがあれば、作りますけど」

 と、軽く声をかけ、結果、期待していた以上の料理が出て来たらしい。

 それで、かなり感激をしているようだった。

 思い前してみれば、毎日のように自炊していた恭介たちはどちらかといえば例外であり、市街地のプレイヤーは、ほとんど自炊している様子がない。

 そこまでの余裕がないのか、必要性を感じていないのか。

 あるいは、単に面倒くさがっているだけか。

 その辺はよくわからなかったが、とにかく普通のプレイヤーは、手料理そのものを食べる機会が、ほとんどないらしい。

 こちらに来てから、もうそれなりの日数になるから、

「そういうものに飢えていた」

 というのは、十分にあり得るのだった。


 十分な休憩まで取ったあと、三人はSソードマンを連れて、出来たばかりの訓練所に出る。

 合宿所の建物はまだ完成していなかったが、訓練所の設備は一通り完成していた。

「とりあえず、楪さんは、ここで射撃訓練していて」

 恭介は、まず楪を射撃訓練所に連れて来た。

「いいけど、いつまでっすか?」

「んー。

 ずっと。

 半日か、一日か」

 考えつつ、恭介は、答える。

「もちろん、途中で好きに休憩は取って構わない。

 ただ、ガンナーの命中精度が信頼出来ないのは、論外なんで。

 多少時間がかかっても、それなりの命中率になるまでは、粘って貰う。

 まあ、実際には、途中で別のメニューも入れるから、ずっとこればっかりにはしないつもりだけど」

「うぇえ」

 楪は、露骨に嫌な顔をした。

「努力とか根性とか、そういうの、大嫌いなんですけど」

「でも、反復練習でしか習得出来ない技術ってのは、実際にあるからなあ」

 恭介は、その不満を取り合わなかった。

「狙撃手みたいに、スキルで半強制的に命中するようならともかく。

 そうでないのなら、プレイヤー自身の技術で補うしかないわけだし。

 ここをクリア出来ないと先に進めないから、頑張ってください」

「で、内海さんは、こっちね」

 遥が、片手をあげる。

「とりあえず、走り込みからやって貰います」

「ええ!」

 内海は、大きな声をあげた。

「ジョブの影響で、もうかなり速く走れるんですけど!」

「この場合、問題になるのは速度ではなくて、持久力なんだ」

 遥は、あっさりとした口調で説明した。

「スキルはともかく、それを使う人間がすぐにバテたら、どうしようもないわけで。

 少なくとも、他のパーティメンバーの足枷にならない程度には、タフになりましょう。

 内海さんのストーカーは、どうやら単独行動に向いたジョブらしいので、ある程度体力がついて来たら、今度は単独行動をする際の戦い方なんかをレクチャーします」

「それで、残りの二人は、ですね」

 彼方がいった。

「装備から、一新して貰います。

 酔狂連には連絡を入れているんで、こちらについて来てください」


「おい、まだつかねーのか?」

 奥村が、いらだった声をあげる。

「歩くと、結構距離ありますね」

 彼方は、呑気な声をあげた。

「こっちには、何日か来ていなかったけど。

 少しは変わっているのかなあ」

 まだらにしか木が生えていない場所をしばらく歩き、木が密に生えている林の中に伸びている道に入る。

「この林の中にあります」

 彼方は説明した。

「もうすぐ、着きますんで」

 奥村も美濃も、少し疲れた表情をしていた。

 普段、そんなに歩いていないのだろう。

 市街地で、中央広場と各ダンジョンくらいにしか移動していない生活を続ければ、自然と歩く機会も減るのかも知れない。

 もっとも、一度ダンジョンに入ってしまえば、否応なしに自分の足で歩くしかないわけで。

 その疲れはフィジカルなものではなく、心因性のものだ。

 とも、彼方は思った。


「おー、こっちこっち」

「お待ちしておりました」

 こちらの姿を認めた八尾が手を振り、岸見が一礼をする。

「随分、建物が増えましたね」

 彼方が、周囲をざっと見回して、そういった。

「なんだかんだで、必要になってなあ」

 八尾は、そう答えた。

「引きこもりの浅黄姉妹なんざ、しょっちゅう追加の施設を要求してくるもんで。

 なかなか、普請が終わりらんのだ」

「そんなに多くの施設が必要なんですか?」

「あの二人は、基礎研究専門だからなあ。

 単純な実験でも、規模の大きな設備が必要となる場合もあるし」

 八尾は、そう説明する。

「ことに最近は、ダンジョンからわけのわからない素材がどんどん送られてくるもんで、二人しててんてこまいの忙しさだ。

 常時、複数の実験を並行して実行している感じになるなあ」

「なるほど」

 彼方は、もっともらしい顔を作って、頷く。

「それで、今日の用件についてですが」

「ああ、そちらの二人の装備だったな」

 八尾が、頷いた。

「もちろん、歓迎する。

 とりあえず、在庫の中から要望に合いそうなものを用意して。

 その他に、必要があればオーダーメイドでなにか作ろう」

「どうぞ。

 こちらにおいでください」

 岸見がいった。

「ところで、お二人は。

 これまでの装備は、どうしていましたか?」

「どうって」

 奥村がいった。

「マーケットか、政庁一階の売店で手に入れた。

 最近では、売店の品を使うことが多いかな」

「マーケットの商品は、対魔法防御とかついてないからね」

 美濃が、そういい添える。

「毎度ありがとうございます」

 岸見は一礼をしたあと、なにか少し考える顔つきになった。

「でも、お二人は、うちでオーダーメイドをしたことはないですよね」

「する必要も、特に感じなかったしな」

 奥村が答えた。

「売店で扱っているものだけで、十分に思えたし」

「なるほど、なるほど」

 岸見は、何度か頷いた。

「これはちょっと、考えないといけませんね」


 彼方たちは、二階建ての建物に案内される。

「酔狂連の、寮ということになるな」

 八尾が、教えてくれた。

「研究用や生産用の建物が優先で、外来者用の建物は、まだ用意していないんだ。

 悪いが、今日のところはここで我慢してくれ」

「それは、別にいいんですが」

 彼方はいった。

「伝えていたものは、用意して貰えましたか?」

「それは、問題ないな」

 八尾は、頷いた。

「まず、男の方から片付けるか。

 居合いに向いた剣が欲しいということだったな。

 もちろん、何種類か在庫はあるぞ」

「それでは、女性の方はこちらに」

 岸見が、美濃の背中を押すようにして、別室に案内をする。

「タンク役の女性用装備をご所望とのことで。

 フィッティングルームはありませんが、着替える場所は用意していますので」

 岸見にぐいぐいと背中を押されている美濃を見送ってから、男子どもは一度、建物の外に出る。

「いわゆる西洋風の、諸刃の直剣は、居合いには向かないからなあ」

 八尾は、剣を抜く仕草をしながら、説明してくれる。

「あれは、まっすぐ上に抜くもんで、すぱっと一気に抜き放つものではないんだわ。

 で、居合いに向いたのはなにになるのか、ってえと、いわゆる彎刀。

 こう、刃が曲線になっている、たいていは片刃の刀剣になる。

 日本刀なんかも、これに分類されるわけだが、この手の彎刀は、ほぼ世界中で作られ、使われて来た。

 なぜだか、わかるか?」

「いいや」

 顔を向けられ、問われた奥村は、あっさりと首を横に振る。

「説としては、いろいろあるんだが」

 八尾はいった。

「騎兵用の刀剣は、多くの場合、この彎刀といった形状を採用している。

 片手で、抜き放ちやすいからだ」

 なるほどなあ。

 と、彼方は納得した。

 用途から、形状が固定されがち、と。

「騎兵が、この手の長大な直剣を持つ場合もあるんだが」

 八尾は、説明を続ける。

「この場合は、別に槍を持っていることが多い。

 馬上では、槍を。

 剣は、馬から下りてから使うことが、想定されているわけだな。

 で、お前さんの居合いは、当然、片手で抜き放つことが前提になっているんだよな?」

「そうだな」

 奥村は頷いた。

「そういうことに、なるな」

「それで、今、在庫の中にある居合いに向いた剣としては」

 八尾は、そう前置きをして、次々と片刃剣を出す。

 そのひとつひとつを、彼方は両手で抱えた。

「まあ、こんなところかな」

 十振り以上の剣を彼方の腕に抱えさせてから、八尾はいった。

「実際に使うのは、お前さんだ。

 ここで実際に抜いてみて、感触を確かめてから選ぶといい」

 奥村は、意外に素直だった。

 八尾にいわれたとおりに、一本一本片刃剣を手に取っては抜き放ち、その際の感触を確かめている。

「多少なりとも、引っかかりを感じたら、その剣はよしておいた方がいい」

 八尾は、いった。

「なにしろ、実戦の場で使う代物だ。

 自分の命を預ける得物なんだから、安易なところで妥協はするな」

「わかっている」

 奥村は、神妙な表情で頷く。

「こっちとしても、妥協をするつもりはない」

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