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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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申のダンジョンマスター

「ダンジョンマスター側は、ダンジョン内部に入ったプレイヤーを阻止、撃退しなければならない」

 恭介は、今さらだが、ダンジョン攻略について「基本的なルール」を他の二人に説明する。

「このダンジョンは、このうちの阻止、の方に重点を置いたコンセプトだと、思っていた。

 問題を掲示して、それに答えないと先に進めない扉とかで、そう判断していたんだ。

 けど、ここまで来て、それ自体が、そう錯覚させるための罠であり、この区画までプレイヤーを誘い込んで、モンスターの数による飽和攻撃でプレイヤーを仕留める。

 そういう機能も、有していた」

「で、その飽和攻撃罠も、今、どうにか無効化出来たところね。

 今」

 遥かが、そういいながら、頷く。

「それで、相手の次の出方がわからない、と」

「予測がつかないねえ」

 恭介はいった。

「これまでのダンジョンマスターと比較しても、かなり風変わりなマスターらしいかなあ。

 なんか、プレイヤーを倒すことよりも、重視しているものがありそうな気がするし」

「プレイヤーを倒すよりも、阻止することに重点を置いているのは、間違いがないと思う」

 彼方が意見を述べる。

「ここのモンスターだって、数こそ多いけど、そんなに強くはない。

 というか、ぶっちゃけていうと、他のダンジョンで出て来るモンスターより、かなり見劣りがする。

 一体だけだったら、低レベルのプレイヤーにだって対処可能なくらいだし、そのおかげでうちの人形たちでも現に、対処出来ているわけで」

 人形たちは、基本的に、指示された動作を繰り返すことしか出来ない。

 今、モンスター退治に勤しんでいる人形たちも、

「敵と味方を見分けて、敵であれば銃口を向けて引き金を引く」

 という動作を繰り返しているだけ、だった。

 彼方がけしかけた人形たちも、

「前進してくる敵モンスターの行く手を塞ぎ、相手が壊れるまで手にした武器をぶつけ続けろ」

 という指示に従っているだけである。

 多少の学習能力があるので、同じ動作でも繰り返しているうちに、より効率的な方法を模索はするようだったが、そんなに難しい作業をしているわけではない。

 第一、人形たちの力や動作の速さは、低レベルどころかまったくレベルアップしていない成人男性と、さして変わらない。

 武器や火器で武装していたとしても、そんな人形たちで十分に対応出来てしまっている、という「弱さ」が、このダンジョンのモンスターの特徴になっている。

「プレイヤーを倒す、というより、阻止する。

 もっとはっきりいっちゃうと、うんざりさせて引き返すように、仕組んでいる?」

 遥が、いった。

「ここに出て来るモンスターだって、人形だったりぬいぐるみだったり、モンスターっていうよりもおもちゃだしね。

 弱い強い以前に、プレイヤーを倒す気が、最初からないんじゃないか、って」

「倒す気は、あるとは思うよ」

 恭介も、意見を述べる。

「一応、だけど。

 何度か、ここから脱出すると宣言してみたんだけど、それも出来なかったし。

 飽和攻撃は、完全に本気で、しかし、その手段がなぜか、徹底していなかった。

 徹底していなかった事情は、よくわからない。

 おれたちは、モンスターでもダンジョンマスターでもないからな」

 この辺は、完全に想像の埒外になる。

 ダンジョンマスター側の事情など、容易に想像出来る方がおかしい。


「だって、しょうがないじゃない!」

 不意に、三人以外の声が、響いた。

「わたしたちには、戦いという概念がそもそもなかったんだから!」

 三人は、その声がした方向に、顔を向ける。

「妖精さん?」

 遥が、そんな声をあげた。

「身長三十センチくらい」

 恭介が、見た目の特徴を、説明文を読みあげるような単調な口調でいった。

「半透明で、背中に羽虫のような羽が生えた女の子だ」

「ええと、君が、ここのダンジョンマスター?」

 彼方が、半信半疑のまま、確認する。

「ってことで、いいのかな?」

「そうよ!

 種族名は■■■(この固有名詞は、恭介たちには聞き取れなかったし、発声すること出来なかった)!」

 半透明の妖精が、自己紹介する。

「なんの因果か、今では、ダンジョンマスター?

 なんてものをやっている。

 このマスターだかダンジョンだかいうのも、こっちにはなかった概念ね!

 これでも、理解出来る範囲内で、精一杯やっているんだから!」

「そうか、頑張ったね」

 恭介は、素っ気ない口調で労った。

「まとめると、君は、元居た場所から拉致されて、無理矢理、ダンジョンマスターとしての役割を押しつけられた。

 君が元居た場所では、戦いも、ダンジョンも、ダンジョンマスターも、存在しない。

 不完全な理解のまま、自分に出来るだけのことをして来た。

 そういうことで、間違いはないかな?」

「そうよ!」

 見た目妖精さんは、そういって胸を張る。

「これでも、元居た場所では、長年女王様をやっていたんだから!」

「女王様、かあ」

 彼方は、感心した声を出した。

「なんらかの、首長ではあったわけだ」

 戦いという概念がない場所の、首長。

 彼方の理解を完全に、越えていた。

 文化どころか、生命や文明のあり方も、この妖精さんの世界と三人とでは、根本から違う気がする。

「ちなみに」

 遥が、訊ねる。

「妖精さんの居たところでは、さあ。

 なにかが死ぬことって、あるの?」

「有限寿命種のこと?

 こっちの世界にも、そういうのは居たわよ」

 妖精さんは、即答する。

「下等生物扱いで、滅多に接触することはなかったけれど。

 そういえば、有限寿命種は、同じ種族同士で縄張り争いをするそうね。

 あれが、戦いってやつなのかしら?」

「有限寿命種が、下等生物扱いかあ」

 恭介は、苦笑いをした。

「そういう生物がダンジョンマスターをやっているんなら、いろいろと的外れになるのも仕方がないかなあ」

「それで、恭介」

 彼方が、恭介に訊ねる。

「この場合、どうすればいいと思う?」

「おれに訊かれても、な」

 恭介は、そういったあと、妖精さんに向かって確認する。

「確認しますが、妖精さんは、ダンジョンマスターとしての役割を果たさなければならない。

 そういう強制力が働いている。

 と、いうことなんですよね」

「その、ヨウセイサンって、わたしのこと?

 まあ、ダンジョンマスターうんぬん、っていう部分は、その通りだけど」

「ダンジョンマスターの役割とは、プレイヤーに試練を課し、行く手を阻止し、ダンジョンから追い返すことにある。

 それで、間違いはありませんか?」

「それも、その通り」

「ダンジョンマスターである妖精さんは、殺したら死にますか?」

「だから、そんな過当な存在ではないっつーの!」

「でも、おれたちを退ける方法は、よく知らない」

「……うー。

 認めたくはないけど、そう」

「それでは、妖精さん。

 参考のために聞きますが、リバーシというゲームは、ご存じですか?」

「なに、それ?」

「今から、お教えします」

 恭介はマーケットでゲームのパッケージを購入し、開封して、簡単にルールを説明する。


「黒が先行で、交互に駒を置く。

 すでに置いてある駒に、隣接した場所にしか置けない。

 同じ色の駒で挟まれたら、その中間に位置した駒はひっくり返って色を変える」

 妖精さんは、恭介から受けた説明を口頭で繰り返した。

「説明するだけではなんですから、実際にやってみましょう。

 彼方、相手をしてくれ」

「はいよ」

 ダンジョンの床にゲーム盤をおいて、恭介と彼方で対戦して見せた。

「相変わらず、強いなあ」

「恭介が、弱過ぎるんだよ」

 ごく短時間のうちに結果が着く。

 彼方の、圧勝だった。

「妖精さん。

 やってみますか?」

「え?

 いいの?」

 興味深く二人の対戦を見ていた妖精さんは、即答する。

「やるやる!

 やらせて!」

 妖精さんは、彼方相手に三戦して、三回とも惨敗する。

「うそうそ!

 そんな、このわたしが!」

「初心者だから、仕方がありませんね」

 彼方は、もっともらしく頷いた。

「ねーちゃん。

 相手をしてやって」

「え?」

 いきなり声をかけられた遥は、驚いて一度恭介の方に顔を向ける。

 恭介が頷いたので、

「仕方がないなあ-」

 といいながら、妖精さんと対戦した。

 またもや、妖精さんの惨敗だった。

「いや、今のは。

 そう!

 ちょっと調子が悪かっただけだから!」

「今度は、おれとやってみますか」

 恭介が、妖精さんの対面に座る。

「今度こそ、負けない!

 ぎったんぎったんに、してやるんだから!」

「ぎったんぎったにしてやる、っていい回し、もう死語になってるんじゃないかな?」

 恭介は、首を傾げる。

 結果をいうと、また、妖精さんは負けた。

 三回勝負をして、三連敗だった。

「ここまで弱いとは、思わなかった」

「いくら初心者といっても、ねえ」

「程度があるっていうか」

 三人は、それぞれの言葉で感想を述べる。

「でも、まあ。

 これで、決着はつきましたね」

 恭介は、ボロ負けして涙目になっている妖精さんに声をかけた。

「え!」

 妖精さんは、大きな声を出す。

「これ、そういうことになるの!」

「おれたちプレイヤーは、ダンジョンマスターであるあなたに正々堂々、勝負を挑んだ。

 そして、勝利した」

 恭介は、改めて説明する。

「それ以外に、なにがありますか?」

「う、ううー!」

 妖精さんは、しばらくそういって唸っていたが、しばらくして、顔をあげる。

「わかったわ!

 確かに、ルールからは逸脱していないわね!

 あんたたちがダンジョンを攻略したってことは、認めてあげる!」

 と、宣言する。

「よかった」

 恭介は、心の底から安堵の声を出す。

「それで、提案なんですが」

 恭介は妖精さんに、

「扉の問題を、もっと簡単なものにしておくと、もっと大勢のプレイヤーがここに到着しますよ」

「ここまで来たら、飽和攻撃なんてせず、すぐにリバーシ勝負を持ちかける方が、手っ取り早いですよ」

 などの「秘訣」を教える。

「妖精さんとしては、ダンジョンマスターとしての役割を、手抜きせずにまっとうできる。

 おれたちプレイヤーにしてみれば、ダンジョンマスターである妖精さんに挑みやすくなる。

 どっちにとっても、メリットがある提案だと思いますが」

「そうね!」

 妖精さんは、素直に頷く。

「前向きに、検討してみる!」


『申のダンジョンが、攻略されました』

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