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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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第二の宝玉

「だいたい、悲観的な予測をする者は、疎まれるんだよな」

 恭介は、意外にしっかりとした声でぼやく。

「だから、いいたくはなかったんだ」

「いや、ちょっと待て」

 小名木川会長は、それを止める。

「でも、つじつまは、合っている気がするぞ、それ」

「そうだよなあ」

 坂又までもが、その意見に同調する。

「これまでの出来事に法則性とか求めるとすると、そういう結論が出る。

 それは別に、不自然ではない、というか」

「悲観的、ってぇか、うちらにとって優しくない予測だってことっしょ」

 楪がいった。

「でも、それ、馬酔木くんのせいでもないんじゃね?」

 その場に居る全員が、一斉に意見を交わしはじめて、しばらく騒がしくなる。

 しかしそれも、五分もせずに静かになった。

 意見を出し合っても、事実は事実として否定出来なかったからだ。

「それでは、お前は、あのダンジョンはプレイヤー全員のレベリングのために設置されたものだ、っていうんだな?」

 奥村が、恭介に確認する。

「多分ね」

 恭介は、そういって頷いた。

「他に可能な推測があれば、こっちが聞きたいくらいで」

「その根拠は?」

「いや、だって。

 どうなれば、ダンジョン攻略がクリアしたことになるのか。

 その条件は、最初から提示されていなかったでしょ」

 恭介は、そう説明する。

「あのダンジョンを設置したやつにしてみれば、その辺の設定はおそらく、どうでもよかったからじゃあないんですか?

 ダンジョンさえ置けば、おれたちが自分の都合で勝手にレベルアップして強くなる。

 やつにとって必要なのは、そういう状況だけであって。

 そもそも、クリア条件というものが本当に設定されているのかどうかも、怪しいと思います」

「ダンジョンは、あのまま設置しっぱなし、ってことかよ」

 奥村は、なんともいえない表情になった。

「いや、待て。

 最初にダンジョンの攻略に成功した者には、ジョブチェンジの宝玉とかが貰えているだろ。

 あれは、どういう意味だ?」

「そのくらいのニンジンは用意しておかないと、おれたちがうまく発憤しないとでも判断したんでしょうね」

 恭介は、即答する。

「ダンジョンを設置しました。

 あとは好きにしてください。

 ただそれだけでは、おれたちのモチベーションが高くならない、とでも思ったんでしょ。

 ある意味、おざなりな報償だったと思いますよ」

 奥村は、なにもいえなくなった。

 反論しようにも、いくら考えても、そのための材料が見つからなかったのだ。


「いや、実はだなあ」

 しばらくして、小名木川会長がそんなことをいい出した。

「その、レベリング仮説とでもいおうか、そいつを裏付けるような事実を、うちでもいくつか持っているんだわ。

 無用な混乱を避けるため、公表するのは控えているんだが」

「それって、ずばり、なんですかぁ?」

 楪が、率直に質問した。

「ここまで来たら、もう隠していたって意味ないっしょ」

「まあ、その。

 今すぐに全貌は明かせないけど」

 小名木川会長は、そう答える。

「とあるプレイヤーが、な。

 極めて特殊な、ユニークジョブを設定されていたんだ。

 なんのためにそんなジョブが用意されているのかは、今もってわからない。

 ただ、普通にダンジョン攻略をするだけなら、別に必要ではないジョブであることは、断言出来る。

 そうか。

 やはり、ダンジョンの次に、なにかあるのか。

 そうだな。

 そう考えないと、そんなジョブはそもそも必要ないだろうな」

 後半は、誰かに聞かせるためではなく、自分自身にいい聞かせているような口調になっている。

「いまいち、意味がわかんないっすけど」

 楪は、そういって口を尖らせる。

「なんなんすか、そのユニークジョブって」

「今すぐは、公表することは出来ない」

 小名木川会長は、きっぱりとした口調でいった。

「だが、まあ。

 近いうちに、公表するしかないようだな。

 ただ、とても強力なジョブだということは、断言出来る。

 今の時点でも、レベルはようやく九十を超えたところなんだが。

 それでも、全プレイヤーの中でも、かなり強くなっていると思う。

 なんというか、あらゆる点で、恵まれているジョブなんだ」

「ああ、あの子のことか」

 遥が、あっけらかんとした口調でいう。

「あの子、今、そんなに強くなっているんだ」

「一応、まだ、秘密はばらすなよ」

 小名木川会長が、すかさず釘を刺す。

「近いうちに公表するから、それまでなにも漏らさないでくれ」

「了解っす」

 遥は、あっさりと頷く。

「ぶっちゃけ、わたしらにはあまり関係ないことですし。

 黙ってろとおっしゃるんなら、おとなしく黙ってます」

 おそらく、ユニークジョブ結城ただしのことだろうな。

 と、遥は、察している。

 少なくとも、生徒会との関係を悪化させてまで、流布する価値がある情報だとは、思えなかった。

 元気にやっているようだったら、それでいい。

 遥が結城ただしに抱いている感情は、その程度の薄いものでしかない。

「うーん。

 ここまで来たら、近いうちにお披露目しておくか」

 小名木川会長は、思案顔でそんなことをいう。

「ぶっちゃけ、これ以上秘密にしておいても、あまりメリットがなさそうだし。

 あー。

 トライデントの三人。

 近いうちに連絡するから、その時は、協力してくれよ」

「協力?」

 恭介は、怪訝な顔になる。

「いったい、なにをやらせようってんですか?」

「なに、簡単なことだよ」

 小名木川会長は、そう答える。

「今日と同じく、決闘システムを使った模擬戦だ。

 うちのユニークジョブの強さを披露するには、ちょうどいいだろ?」

「おれたち、三人と、ですか?」

 恭介は、少し意外だった。

「そのユニークジョブの子、今ではそこまで育っているって。

 そういう、ことなんですよね?」

「実は、毎日のようにダンジョンに入っているんだ」

 小名木川会長は、そう説明してくれる。

「最初のうちは何名かでパーティを組んでいたけど、最近ではソロで入ることが多い。

 レベルだけではなく、実戦経験でも相応に育っていると、思っていてくれ」

 そう説明されても、正直、ピンと来なかった。


 その集まりは、それ以降は意味のあるやり取りをすることもなく、グダグダになって終了した。

 そろそろ時刻的に、昼食目当てのプレイヤーが入ってくるとというので、食堂も空けなくてはならない。

 恭介たちは釈然としない表情のまま、ぞろぞろと政庁から出て行く。

「ねーねー」

 外に出るとすぐ、楪が恭介たちに話しかけて来た。

「戦い方を教えてくれるって、約束、してくださいよ」

「出来れば、断りたいかな」

 恭介は、即座にいった。

「おれたちにとって、なんのメリットもないし」

 横で、遥もうんうんと頷いている。

「そんなことをいってもいいのかなー」

 とかいいながら、楪は自分の倉庫から直径三センチほどの球体を取り出して、見せつける。

「これ、なんだと思います?」

「なんらかの、ドロップアイテムかな?」

 恭介は、いった。

 見た目からして、ジョブチェンジの宝玉に、似てはいる。

 ただ、ジョブチェンジの方が白乳色であるのに比べ、今、楪が持っている球体は、少し色味が薄い黒色に見えた。

「そう。

 ドロップアイテムです」

 楪はいった。

「とっても、レアな。

 あれだけ大勢のプレイヤーがダンジョンに入っても、今まで、たった三回しかドロップしていません」

「高価なのか?」

「高くは、ないっすね。

 レアですが、使いどころがかなり限定されていますので、今の時点ではほとんど欲しがる人が居ないもんで」

「レアだが、需要がなくて、さほど高くはない」

 恭介は、少し思案する。

「まったく、わからないな。

 具体的に、それを使うと、どうなるんだ?」

「レベルがリセットされて、一になります」

 楪は説明した。

「各ステータスは、この宝玉使用時の半分程度までさがりますが。

 それでも、そのパラメータでレベル一からやり直せるっていうのは、魅力でしょ?

 いわゆる、強くてニューゲームってやつですよ」

「あっ!」

 彼方が、声をあげた。

「そういうアイテムがあるって、噂は聞いたことがある!」

「お三方は、揃ってレベルカンストしています」

 楪は、そう続ける。

「そして、ここにはちょうど、レベルリセットの宝玉が三つ、あります。

 これって、取引材料としては十分な価値があると思うんですけどぉ。

 どうでしょうか?」

 楪は、にやにやと笑っていた。

 恭介たちの返答を、半ば予測しているのだろう。

 確かに、その宝玉は、まだレベルカンストしていないプレイヤーにとっては、あまり意味がないアイテムだった。

 これまで、需要がなかった。

 というのも、頷ける。

「よく、そんなアイテムを三つも、集めたな」

 恭介は、いった。

「いや、自分らでいつか使おうと思ってて」

 楪は、しれっと答える。

「安かったですよ。

 ただ、今回は、お三方にお譲りしてもいいかなあ、って。

 さて、どうしましょうか?」

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