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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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辰のダンジョンマスター

「そろそろ手を貸す?」

「いや、まだ一人で大丈夫」

 そんな問答も、これで何度目になるのか。

 さらに二時間後、三人はいくつかの階層をくだっている。

 恭介の、

「大丈夫」

 も、あながち強がりというわけでもなく、これまで恭介はあやういところもなく、遭遇したモンスターをことごとく短時間のうちに斬り伏せていた。

 これほど長時間にわたって単身で戦い続けているというのに、汗一つかいていない。

 おそらく、疲労するほどの負担も感じていないのだろう。

 この階層まで来ると、モンスターもかなり大型化しており、その全長は五メートルを超えるのも出て来る。

 直立して二本足で歩行するタイプは、せいぜい三メートル程度の身長に留まっていたが、四歩足で移動するタイプは大きくなる傾向にあるようだ。

 中には、大きく口を開けていきなり炎を吐いてくるようなモンスターも混ざっていたが、これまで、恭介は変わりなく処理している。

 つまり、隙を見て、胴体なり首なりを両断して、始末をつけていた。

 基本、モンスターの形状や大きさが変わっても、恭介がやるべきことはあまり変わらない。

「肉弾戦も、難なくこなしているなあ」

 そうした様子を背後で見守っていた彼方は、そう感想を述べた。

「レベルカンストしているからねえ」

 遥が、そんな風に評する。

「むしろ、この程度の相手に苦戦をしていたら、そっちの方が問題でしょ」

 出没するモンスターのレベルまでは確認していなかったが、おそらくは、まだまだ格下の、レベル五十以下なのではないか。

 と、遥は推測している。

 モンスターの反応や挙動から、おおかたの難易度は、推測出来るようになっていた。

 当然、レベル九十九に届いた恭介の敵ではない。


 遭遇するモンスターが次第に大型になっていったので、恭介はここではじめて、手にしていた片刃剣を倉庫内に収めて、代わりに例の大太刀を出す。

「相手が大型なら、この程度の刃渡りを用意しても大袈裟ではないだろう」

 と、いうわけである。

 大太刀を肩に担いで、恭介は先を急ぐ様子もなく、悠然と進み続ける。

 得物が変わったからといって、恭介の動きが鈍くなるということもなかった。

 かえって、遭遇してからモンスターを倒すまでの時間は圧縮され、たいていの相手は一撃のもとに屠るようになっている。

「リーチが長いと、相手が大きくてもどうにかなもんだな」

 恭介は、そう感想を呟いた。

 その様子を見て、遥は、

「もうしばらく、出番はなさそう」

 などと、考えている。


 さらに二時間後。

 三人の目前に、どこかで見覚えがある大扉があった。

「結局、一度も戦闘しないまま、ここまで来ちゃった」

 遥がいった。

「今回は、キョウちゃんが大活躍だねえ」

「どうする?」

 彼方が、二人に確認する。

「一度、戻る?」

 もともと、今日の目的は、このダンジョンを攻略することではない。

 ここで引き返す、という選択も、十分にあり得た。

「おいおい。

 ここまで来て、それはないだろう」

 恭介がなにかいう前に、扉の向こうから、くぐもった声が響いて来る。

「戦闘をする、しないはあとで決めるとしても。

 一度扉を開いて、中に入ってきたらどうだ?

 茶のいっぱいくらいは、馳走するぞ」

 三人は、顔を見合わせる。

「どうしよう。

 ダンジョンマスターに、お茶を誘われちゃった」

「あの言葉、信じる?」

「信じても、信じなくても、結局は同じ」

 彼方に問われて、恭介はそう答えた。

「ここで声をかけて来たってことは、つまりはこちらの状態を把握しているってこと。

 あの相手がこちらを逃がすつもりがなかったら、どの道戦闘にはなるよ」

 結論として、

「相手の提案に乗って、その上で、こちらの出方を決定しよう」

 と、いうことになった。


「扉を開けますが、すぐには攻撃してこないでくださいね」

 無駄かも知れないが、念のため、彼方がそう声をかける。

「くどいな」

 扉の向こうのダンジョンマスターは、そう答えた。

「こちらから茶に誘ったのだ。

 無闇に攻撃するわけがなかろう」

 本当かどうか、わかったものではない。

「では、開けます」

 そう思いながらも、彼方は二人に合図をして、両開きの扉をあける。

 真ん中の正面に彼方を配置したのは、三人の中で一番防御力がある彼方が正面に置いた方が、なにかあった際に動きやすいからだ。

「ああ、なるほど」

 扉を開け、そこに鎮座していたダンジョンマスターを見て、恭介は納得する。

「爬虫類ばかりが出て来るダンジョンのマスターは、ドラゴンになるわけか」

「挨拶も済まぬうちに、そのいい草か。

 肝はなかなか据わっているようだな」

 巨大なドラゴンが、口を開閉してそういった。

「ふむ。

 同類を屠った経験は三度。

 なかなかの戦績ではないか」

「わかるんですか?」

 彼方が訊ねた。

 同類、とは、つまり、このドラゴンと同じ、ダンジョンマスターということ、なのだろう。

「なに、別にお主らの記憶を読めるわけではないぞ。

 ただ、三人組でここまで来られる人間というのは、限られている」

 ドラゴンは、そう説明した。

「それで、戌のがしきりに感心しておった、妙な術者とやらは、お主らのうちの誰になるのか?」

「それ、多分、おれですね」

 恭介が、片手をあげる。

「戌の、ということは、ダンジョンマスター同士で、連絡とかすることがあるんですか?」

「なにしろ、ひどく退屈な役割であるからのう。

 その、ダンジョンマスターというやつも」

 ドラゴンはそういって、ごろごろと喉を鳴らす。

「連絡を取る、などといっても、所詮は無聊を慰めるための暇つぶしに過ぎん。

 なにぶん、言葉を解さない同僚も多いからな。

 その連絡を出来る相手も、限られておる」

「はぁ」

 彼方は、気の抜けた返事をする。

「これまで、ダンジョンマスターの立場とか心境を考えたことはありませんでしたが。

 そういう、もんですか」

「そういう、ものなのだ」

 ドラゴンは巨大な目で彼方を見据えて、そういった。

「お互い、難儀な身の上であることよ」

「あのぉ、ドラゴンさん。

 いや、ドラゴン様」

 遥は、丁寧な口調にいい直した。

「ドラゴン様は、望んでここに居るわけではない。

 そういうこと、なんですよね?

 だったら、わざわざ戦わないで、もっと平和的な……」

「それは、出来ん相談だな」

 ドラゴンは、厳粛な口調で答えた。

「個人的には、そういう対応もアリだとは思うのだが。

 いかんせん、この吾もダンジョンマスターという立場に縛られておる。

 こうして、戦闘の前にしばし戯れる程度の裁量は許されておるが、戦闘そのものを放棄することは出来ん」

「ああ」

 遥はいった。

「それは、残念なことで」

「誠に、遺憾な次第である」

 ドラゴンはもっともらしい顔をして、頷いた。

「なんといっても、すでに決まってしまったことには逆らえぬ。

 不本意では、あるがな。

 おお、まだ茶を出していなかったな。

 すぐに用意する」

 その言葉が終わるのと同時に、三人の前に、小さなテーブルと三脚の椅子が出現する。

 テーブルの上には、三脚の茶碗が載っていた。

「どうする?」

「ここまでされてもてなしを辞退したら、かなり失礼だろ」

 三人は短く囁き合い、結果、素直に椅子に座ることにした。

 恭介はそのまま、卓上の茶碗に手を伸ばす。

「お、おい」

 彼方が、慌ててそれを制止した。

「毒なんて盛っていないと思うよ」

 恭介は、いった。

「そんな回りくどいことをするなら、最初からもっと好戦的に振る舞っているって」

 そういって恭介は茶碗の上に乗っていた蓋を取り、そのまま一口、口に含む。

 鼻孔に、なんとも涼しげな香りが満ちた。

 どういう種類のお茶なのか、恭介の知識にはなかったが、それでも、かなり上等な物であることは、想像が出来る。

 素直に、うまい。

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