表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/401

戦闘開始

「勝てるかどうか、わからない。

 いや、勝てない可能性の方が、大きいと思う」

 恭介は、彼方と遥にいった。

「それでも、挑戦するべきだと思う」

「そういうの、いつものことじゃない」

 遥は、あっさりとそういった。

「今さら、っていうか」

「まあ、こっちに来てからは、だいたいそうだよね」

 彼方も、そう応じる。

「負けても、誰かが死んで外に出るだけでしょ?」

「この中で最初に死ぬのは、おそらくおれなんだけどね。

 役回り的に」

 恭介がいった。

「それは、それでいい。

 いずれにせよ、誰かが最初に死ねば、残りの二人は、ダンジョン内から無事に脱出出来る。

 勝てないまでも、相手のデータを取れるだけ取るつもりでいこう」

「そういうの、嫌だな」

 遥がいった。

「負けること、死ぬこと前提の行動っていうの。

 どうせやるんなら、三人全員生き残って勝つ前提でないと」

「ああ、そうだな」

 恭介は、その言葉に頷く。

「やる以上、全員で生き残れる方法を考えよう。

 彼方、なにか作戦とかある?」

「なにも」

 彼方は首を横に振った。

「自称劣化コピーとはいえ、あれはちょっと無理。

 一目見ただけで、これまでに相手にしてきたやつらとは段違いの存在だって悟ったし」

「……まあ、そうだよな」

 恭介は振り返り、巨大なドラゴンを一瞥してから、頷く。

「とにかく、全力を尽くして、やれるだけやってみよう」


 そのドラゴンは、巨大だった。

 頭部だけでも、目測で十メートル以上はある。

 全長、となると、百メートルには届かなくとも、数十メートルという単位になるだろう。

 全身、ぎっしりと黒光りする鱗に覆われ、その一部は一面に苔が付着している。

 その存在が生きてきた、長い長い時間が、偲ばれた。

 おそらくは。

 と、恭介は思う。

 その、コピー元の存在は、その世界では、完全に自然の一部と化し、その世界なりの秩序の一環として存在していた。

 の、だろう。

 そんな存在の劣化コピーをこんな場所に据えてダンジョンマスターをやらせている何者かは、いい面の皮だ。

 とも、思った。

 その何者かは、おそらくは、恭介たちプレイヤーをこの世界にまで連れてきた存在と、同一なのだろうが。

 ダンジョンマスターがそんなサイズであったから、この決戦の間も、従来に見ないほどに広大だった。

 ここから見通しても、向こう側の壁が見えない。

 天井も、かなり高い。

 ドラゴンが本気で暴れても、あまり支障が出ない広さを、用意したのだろう。

 厄介なことだな。

 と、恭介は思う。

 今回ばかりは、勝てる気がしない。

 勝つ道筋が、想像出来ない。

 たとえ自称劣化コピーであるとはいえ、あのドラゴンと自分たち三人とでは、存在としての格が違いすぎる。

 スキルやジョブで多少されているとはいっても、こちらの本質は、三人のティーンエイジャーに過ぎないのだ。

 どうしたもんかな。

 と、恭介は、考え続ける。

「基本、いつもの通りでいいや」

 恭介は、口に出してはそういった。

「彼方は、敵の注意を引き続けて。

 もちろん、危なくなったら、逃げていい。

 ハルねーは、遊撃に徹して。

 おれは、やれること、思いつくだけのことを、片っ端から試してみる」

「つまり、いつもと同じってわけね」

 遥がいった。

「つまり、いつもと同じってわけだ」

 恭介も、そういって頷く。

 やれるだけ、やってみるさ。


「こちらのテーブルと茶器は、どうしますか?」

「持ち帰るがよい」

 恭介が声をかけると、ドラゴンは答えた。

「いい土産になろう」

「それと、もうひとつ」

 恭介は、重ねて頼みを口にする。

「ご馳走になったお茶、かなりうまかったです。

 もしもわれわれが勝ったら、あの茶葉をいくらか分けて貰えませんか?」

「やる前から、戦利品を所望するか!」

 ドラゴンは口を大きく開き、くぐもった声をあげた。

「その意気やよし!

 茶葉を戦利品に含めることは、保証しよう!」

 どうやら、この頼みを、ドラゴンは気に入ったらしい。

 あのドラゴンは。

 と、恭介は、考える。

 自分自身を、強者と規定している。

 それは、事実ではあるのだが。

 仮に、あのドラゴンにつけいる隙があるとするなら、おそらくはそんな思い込みになるだろう。

 恭介はテーブルと茶器、椅子を倉庫に収納し、他の二人に目で合図をしてから、ドラゴンに一礼する。

「これより、戦闘を開始させていただきます」

「ふむ。

 好きに開始するとよい」

 ドラゴンは、鷹揚に頷いた。

 恭介と遥は、その場でステルスモードに移行する。

「姿をくらます技を使う。

 とは、聞いていたな」

 ドラゴンは、ゆっくりとした口調でいう。

「だが、それだけでは、なんの攻撃にもならんぞ」

 その言葉が、終わるか終わらないかというタイミングで。

 ドラゴンの、大きな片翼が、根元から裂けた。

「おお、見事だ」

 特に焦った様子もなく、ドラゴンが呟いた。

「斬撃、ではないな。

 魔法、それも、かなり特殊な魔法か。

 が、それも、見極めた。

 以後、同じ魔法は、効果がないと思え」

 魔法の弓を収納しながら、恭介は思う。

 無属性魔法は、効果があった。

 あった。

 つまり、過去形だ。

 以後は、なんの効果もなくなった。

 それ以外の方法で、攻撃をしなければならない。

 破損した片翼、右の翼は、根元から折れたままだった。

 再生能力はあるのか、ないのか。

 あるのかも知れないが、今のところ、再生する様子はない。

 空を飛ばれると厄介だから、先に翼を潰しておいたのだが。

 この選択が、果たして、正解だったのか、どうか。


 彼方は、ドラゴンの鼻先で盾を構えている。

 ドラゴンの方は、そんな彼方に目線をくれることもせず、悠長に構えている。

 ドラゴンにしてみれば、彼方など、いつでも始末をつけられる存在に過ぎないのだろう。

 だから、今から交戦する意味もない。

 むしろ、ドラゴンは、こちらの三人がどんな手を使ってくるのか、楽しみに見守っている風でもある。

 強者の余裕、ってやつか。

 と、恭介は思う。

 その余裕を誇示しているうちに、せいぜいダメージを与えておこう。

 それしか、こちらが取れる手段はない。


 遥は、ステルスモードのまま、ドラゴンの四肢に斬りつけているようだ。

 分厚い鱗ごと、短い切り傷が、ドラゴンの足に増えている。

 しかし、ドラゴンの巨体に比べ、その傷はあまりにも短く、浅かった。

 人間でいえば、表皮が少し裂けた、程度の傷でしかないのだろう。

 これも、ドラゴンは意に介した様子がない。

 ドラゴンにしてみれば、わざわざ気にする必要もない。

 その程度でしかない、ごく些細なダメージなのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ