表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/401

試食

 三人で拠点に帰ると、出来たばかりの跳ね橋が勝手にあがって、三人を招き入れた。

 三人はマウンテンバイクに乗ったまま、宿舎にまで直接向かう。

 跳ね橋を通過する際、門番の人形が片手をあげたので、こちらも片手をあげて挨拶を返した。

 人形、ああいう使い方もありなのだな。

 と、恭介は思う。

 単純な動作を繰り返すことと、単純な判断、たとえば、特定の人物を見分けて門を開く、などは、可能なようだ。

 一体になんでもはやらせようとはせず、単機能に徹すれば、それなりに使えるギミックではあるのだろう。

 ライン工のような作業とは、相性がいい気がする。

 そうして帰宅した直後、同じくマウンテンバイクに乗った樋口がやって来た。

「随分とタイミングがいいんだな」

 恭介が、そういうと、

「八尾さんが、今帰ったところだからと教えてくれて」

 と、樋口が答える。

 どうやら門番の人形は、誰かが訪問したり開門をする度に、八尾にその旨を知らせているらしい。

「それで、今日はなんの用かな?」

 遥が、首を傾げる。

「夕食の準備を手伝ってこいって、いわれて。

 酔狂連は、いつもご馳走になってばかりだから」

 樋口は、そう答えた。

「あと、この前、ダンジョン攻略で手に入れたモンスター肉、試験的に加工してみたから、そちらの感想も聞いて来いっていわれた」

「モンスター肉、か」

 彼方は、難しい顔になる。

「そちらには分析者が居るから、有害な物質が含まれているとは思わないけど。

 でも、味とかは、大丈夫なのかな?」

「だから、試食して見てくれ、って」

 樋口は、そう続ける。

「燻製とかハムとか、あと、硬い部位なんかはミンチにして脂肪分なんかと混ぜて、ハンバーグにしている。

 他にも、いろいろ。

 完成までに日数がかかるのもあるから、今日持って来たのは、燻製とハンバーグ、ミートボールってところ」

「いろいろ考えるもんだなあ」

 恭介は、素直に感心している。

「確かに倉庫の肥やしになっている現状よりは、有効な利用法だとは思うけど。

 手間を考えると、割に合わないだろう」

「だから、試してみて、好評だったら、このまま増産して売ろうって」

 樋口はいった。

「八尾さんたちは、そういっている」

「売るのかあ」

 彼方は、少し考え込む表情になる。

「手を抜いているとは思わないけど、この世界、保健所も医院もないからなあ。

 自分たちで消費する分ならともかく、売るとなるとかなりの覚悟が要ると思う」

「まあ、それは、酔狂連さんが考える問題だしね」

 遥は、そういった。

「あっちには分析者が居るんだから、ヤバそうな成分とかは、あらかじめ取り除いているでしょ。

 樋口ちゃん、中に入って。

 その毒味、じゃなかった、試食ってのを、やってみましょう」


 薪ストーブの間、テーブルの上に、樋口がいくつもの皿を出して並べていく。

「ハンバーグとミートボールは、加熱した状態で持って来ました」

 樋口が説明する。

「味を確かめて貰うため、余計な調味料やソースはつけていません。

 燻製の方は、少し塩味が濃いと思いますが」

「燻製は、保存食だからね」

 彼方は頷く。

「味を濃くするのは、避けられない。

 先に、ハンバーグとミートボールの方、試そうか」

 各品、一品ずつ、皿の上に載せられて、人数分、用意されていた。

 三人は、普段使いの箸を倉庫から取りだして、まずハンバーグに箸をつける。

「柔らかいな」

 恭介がいった。

「つなぎにパン粉とか、使ってるやつ?」

「挽肉と脂肪分だけ、ですね」

 樋口が答える。

「刻んだタマネギとかは入っていますけど」

「あんまり、味がしないっていうか」

 一口、口の中に入れて咀嚼してみた遥が、感想を述べる。

「肉とか脂肪分の味は、あるけど。

 このままだと、なんか淡泊」

「その辺は、焼く段階で、ソースとかで補わないとね」

 彼方は、そういう。

「目茶苦茶おいしい、ってわけでもないけど、これはこれでいいと思う。

 ソースを工夫してバンズとかで挟めば、普通に売れると思うよ」

 続いて、三人は、ミートボールに箸を延ばす。

「味は、ハンバーグとほとんど変わらないな」

「若干、歯ごたえっていうか、コリコリした食感はある」

「これ、砕いた軟骨とか入れてない?」

「ご名答です」

 樋口は頷いた。

「よくわかりましたね」

「これだけ出されたら、あまり気にならなかったけど」

 彼方がいった。

「ハンバーグのあとだったからね。

 どうしても、比較するよ」

 最後の燻製に、三人は手を掛けた。

「思ったよりも、手にした感触が硬いな」

「ジャーキーってやつとは、また別なの?」

「ジャーキーは、肉に調味料とかを擦り込んで乾燥させたやつ。

 作ろうとすると、乾燥させるのに日数がかかるし、燻製とは違うね」

 疑問を口にした遥に、彼方が説明する。

「これ、分類としては、スモーキージャーキーになるんだと思う。

 多分、だけど、肉質が硬いんで、薄切りにして燻したのかな?」

「ベーコンは作らなかったの?」

 恭介は樋口に質問する。

「あれも、分類としては、燻製の一種になるんだけど」

「作ったんですけど」

 樋口は、わずかに視線を逸らす。

「好評すぎて、作った分はみんなで食べてしまいました。

 また作ると思います」

「別にいいけど」

 恭介は、そういう。

「こっちに持って来たのは、判断に迷うような微妙なやつか」

「いい方」

 彼方は、苦笑いを浮かべる。

「多分、味つけとかについて、意見を聞きたかったんだと思うけど。

 でも、この燻製」

「うん」

 遥も、なにかをいいかけた彼方に、頷く。

「硬いね、これ。

 あと、味つけが濃い」

「塩分が、ね」

 恭介も頷く。

「保存性を考えると、どうしてもそうなるのか。

 あとこれ、噛んでも噛んでも、味が薄くならない気がする」

「これはこれで、ジャンクな魅力があるよね」

 彼方はいった。

「お酒を飲む人には、ちょうどいいのかも知れない」

 年齢からすれば当然なのだが、三人とも飲酒経験はない。

「確かに、これも生産ではあるけどさあ」

 遥が、感想を述べる。

「あっちはあっちで、なんか方向性違ってない?」

「どちらかというと、うちの影響だと思うけど」

 恭介はいった。

「食糧生産とか、うちとのつき合いがなかったら、自分たちだけではやらなかったと思うし」

「かもね」

 彼方も、恭介の言葉に頷く。

「それはそうと、このハンバーグとか、まだ持って来ているんでしょ?

 だったらこれ、今夜の夕食にしようか。

 つけ合わせは、マッシュポテトとゆで野菜でいいかな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ