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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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大太刀

「師匠たち、見てください」

 拠点に帰ると、魔法少女隊の四人がそんなことをいいながら寄ってくる。

 どうやら、新作の戦闘服が完成したようだ。

「思ったよりも、まともなんだな」

「似合っていると思うよ」

 恭介と彼方は、それぞれにそんな感想を漏らす。

 下半身が肌にぴったりと密着する、メタリックな光沢を帯びた生地のパンツであるのはさておき。

 上半身を覆うジャケットも、妙にカラフルすぎて、特撮かアニメのコスチュームめいて見える。

「着ている本人たちが納得しているんなら、それでいいか」

 というのが、この二人の本音である。

「それ、性能はいいんだよね?」

 遥が、確認する。

「魔法と刺突、斬撃に高い耐性を持っています」

 青山が答えた。

「デザインはこれでも、性能には妥協していません」

「ならばよし」

 遥も、そういって頷いた。

「正直、自分で着てみようとは思わないけど」

「えー」

「お揃いの、着てみましょーよー」

 緑川と赤瀬がそんなことをいって着たが、遥は首を縦に振らなかった。

「いやいや。

 わたし、もう十分に恥ずかしい、ドロップアイテムのコスチュームを持っているから」

 遥は、そういって二人をいなす。

「性能はねえ。

 かなりのもんなんだけど、あの布地の面積はないわー。

 ってか、なんで布地が少ないのに防御性能があがっているの、あれ」

 理不尽だ、とかなんとか、遥はぶつくさと呟きはじめる。

「いや、でも、宙野さんは、スタイルがいいから」

「あれ着ていると足が長く見えますよ、本当」

 青山と仙崎が、慌ててフォローに入る。

「宙野さんくらいのプロポーションでないと、ああいう格好は似合わないっていうか」

「着る人を選ぶ服装っていうか、ねえ」

「そう?」

 遥が、二人の方に顔を向ける。

「本当に、そう思ってる?」

「思ってます、思ってます」

「あんな服、誰でも着こなせるものじゃないっす」

「そうかー」

 ようやく、遥が気を取り直した。

「そう思うかー」

「宙野さん、戦闘時、ゴーグルしていることがありますよね」

 仙崎が、そう訊ねて来る。

「あれ、どうしてですか?」

「ジョブの特性上、わたし、走り回ること多いのね」

 遥は説明する。

「するとね。

 顔に、風があたるの、いっぱい。

 で、目が乾いてしかたがないから、ゴーグルかけるようになった」

「あ」

「なる」

 二人は、頷く。

「生身で、高速で移動するってことは、そうなりますよね」

「極めて物理的な理由だった。

 そっか。

 常時顔に風が当たっていれば、そうなりますよね」

「ところでその銀ピカのインナー、上にも着ているの?」

 今度は、遥の方が質問をする。

「ええ。

 レオタードみたいに、全身一体型ですね、これ」

 青山が答えた。

「上半身は、その上にいろいろ着ています。

 体の線が出ないように」

「この生地自体の防御性能は、確かなものなので」

 仙崎も、そうつけ加える。

「出来れば、全身を包みたいな、と。

 これで伸縮性もありますし、着心地はそんなに悪くないんですよ」

 構造的に考えて、トイレにいく時は大変そうだな。

 などと、会話を聞いていた恭介は思う。

 もちろん、実際に口に出すことはない。

 恭介は恭介で、その時、マーケットの画面を開いて、自分用のゴーグルを検索していた。

 遥が指摘していたように、生身のまま高速移動を続けると、目が乾燥して涙が出て来るのだ。


 その日の夕食の時、岸見から、

「大太刀が完成した」

 と告げられる。

 発注していたあれ、そういう名前に落ち着いたのか。

 とか思いながら、恭介は、

「あとで受け取る」

 と返す。

「本格的な試用は、ダンジョンでするのでしょうけど。

 せめて、あれ、振るっているところ、見せてくださいよ」

 と、岸見は恭介にいって来た。

「あれ、振っているところ、絵になると思うんですよね。

 出来れば、映像なんかも撮っておきたいかな、って」

「うーん」

 数秒考えて、恭介は答える。

「いいよ、別に」

 昼間の様子だと、市街地においても恭介たちの顔は、かなり知られはじめている。

 これ以上に目立つのも、好むところではないのだが。

 今さらというか、すでに手遅れという気もした。

「そうして撮った映像、どこかで公開するの?」

「うちの製品のデモンストレーションに、と思いまして」

 桃木マネージャーが、答える。

「あれくらいの長物を作る機会もそんなにないので、どうせなら記録に残しておきたいな、と」


「こいつかあ」

 完成した大太刀を掲げて、恭介は感慨深げに声を漏らした。

「想像していたよりも、長く思えるな」

「今さらかよ」

 八尾は、苦笑いをしている。

「今、うちで用意できる、最上の剛性と斬れ味を両立した逸品だ。

 せいぜい、大事に使ってくれ」

 柄の部分を合わせると、優に三メートルを超える直刀だった。

 両手で持って、頭上に高く掲げ、そのまままっすぐに降ろす。

 次に、刃がついていない側を肩に乗せ、斜めに振り降ろす。

「うん」

 恭介はいった。

「いい感じじゃないか」

「そんなに軽々と扱って」

 岸見が、呆れたような声を出す。

「本当、高レベルのプレイヤーって、底が知れないっていうか。

 それ、重くはありません?」

「重くはないな」

 恭介は答えた。

「これなら、軽く二時間くらいは振るい続けられると思う」

「それでは、馬酔木くん以外の方は、十分に離れて」

 桃木マネージャーがいった。

「これから、撮影を開始します」


 スマホか簡単なカメラで撮影するだけかと思ったが、酔狂連はライトアップした上で数台のドローンまで用意していた。

 ライトで周辺を照らしているのは、そろそろ日が落ちる時間だったからだ。

「大太刀、適当に振り回してください」

 桃木マネージャーが、そんな指示を出す。

 ならば。

 と、恭介は、まず正面にまっすぐ大太刀を振りさげ、続いて、左右を薙ぐように動かす。

「今度は、動きながらお願いします」

「移動しながら、ってこと?」

「そうです。

 お願いします」

 数台のカメラと数人の見物人、それに数台のドローンが見守る中、恭介は大太刀を真横に構え、そのまま剣士のジョブ固有スキル、足運びを使用して前進しつつ、大太刀を薙いだ。

 剣道などではまずしない動きだと思うが、一度に複数のモンスターと戦うことを想定すると、こういう動きになることもある。

 もっとも、それほどモンスターの数が多い場合は、恭介なら剣に頼らずに魔法を使うはずだが。

「大型モンスターを相手にする時の動きをお願いします」

 続いて、桃木はそんな注文をつけてくる。

「大型、か」

 どのモンスターを想定するかな。

 と、数秒、恭介は考え、結果、卯のダンジョンマスター戦を想定することにした。

 あのモンスターだけ、「勝った」というより「勝たせて貰った」という感が強い。

 この大太刀があの時にあったら、もう少し違った結果になったのだろうか?

 恭介は、想像の中であのマスターの姿を見あげる。

 あちこち傷つき、それでも超然と立ちすくむ、半人半蛇の異形。

 あの時に、今の武器があったとしたら。

 恭介は、大太刀の切っ先を地面すれすれに動かし、想像上のマスターの蛇身を斜め上方向に切り上げ、その勢いのまま、今度は肩口から切り下げる。

 全身のバネを使い、渾身の力を込めた斬撃だった。

 恭介の動きから少し遅れて、剣身に煽られて風が起こる。

 今ので、あのマスターを、いくらかでも傷つけられただろうか。

 恭介は、そんなことを考えている。

「はい、オーケーです。

 いい映像が撮れました」

 桃木が、そこで恭介の動きを止めた。

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